不動産を売るにあたって、建物を更地にしてから売却するほうが得になるのは、3つの条件がそろうときに限られます。
「立地に需要がある」「建て替えできる土地である」「建物に使い道が残っていない」の3つです。
それ以外の土地は、建物を残したまま売り出すほうが損をしにくく、更地にするのは売却が決まってからでも間に合います。
しかし、相続した実家の売却を考え始めたとき、「古い家は壊して更地にしたほうが売れますよ」と言われた方は少なくありません。
そして、その言葉を聞いて実際に解体の見積もりを取ると、100万円を超える金額が並ぶことは珍しくありません。
そんなとき、先にお金を持ち出して、売れなかったらどうなるのかと手が止まってしまうのは自然なことです。
解体は一度してしまうと元に戻せません。だからこそ、更地にして売却するべき物件、そうでない物件の基準を知っておくことが大切です。
【結論】更地にして売却するよりまずは古家付きのまま売るべき
先に結論を言うと、古い家が建っている土地は、解体せずに「古家付き土地」として売り出すのが損をしにくい進め方です。
更地にしても売却価格は解体費の分上がる程度にとどまることが多く、先に100万円以上を払っても売れる保証はありません。
- 更地:建物や構築物がなく、すぐに新しい建物を建てられる状態の土地のこと
- 古家付き土地:築年数が古く価値がほとんどない建物を残したまま、「土地」として売り出す物件のこと
古い家を売却する方法は、大きく次の4つに分かれます。
| 売却方法 | 解体費を払う時期 | 売却前の固定資産税 | 売却できるまでの目安 | 向いている土地 |
|---|---|---|---|---|
| 先に更地にして売却する | 売り出す前(売主が先払い) | 住宅用地の特例が外れて上がる | 需要しだい(数か月~) | 需要が高く建て替えできる土地 |
| 古家付き土地で売却する | 払わない(買主が解体) | 軽減されたまま | 需要しだい(数か月~) | 多くの土地で最初の選択肢 |
| 更地渡し(売却が決まってから解体) | 契約後・引渡し前(売主) | 引渡しまで軽減されたまま | 需要しだい(数か月~) | 買主が更地を希望する土地 |
| 現状のまま買取業者に売却する | 払わない(買取価格に反映) | 軽減されたまま(早期に売却できるので負担期間も短い) | 最短数日~数週間 | 需要が薄い・解体できない土地 |
※住宅用地の特例とは、住宅が建っている土地の固定資産税を軽くする制度です。建物を解体するとこの特例が外れます。
買主が更地を望んだときは、契約後に解体する方法もあります。「先に更地にするか、しないか」の二択ではない点がポイントです。
解体費100万円超を先に払っても売れる保証はない
更地にして売却する場合、解体費は買主が決まる前に売主が払います。
木造の一戸建てでも100万円を超えることが多く、この現金を先に用意しなければなりません。
問題は、更地にしたからといって買い手がつくとは限らない点です。
買い手が土地を選ぶ決め手は、駅からの距離や生活の便利さといった立地です。
需要の薄い地域では、更地にしても問い合わせが増えず、何年も売れ残ることがあります。
そうなると、土地が売れ残ったまま「払った解体費」と「上がった固定資産税」の負担だけが積み上がります。
古い家を先に解体して更地にしたのに、不動産会社に持ち込んだら取り扱いを断られてしまう原因はこれです。
更地にするのは、売却の見込みを確かめてからでも遅くありません。
買主は解体費を差し引いて土地の価格を考える
「更地のほうが高く売れる」と言われる理由は、見た目が良く、買主が建築のイメージを持ちやすいからです。
ただし、価格が解体費以上に上がるかというと、そうとは限りません。
古家付き土地の買主の多くは、家を建てたい個人や、建売住宅を建てて販売する建売業者です。
こうした買主は、古家付き土地を見ると「土地の値段から解体費を引いた金額」で考えます。
つまり、売主が先に更地にしても、売却価格は解体費の分上がるだけで、手取りはほとんど変わらないことが多いのです。
そのうえ売主は、解体費の先払いと税金の増加というリスクを負います。
更地にして得をするのは、更地になったことで買い手が大きく増え、販売価格が高騰する立地に限られます。
古家付きで売り出し買主の希望で解体する方法もある
「買主が更地を望んだらどうするのか」という心配は、売り出したあとで対応できます。
古家付きで売り出し、買主が更地での引渡しを求めたら、売買契約のあとに売主が解体する「更地渡し」という方法があるからです。
更地渡しなら、解体費を払うのは買主が決まってからです。
売却が決まる前に大きな費用を払うリスクを避けつつ、更地を求める買主にも対応できます。
広告に「更地渡しも相談可」と書いておけば、建物が要らない買主にも、建物を直して使いたい買主にも届きます。
最初から買主の層を狭めない点でも、古家付きで売り出すほうが有利です。
一度解体した建物は元に戻せない
解体の判断で最も重いのは、やり直しがきかないことです。
売れなかったからといって、建物を元に戻すことはできません。
特に注意したいのが、更地にすると新しく家を建てられなくなる土地です。
道路に接する幅が足りない土地(再建築不可)や、原則として家を建てられない市街化調整区域の土地が代表例です。
こうした土地では、建物があるからこそ「住める家」として価値が残っています。
更地にするとその価値がなくなり、売却することがさらに難しくなります。
自分の土地が解体後も建て直せる土地かどうかは、解体業者に依頼する前に確かめておく必要があります。
建物を更地にして売却するべきかを判断する3つの基準
先に更地にして売却すべきかは、次の3つで判断します。
3つがそろうときだけ、先に更地にする価値があります。
1つでも当てはまらなければ、古家付きで売り出すか、現状のまま買い取ってもらう方法を検討しましょう。
| 判断の基準 | 確認すること | 当てはまらない場合の進め方 |
|---|---|---|
| 立地の需要 | 土地の売却見込み額から解体費を引いても手取りが残るか | 古家付きで売り出すか、現状のまま買取を検討する |
| 建て替えの可否 | 更地にした後も同じ規模の家を建てられるか | 建物を残したまま売却する |
| 建物の使い道 | 住む・直す価値が残っていないか | 古家付きで売り出し、直して住みたい買主にも届ける |
立地に需要があり解体費を売却価格で回収できるか
1つ目の基準は、その土地を欲しがる人がいるかどうかです。
駅や商業施設に近い住宅地、建売住宅の用地を探す建売業者が多いエリアなら、更地にすることで早く売却できる可能性が高まります。
反対に、人口が減っている地方や郊外では、更地にしても買い手が増えないことがあります。
近所の売り土地が半年、1年と残っているなら、更地にしても同じように残る可能性があります。
土地の価格そのものが低く、100万円の解体費が売却価格を上回ってしまうケースもあります。
たとえば土地の売却見込み額が200万円の地域で、木造30坪の解体に150万円かかれば、仲介手数料などを引く前でも手元に残るのは50万円ほどです。
目安になるのは「土地としての売却見込み額から、解体費を引いても手取りが残るか」です。
この見込み額は、解体する前に現況のまま査定を受ければわかります。解体の見積もりと査定額を並べて比べることが、判断の第一歩です。
解体後に同じ規模の家を建て直せる土地か
2つ目の基準は、更地にしたあとに、今と同じくらいの家を建てられるかどうかです。
土地の価値は「どんな建物を建てられるか」で大きく変わります。
建物を建てるには、原則として幅4m以上の道路に2m以上接していなければなりません。
これを満たさない土地は、解体すると新しく家を建てられない「再建築不可」になります。
ほかにも注意したい土地があります。
建てた当時は合法でも今の基準では同じ大きさで建てられない家(既存不適格)や、市街化調整区域の土地です。
こうした土地は、建物が残っているほうが価値を保てます。
道路の種類や区域の指定は、市区町村の建築指導課や都市計画課の窓口で確認できます。
建物にまだ住める・直せる価値が残っているか
3つ目の基準は、建物そのものに使い道が残っているかです。
古い家でも、雨漏りや傾きがなく、手を入れれば住める状態なら、リフォームして住みたい人や古民家を探す人が買い手になり得ます。
こうした建物を壊すと、「直して住みたい」という買主層を自ら手放すことになります。
さらに、住める状態の建物が付いていれば、買主は中古住宅の購入として住宅ローンを検討できる場合があります。
一方、倒壊のおそれがあるほど傷んでいる、長年放置して室内が荒れているといった建物は、残すことがむしろマイナスに働きます。
このように建物に使い道がないことが、先に更地にすることを検討する3つ目の条件です。
3つの基準がそろうときだけ先に解体を検討する
3つの基準をまとめると、次のようになります。
- 需要がある:土地としての売却見込み額から解体費を引いても手取りが残る
- 建て直せる:再建築不可・市街化調整区域・既存不適格などの制限がない
- 建物に使い道がない:住む・直すのが難しく、残すとかえって売りにくい
3つすべてに当てはまるなら、先に更地にして売り出すことも有力な選択肢です。
1つでも当てはまらない、またはわからない場合は、まず古家付きで売り出すか、現況のまま査定を受けて確かめるのが安全です。
買主が更地を望めば、そのとき更地渡しに切り替えられます。
「需要がない」「建て直せない」に当てはまる土地は、仲介で買い手を探しても、見つかるまで時間がかかりやすい土地です。
こうした土地は、売れにくい不動産に強い買取業者に相談する方法もあります。
解体も片付けもせず、現状のまま買い取ってもらえる場合があります。
価格は仲介で売却できた場合より下がるのが一般的です。
一般の買い手からの需要がある土地なら、仲介で売却できる金額の6~8割程度です。
ただし、需要がなく仲介ではそもそも買い手がつかない土地では、比べる「仲介の価格」自体が成り立たないこともあります。
解体費を払わずに済む点も含めて、手取りで比べることが大切です。
3つの基準のうち判断がつかないものがあれば、解体業者に連絡する前に、建物が建ったままの状態で査定を受けてみてください。
売却の見込み額だけでなく、建て替えの制限や買主の見込みもあわせて確かめられます。
建物を更地にして売却するメリットとデメリット
メリットはいずれも「買主にとっての安心」、デメリットはいずれも「売主のお金の負担」です。
どちらが大きいかは、前の章の3つの基準で決まります。
| 比べる点 | 更地にして売却 | 古家付きのまま売却 |
|---|---|---|
| 解体費 | 売主が売却前に払う(木造でも100万円を超えることが多い) | 売主は払わない(値引き交渉の材料になりやすい) |
| 売却までの固定資産税 | 住宅用地の特例が外れて上がる(約4倍に増えることがある) | 軽減されたまま |
| 買主の層 | 土地を買って家を建てたい人 | 家を建てたい人と、建物を直して住みたい人 |
| 建物の契約不適合責任 | 負わない | 免責特約と告知で備える |
| 地中埋設物の確認 | 売却前に確認できる | 引渡し後に見つかるおそれがある |
買い手がどんな家を建てられるか考えやすくなる
更地の最大のメリットは、買主が土地の広さや形をそのまま見て、どんな家を建てるかを考えやすいことです。
古い建物が残っていると、日当たりや敷地の広がりがつかみにくく、印象で敬遠されることもあります。
また、買主は購入後に解体の手配をする必要がありません。
すぐに建築の準備に入れるため、家を建てる時期が決まっている買主には好まれやすくなります。
需要のある立地ほど、この「すぐ建てられる」という点が早い売却につながります。
地中埋設物の有無や地盤の状態を売る前に確認できる
更地にすると、地面の下の状態を売却する前に確かめられます。
地中埋設物とは、古い基礎・浄化槽・井戸・がれきなど、地面の下に埋まったままになっている物のことです。
古い家の下からは、以前の建物の基礎や使われなくなった浄化槽が出てくることがあります。
撤去には数万~数十万円程度かかることがあります。
売却する前に見つけて処理しておけば、引き渡した後に買主から撤去費用を求められるトラブルを防ぎやすくなります。
地盤の状態も調べやすくなり、買主が安心して購入を決められます。
ただし、これは裏を返せば、解体して初めて埋設物が見つかるということでもあります。
地中の状態に不安がある土地では、解体が思わぬ出費につながることも覚えておきましょう。
建物の不具合について契約不適合責任を負わずに済む
更地にして売却すれば、建物の不具合について責任を問われる心配もなくなります。
契約不適合責任とは、引き渡した物件が契約の内容と違っていたときに、売主が修理や代金の減額などに応じなければならない責任のことです。
古い家を建物付きで売却すると、引渡し後に雨漏りやシロアリ被害が見つかり、買主から修理や減額を求められることがあります。
更地で売却すれば、少なくとも建物についてはこうした心配がありません。
ただし、土地そのものの問題(地中埋設物や土壌の汚染など)については、更地でも責任を問われる可能性があります。
更地にすれば責任がすべてなくなるわけではない点に注意しましょう。
解体費は木造30坪でも100万円を超えることが多い
更地にする最大のデメリットは、解体費を売主が先に払うことです。
建物の構造別の目安は次のとおりです。
| 建物の構造 | 坪単価の目安 | 延べ30坪の目安 |
|---|---|---|
| 木造 | 3万~5万円 | 90万~150万円 |
| 鉄骨造 | 4万~6万円 | 120万~180万円 |
| RC造(鉄筋コンクリート造) | 6万~8万円 | 180万~240万円 |
この表は公開情報の目安で、実際にはこれより高くなることが少なくありません。
前面道路が狭くて重機やトラックが入りにくい、都市部で作業の制約が多いといった条件では、坪単価が大きく上がります。
登記時の監修者であるアルバリンクでは、近年の人件費や処分費の上昇をふまえ、木造で坪5万~7万円程度(延べ30坪で150万~210万円)を見込むのが一般的です。
ただし、都市部の狭い道路沿いの物件などでは、表の目安を大きく上回る解体費になる例もあります。
また、重機が入らず手作業が増える、廃材を小型の車で何往復もして運び出す、といった条件が重なると費用が膨らみます。
さらに、アスベスト(建材に含まれることがある有害な繊維)が見つかれば除去費用が加わり、家財が残っていれば処分費もかかります。

なお、建物を解体せず現状のまま買い取る業者に売却する場合、解体費を売主が払う必要はありません。
その分は買取価格に反映されますが、手元の現金を先に出さずに済みます。
固定資産税は住宅用地特例が外れ約4倍に増える
建物を壊して更地にすると、土地の固定資産税が上がります。
住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が使われているためです。
住宅用地の特例とは、住宅が建っている土地の固定資産税を軽くする制度です。
税額を計算するもとになる金額(課税標準)が、200㎡以下の部分は6分の1、200㎡を超える部分は3分の1になります。
都市計画税も、200㎡以下は3分の1、超える部分は3分の2に軽減されます。
更地になるとこの特例が外れます。
ただし「6倍になる」というのは正確ではありません。
更地の課税標準は、負担調整措置という仕組みにより、評価額の70%が上限とされているからです。
200㎡以下の土地(150㎡・固定資産税評価額1,500万円)で、上限まで上がったと仮定して試算すると次のとおりです。
| 項目 | 建物がある土地(住宅用地) | 更地 |
|---|---|---|
| 固定資産税の課税標準 | 250万円(評価額の6分の1) | 1,050万円(評価額の70%) |
| 固定資産税(税率1.4%) | 約3.5万円 | 約14.7万円 |
| 都市計画税の課税標準 | 500万円(評価額の3分の1) | 1,050万円(評価額の70%) |
| 都市計画税(税率0.3%) | 約1.5万円 | 約3.2万円 |
| 年間の合計 | 約5万円 | 約17.9万円 |
固定資産税だけで見ると約4.2倍、都市計画税を合わせた年間の負担では約3.6倍です。
実際の課税標準は評価額の60~70%程度の範囲で決まることが多く、税率も自治体によって異なります。
都市計画税がかからない地域もあります。
なお、建物を解体すれば建物分の固定資産税はかからなくなりますが、古い木造住宅の建物分はもともと少額なことが多いため、土地の増税分を埋めるほどにはなりにくいのが実情です。
特定空家や管理不全空家として勧告を受けると「固定資産税が6倍になる」と言われるのも、住宅用地の特例が外れる同じ仕組みによるものです。
この場合も、実際の増え方は上限の範囲に収まります。
「6倍」ではないとはいえ、年間で十数万円の負担増は小さくありません。
売却できるまでに2年、3年とかかれば、その分だけ負担が積み上がります。
一方で、地方などで土地の評価額そのものが低い場合は、増える固定資産税より、先に払う解体費(100万円超)のほうがはるかに重い負担になります。
税金を気にして急いで更地にしても、かえって損を広げてしまうことがあります。
出典:総務省「固定資産税」
出典:神戸市「宅地に対する課税と特例」
出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」
解体しても売れなければ費用と税金と草刈りだけが残る
ここまでのデメリットが重なると、最も避けたい状況が起こります。
更地にしたのに売れず、解体費と上がった固定資産税だけを払い続ける状況です。
たとえば、解体に150万円をかけ、固定資産税と都市計画税が合わせて年約13万円増えたまま3年売却できなければ、負担は約190万円にのぼります。
土地の売却価格がこれを下回る地域なら、買い手がついた時点でも持ち出しが残ります。
さらに、更地は建物があるときより雑草が目立ち、定期的な草刈りや管理の手間が増えます。
遠方に住んでいたり高齢だったりすると、年に数回の草刈りだけでも大きな負担になり、近隣から苦情が来ることもあります。
費用と税金に加えて、この管理の負担も続くことを見込んでおきましょう。
「更地にしても売れない土地」があるのは、買い手が土地に求めるのが立地と「建てられるか」だからです。
更地にしても、この2つは変わりません。
更地にすれば売れるという考えは、需要のある土地でだけ成り立つと考えておきましょう。
古家付き土地のまま売却するメリットとデメリット
古家付きで売却すれば、解体費を先に払わずに済み、固定資産税も上がりません。
建物を直して住みたい買主にも届きます。
ただし、買主が解体費を見込んで値引きを求めてくることが多いため、解体の見積もりを手元に用意しておくと交渉しやすくなります。
古家付き土地は「建物に価値がない」前提の売却方法ですが、それは「建物が邪魔になる」という意味ではありません。
- 解体費を先に払わずに済む
- 固定資産税が上がらない
- 建物を直して住みたい買主にも届く
- 解体費を見込んだ値引きを求められやすい
- 建物の不具合について責任を問われることがある
- 古い建物の見た目で敬遠されることがある
- 売却まで建物の管理が続く
解体費を先に払わずに売り出せる
古家付きで売り出せば、解体費を先に用意する必要はありません。
売却代金を受け取る前に100万円を超える現金を出すかどうかは、多くの売主にとって大きな問題です。
相続した実家を売却する場合、相続人の間で費用をどう分けるかという問題も出てきます。
売れるかわからない段階で、兄弟姉妹に解体費の負担をお願いしても、話がまとまりにくいものです。
売却が決まってから解体する、あるいは買主に解体してもらう形なら、費用の話は買主が決まってから具体的に進められます。
住宅用地特例が続き固定資産税が上がらない
建物が残っていれば、住宅用地の特例もそのまま使えます。
150㎡・評価額1,500万円の土地の試算では、更地にした場合より年間で十数万円安く済むこともあります。
売却までに時間がかかるほど、この差は大きくなります。
特に地方や郊外では、売却できるまで1年以上かかることも珍しくありません。
固定資産税を上げずに売却活動を続けられるのは、古家付きで売り出す大きな利点です。
ただし、長年放置して倒壊のおそれがある状態になり、自治体から「特定空家」(倒壊などのおそれがあり、そのままにしておけないと自治体が判断した空き家)や、その手前の「管理不全空家」として勧告を受けると、建物があっても特例が外れ、更地と同じ水準まで税額が上がる場合があります。
建物を残すなら、最低限の管理は続けましょう。
リフォームして住みたい買主にも届く
古家付きで売却すると、「土地を買って家を建てたい人」だけでなく、「建物を直して住みたい人」も買主候補になります。
新築より安く住まいを手に入れたい人や、古い家の雰囲気を好む人です。
買主の層が広がれば、それだけ早く売却できる可能性が高まります。
買主が解体費を見込む分値引き交渉されやすい
古家付き土地の主なデメリットは、値引きを求められやすいことです。
買主は「自分で解体する費用」を見込むため、土地の価格から解体費の分を引いた金額を提示してくることがあります。
このとき、売主が解体費の相場を知らないと、実際より高い解体費を理由に大きく値引きされるおそれがあります。
売り出す前に解体業者から見積もりを1通取っておくと、「解体費はこのくらいです」と根拠をもって交渉できます。
値引きされたとしても、それが解体費と同じくらいなら、先に更地にした場合と手取りはほとんど変わりません。
値引きの額が解体費を大きく上回らないかを、見積もりと比べて確認しましょう。
建物の不具合は免責特約と告知で備える
建物付きで売却すると、先ほど説明した契約不適合責任が気になるかもしれません。
個人どうしの売買では、売買契約書に「建物について売主は契約不適合責任を負わない」という特約(免責特約)を入れるのが一般的です。
ただし、売主が知っていた不具合を隠していた場合は、特約があっても責任を免れません。
雨漏りやシロアリ被害など、わかっている不具合は必ず買主に伝えましょう。
相続した実家で建物の状態がよくわからない場合は、売主が責任を負わない条件で現状のまま買い取る業者に売却する方法もあります。
その分、価格は仲介より低くなるのが一般的です。
更地渡しで売れてから解体する方法と契約の注意点
古家付きで売り出し、売却が決まってから解体する「更地渡し」なら、買主が決まる前に解体費を払わずに済みます。
その代わり、解体の範囲・引渡しの期限・地中から物が出たときの費用負担を契約書で決めておかないとトラブルになります。
先に更地にするか、古家付きのまま引き渡すかで迷ったときの折衷案として、更地渡しは現実的な選択肢です。
更地渡しとは契約後に売主が解体して引き渡す売り方
更地渡しとは、建物付きのまま売買契約を結び、引渡しまでに売主が建物を解体して、更地の状態で引き渡す取引のことです。
一般的な流れは次のとおりです。
広告に「更地渡しも相談可」と書いておきます。
価格と、更地で引き渡すかどうかを話し合います。
解体の範囲と引渡しの期限を契約書に書きます。
解体費を払うのはこの段階です。
建物を取り壊したことを登記簿に記録する手続きです。
更地の状態を買主と確認して引き渡します。
この方法なら、先に更地にして売れ残るリスクがなく、固定資産税も解体するまでは軽減されたままです。
解体費は見積もりを取ってから売買価格に織り込む
更地渡しでは解体費を売主が払うため、売買価格はその分を見込んで決める必要があります。
解体費がわからないまま価格を決めると、思ったより手元に残らないことがあります。
そのため、売り出す前か、遅くとも買主と価格を話し合う前に、解体業者から見積もりを取っておきます。
見積もりでは、建物本体の解体だけでなく、ブロック塀・庭木・庭石・カーポートなどの撤去も含まれているかを確認しましょう。
見積もりに含まれない工事があとから必要になると、その費用も売主の負担になります。
「どこまで撤去するか」を業者と具体的に詰めておくことが、手取りを守ることにつながります。
契約書に解体の範囲と引渡し期限を明記する
更地渡しのトラブルで多いのは、「更地」の意味が売主と買主で食い違うことです。
売主は建物を壊せば終わりと考えていても、買主は塀や庭木、地中の基礎まですべて撤去されると考えているかもしれません。
こうした食い違いを防ぐため、売買契約書には次の項目を具体的に書いておきます。
| 決める項目 | 決めておく内容の例 | 決めないと起きるトラブル |
|---|---|---|
| 解体の範囲 | 建物本体・ブロック塀・庭木・庭石・カーポートのどこまで撤去するか | 「塀も撤去してほしい」と追加で求められる |
| 引渡しの期限 | 解体と建物滅失登記を終えて引き渡す日 | 工事が遅れて期限を守れない |
| 地中埋設物の扱い | 見つかった場合にどちらが費用を負担するか | 引渡し後に撤去費用を請求される |
| 境界の扱い | 境界標の確認・測量をするか | 解体後に境界がわからなくなる |
解体で重機を使うと、土地の境界を示す目印(境界標)が動いたり、なくなったりすることがあります。
解体の前に境界標の位置を確認し、写真に残しておくと安心です。
地中埋設物が出たときの費用負担を特約で決める
更地渡しで特に注意したいのが、解体中や引渡し後に地中埋設物が見つかった場合です。
古い基礎や浄化槽、井戸などが出てくると、撤去に追加の費用がかかります。
契約書で費用負担を決めていないと、引渡し後に買主から撤去費用を求められたり、契約不適合責任を問われたりするおそれがあります。
「引渡し前に見つかったものは売主が撤去する」「引渡し後に見つかったものは売主は責任を負わない」など、範囲と期限を特約で決めておきましょう。
どこまで売主が責任を負うかの線引きは、担当の不動産仲介会社とよく相談して決めることが大切です。
なお、解体も地中埋設物のリスクも引き受ける条件で、現状のまま買い取る業者もあります。
その分、価格は仲介より低くなるのが一般的です。
解体が引渡しに間に合わないと違約になるおそれがある
更地渡しでは、売主は「決められた日までに更地にして引き渡す」ことを約束します。
ところが、解体業者の予定が合わない、アスベストの調査や除去に時間がかかる、天候で工事が止まるといったことはよく起こります。
解体が遅れると、この約束を守れなくなります。
引渡しが遅れると、契約の内容によっては違約金を求められたり、契約を解除されたりするおそれがあります。
買主が新居の建築やローンの手続きを進めている場合は、影響が大きくなります。
解体業者には契約前に工期を確認し、余裕をもった引渡し日を設定しましょう。
木造の一戸建てなら、解体工事そのものは1~2週間ほどが目安ですが、届出や滅失登記を含めると1~2か月は見ておくと安心です。
更地にして売却するときの税金と特例
固定資産税は毎年1月1日の状態で1年分が決まるため、解体は年明けに行い、その年のうちに引き渡すのが基本です。
解体費は売却益の計算で差し引けます。
相続した空き家なら、更地にしてから売却しても、買主が引渡し後に解体しても、条件を満たせば最大3,000万円の控除が使えます。
税金は「いつ解体するか」「誰が解体するか」で結果が変わる部分です。
固定資産税は1月1日時点の状態で1年分が決まる
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や建物を持っている人に、その日の状態をもとに1年分が課税されます。
この基準日を賦課期日といいます。
住宅用地の特例も、1月1日に住宅が建っているかどうかで判断されます。
そのため、たとえば12月に解体して1月1日を更地で迎えると、その新しい年1年分の土地の固定資産税が上がります。
反対に、1月2日以降に解体すれば、その年の固定資産税は住宅用地の特例が使われたままです。
同じ解体でも、日付によって負担が1年分変わることになります。
出典:総務省「固定資産税」
解体は年明けに行い年内に引き渡すと負担を抑えやすい
1月1日の仕組みをふまえると、更地にして売却するときの基本は「年明けに解体し、次の1月1日が来る前に引き渡す」ことです。
そうすれば、売主が更地の高い固定資産税を払う年をつくらずに済みます。
| 解体と引渡しの時期 | 1月1日時点の土地 | 売主が払う土地の固定資産税 |
|---|---|---|
| 年明けに解体し、年内に引き渡す | 住宅が建っている | その年は住宅用地の特例が使われたまま |
| 年末までに解体し、更地で1月1日を迎える | 更地 | 新しい年の1年分が上がる |
| 年明けに解体したが、年内に売却できない | 翌年の1月1日は更地 | 翌年の1年分が上がる |
注意したいのは、年内に売却できなかった場合です。
更地のまま次の1月1日を迎えると、翌年は売主に高い固定資産税がかかります。
この点でも、更地渡しは有利です。
買主が決まってから解体するので、年をまたいで更地のまま売れ残るという事態は起きにくくなります。
ただし、12月に解体して引渡しが翌年になる場合や、契約が解除された場合は、更地で1月1日を迎えることがあるので注意しましょう。
なお、年の途中で売却した場合、その年の固定資産税は引渡し日で日割りにして、買主が売主に精算金を支払うのが一般的です。
法律上の決まりではなく、売買契約での取り決めです。
解体費は譲渡費用として売却益から差し引ける
土地を売却して利益(譲渡所得)が出ると、所得税と住民税がかかります。
このとき、土地を売却するために建物を取り壊した費用は「譲渡費用」として、売却益の計算で差し引けます。
譲渡費用とは、土地や建物を売却するために直接かかった費用のことです。
解体費のほか、仲介手数料なども含まれます。
親から相続した実家を2,000万円で売却した場合を例に、計算の流れを見てみましょう。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 2,000万円 |
| 取得費(購入価格が不明なため売却価格の5%で計算) | 100万円 |
| 解体費(譲渡費用) | 180万円 |
| 仲介手数料(上限額・税込) | 72.6万円 |
| 譲渡所得(売却益) | 1,647.4万円 |
| 税額(長期譲渡所得・税率20.315%) | 約334.7万円 |
取得費(その土地を手に入れたときにかかった金額)は、親が買った価格がわからない場合、売却価格の5%で計算できます。
仲介手数料は上限額で計算しています。
税率は、売却した年の1月1日時点で持っていた期間が5年を超える場合の20.315%です。
相続した土地は、親が持っていた期間も引き継いで数えます。
この例では、解体費180万円を差し引いたことで、税額が約37万円少なくなっています。
解体費の領収書や契約書は、確定申告まで必ず保管しておきましょう。
出典:国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」
出典:国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」
出典:国土交通省「宅地建物取引業法関係」
出典:国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」
相続した空き家の3,000万円控除は解体後も使える
親が一人で住んでいた家を相続して売却する場合、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が使えることがあります。
条件を満たせば、売却益から最大3,000万円を差し引けます。
先ほどの例なら、譲渡所得1,647.4万円が控除額の範囲に収まるため、税額は0円になります。
この特例は、建物を取り壊して土地だけを売却する場合にも使えます。
主な要件は次のとおりです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 建物 | 1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家で、区分所有建物(マンションなど)ではない |
| 住んでいた人 | 亡くなる直前まで親などが一人で住んでいた(老人ホーム入所など一定の場合を含む) |
| 売却の期限 | 相続から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
| 売却代金 | 1億円以下 |
| 更地にして売却する場合 | 相続してから取り壊すまで貸したり住んだりしておらず、取り壊した後も貸したり駐車場などに使ったりしていない |
| 売却の相手 | 親子や夫婦など特別な関係のある人への売却ではない |
| 控除額 | 最大3,000万円(家を相続した人が3人以上なら1人2,000万円まで) |
| 適用期限 | 2027年(令和9年)12月31日までの売却 |
確定申告では、市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」などの書類が必要です。
特に注意したいのが「売却の期限」です。
相続が始まってから3年が経った日を含む年の年末(例:2024年5月に相続したなら2027年12月31日)を過ぎると使えなくなります。
更地にするか迷っているうちに期限が過ぎないよう、早めに方針を決めましょう。
出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
買主が引渡し後に解体しても空き家の特例は使える
以前は、空き家の特例を使うには、売主が売却する前に解体するか、耐震リフォームをする必要がありました。
これが、2024年(令和6年)1月1日以後の売却から見直されています。
現在は、売却した年の翌年2月15日までに建物が解体されていれば、解体するのが買主でも特例の対象になります。
これにより、「特例を使うために、売主が先に解体しなければならない」という理由はなくなりました。
古家付きで売り出し、買主に解体してもらう形でも、特例を使える道が開けています。
買主が期限までに解体しないと、売主が特例を使えなくなります。
この方法を使うときは、売買契約書に「買主が翌年2月15日までに解体する」ことを明記しておきましょう。
出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
自宅だった家は解体から1年以内の契約が控除の条件
売主自身が住んでいた家を解体して土地を売却する場合は、「マイホームを売ったときの特例」で最大3,000万円を差し引けることがあります。
ただし、更地にしてから売却する場合には次の条件がつきます。
- 家を取り壊した日から1年以内に、土地の売買契約を結ぶこと
- 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
- 取り壊してから売買契約を結ぶまで、土地を貸駐車場などに使っていないこと
先に更地にして売り出し、1年以内に買主が見つからなければ、この特例は使えなくなります。
住み替えなどで自宅を売却する方が先に更地にする場合は、この期限を意識しておく必要があります。
出典:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
更地にして売却する流れと期間
更地にして売却する流れは「現況のまま査定を受ける→解体の見積もりと届出→解体工事→建物滅失登記→売り出し・契約・引渡し」の5段階です。
解体の準備から売却完了まで、少なくとも数か月はかかると見込んでおきましょう。
全体の流れと期間の目安は次のとおりです。
期間の目安:1~2週間
期間の目安:2週間~1か月
期間の目安:1~2週間(木造一戸建て)
期間の目安:解体後1か月以内
期間の目安:需要しだい(数か月~)
※期間は一般的な目安です。建物の規模・構造、アスベストの有無、地域の需要によって変わります。
まず現況のまま査定を受けて解体の要否を決める
最初にするのは、解体業者への依頼ではなく、建物が建ったままの状態で査定を受けることです。
更地にするかどうかは、その土地がいくらで、どんな買主に売れそうかで決まるからです。
査定では、古家付きの場合と更地の場合の売却見込み額、どんな買主が見込めるか、解体すると建て直せなくなる制限がないかを確認します。
この結果と解体の見積もりを比べて、先に更地にするかを判断します。
相談先は、査定額の根拠を具体的に説明してくれる信頼できる一社を選ぶことが大切です。
更地にすることを前提に話を進めるのではなく、古家付き・更地渡し・現状のまま買取まで含めて提案してくれるかどうかが、見極めのポイントになります。
解体業者の見積もりを取り工事前の届出を済ませる
更地にすると決めたら、解体業者から見積もりを取ります。
解体費は業者によって差が出やすいため、2~3社から見積もりを取って、金額と工事の範囲を比べるのがおすすめです。
比べるのは解体工事の見積もりで、売却の相談先はステップ1で選んだ信頼できる一社のままで構いません。
見積もりでは次の3点を確認しましょう。
- 建物本体以外の撤去(塀・庭木・浄化槽など)が含まれているか
- 家財の処分費が別になっていないか
- 追加費用が出る条件は何か
工事の前には届出も必要です。
床面積の合計が80㎡以上の建物を解体する場合は、工事を始める7日前までに都道府県などへ届け出る必要があります。
また、解体工事の前には、建材にアスベストが含まれていないかを調べる事前調査が義務づけられています。
このうち建設リサイクル法の届出は、発注者である売主の義務です。
解体業者に代行してもらうのが一般的ですが、済んでいるかを必ず確認しましょう。
自治体によっては、老朽化した空き家の解体に補助金を出していることがあります。
多くは工事前の申請が必要なので、業者と契約する前に自治体の窓口で確認してください。
出典:建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(e-Gov法令検索)
出典:厚生労働省「石綿総合情報ポータルサイト」
出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」
近隣へあいさつしてから解体工事を行う
解体工事では、騒音や振動、ほこりが出ます。
トラックや重機の出入りで道がふさがることもあります。
工事を始める前に、両隣や向かいの家などへあいさつしておきましょう。
あいさつは解体業者が行うことも多いですが、売主も一緒に回るか、少なくとも連絡先を伝えておくと、苦情があったときに対応しやすくなります。
遠方に住んでいて立ち会えない場合は、業者にあいさつを任せ、工事の写真で進み具合を報告してもらうと安心です。
木造一戸建ての解体工事は、1~2週間ほどで終わるのが一般的です。
工事が終わったら、現地または写真で、見積もりどおりに撤去されているかを確認します。
解体後1か月以内に建物滅失登記を申請する
建物を解体したら、1か月以内に建物滅失登記を申請しなければなりません。
建物滅失登記とは、建物を取り壊したことを登記簿に記録する手続きです。
登記簿に建物が残ったままだと、土地を売却するときに買主が困ります。
申請を怠ると10万円以下の過料の対象にもなります。
申請には、解体業者が発行する取壊し証明書などが必要です。
自分で法務局に申請することもできますが、土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。
出典:不動産登記法第57条(e-Gov法令検索)
出典:不動産登記法第164条(e-Gov法令検索)
更地で売り出し売買契約から引渡しへ進む
登記が済んだら、更地として売り出します。
買主が見つかったら、売買契約を結んで手付金(契約時に買主が支払う代金の一部)を受け取り、決めた日に残代金の受け取りと土地の引渡しを行います。
売り出してから売却できるまでの期間は、地域の需要によって大きく変わります。
需要のある地域なら数か月で決まることもありますが、需要がなければ1年以上売れないこともあります。
前の章で説明したとおり、年内に売却できずに1月1日を越えると、固定資産税の負担が増えます。
売り出し価格は、年内に売り切ることも意識して決めると安心です。
【状況別】更地にせずそのまま売却したほうがよい土地の特徴
更地にすると価値が下がる、または解体費を回収しにくい土地は、建物付きのまま買い取ってもらうほうが負担は小さく済みます。
価格は仲介より下がるのが一般的ですが、解体費や片付けの負担、引渡し後の責任を負わずに売却できます。
すでに更地にして売れずに困っている土地も、現状のまま売却できる点は同じです。
次のような土地には、「更地にすれば売れる」という一般的なアドバイスがそのまま当てはまりません。
解体業者に連絡する前に、当てはまるものがないか確認してください。
- 前面の道路が狭い、または道路に2m以上接していない
- 市街化調整区域にある
- 重機やトラックが入れない細い道の奥にある
- 擁壁(土地の段差を支える壁)やがけに接している、または借地の上に建っている
- 地方・郊外で、近所に売り物件が長く残っている
- 家の中に家財や荷物が大量に残っている
再建築不可の土地は解体すると家を建てられなくなる
再建築不可とは、今ある建物を取り壊すと、法律上新しい建物を建てられない土地のことです。
多くは、建物の敷地が幅4m以上の道路に2m以上接していなければならない「接道義務」を満たしていないことが原因です。
再建築不可の土地を更地にすると、原則として新しい家は建てられません。
自治体の許可で例外的に建てられる場合もありますが、確実ではありません。
買い手は駐車場や資材置き場などを探す人に限られ、価格も大きく下がります。
建物が残っていれば、リフォームして住む・貸すといった使い道があり、その価値を評価して買い取る業者もいます。
再建築不可の土地は、売却方法が決まる前に自分の判断で解体しないでください。

市街化調整区域は解体後に建築許可が下りないことがある
市街化調整区域とは、都市計画法で市街化を抑えるとされた区域で、原則として新しく建物を建てられません。
市街化調整区域でも、以前から建っている家を建て替えられる場合はあります。
ただし、自治体の許可が必要で、条件は地域によって異なります。
更地にしてしまうと、許可が下りずに家を建てられない土地になるおそれがあります。
市街化調整区域の家は、建て替えの条件を自治体に確認するまで解体しないのが原則です。

道が狭く重機が入らない土地は解体費が高くなる
細い路地の奥にある家や、階段の上にある家は、解体用の重機やトラックが入れません。
この場合、手作業での解体や小型の車での搬出が必要になり、解体費が大きく上がることがあります。
こうした土地は、解体費が高くなる一方で、土地としての買い手も限られがちです。
道が狭い土地は、建て替えの際に敷地と道路の境界を後退させ、その部分を道路として提供する(セットバック)必要がある場合もあります。
その分、使える面積が減ることもあります。
解体費をかけても売却価格で回収できる見込みは低いため、先に更地にする判断は特に慎重にすべきです。
買い手が少ない地方の土地は解体費を回収しにくい
人口が減っている地方や郊外の土地は、更地にしても買い手が増えないことがよくあります。
土地の価格が数十万~数百万円の地域では、100万円を超える解体費が売却価格を上回ることもあります。
この場合、解体すると「費用をかけて更地にしたのに売れず、固定資産税だけが上がった」という最も避けたい状況になりかねません。
地方の土地でも、建物付きのまま買い取る業者であれば、解体費をかけずに売却できることがあります。
価格は期待より低くなることが多いものの、固定資産税や管理の負担が続くことを考えると、早めに売却するほうが負担が軽くなる場合もあります。

残置物が多い実家は片付けも解体もせず売る方法がある
相続した実家には、家具や家電、衣類などの家財が大量に残っていることがよくあります。
解体するには、まずこうした家財(残置物)を片付けなければなりません。
監修者であるアルバリンクによると、一般的な一戸建てで家具・家電が少し残っている程度なら5万~20万円、家財道具が一式残っていれば40万~70万円、ゴミ屋敷に近い状態なら100万~300万円です。
遠方に住んでいて片付けに通えない、思い出の品の整理に気持ちが追いつかないという方も多いはずです。
更地にすることを前提にすると、片付けと解体の両方の負担を背負うことになります。
家財が残ったまま、片付けも解体もせずに買い取る業者もあります。
その分、価格は仲介より低くなるのが一般的です。

すでに更地にして売れない土地も現状のまま買取に出せる
解体費を用意できない、あるいはすでに更地にしたのに売れずに困っている――どちらの場合も、現状のまま買い取る業者に相談する方法があります。
建物も家財もそのままの状態はもちろん、すでに更地にしてしまった土地でも、今ある状態のまま買取を相談できます。
買取とは、不動産買取会社(買取業者)が買主となって、物件を直接買い取る売却方法です。
一般の買主を探す仲介と違い、解体・片付け・契約不適合責任を買取業者が引き受ける条件にできることがあります。
その分、価格は仲介で売却できた場合より低くなるのが一般的です。
需要がほとんどない土地では、買取価格がゼロに近いことや、引き取りに費用がかかること(有償での引き取り)もあります。
相続した土地を国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度を試したものの、要件や手続きで進まなかった、ということもあります。
それでも、固定資産税や草刈りの負担が毎年続くことを考えれば、多少の費用を払ってでも手放したほうが、結果として軽くなる場合があります。
「少しでも高く売りたい」なら、需要のある土地は仲介で売り出すほうが向いています。
一方、「費用をかけずに、早く確実に手放したい」なら、買取は現実的な選択肢です。

どちらが自分に合うかは、仲介で売却した場合と買取の場合の見込みを、査定の根拠まで説明してくれる信頼できる一社に聞いてから決めても遅くありません。
今ある状態のまま、いくらで売却できるのかを先に確かめておけば、落ち着いて選べます。
更地にして売却することに関するよくある質問
- 更地にしてから売却したほうが高く売れますか?
-
解体費以上に高く売れるとは限りません。
立地に需要があり建て替えできる土地なら更地のほうが売れやすくなりますが、売却価格は解体費の分上がる程度のことが多く、手取りで見るとほとんど変わらないこともあります。
需要のない地域では、更地にしても売れず、解体費と上がった固定資産税だけが残るおそれがあります。
- 更地にして売却すると税金はどうなりますか?
-
1月1日時点で更地だと、その年の土地の固定資産税が上がります。
200㎡以下の土地で上限まで上がった場合、固定資産税は住宅用地だったときの約4倍になります。
一方、土地を売るために払った解体費は譲渡費用として売却益から差し引けます。
相続した空き家なら、条件を満たせば最大3,000万円の控除も使えます。
- 更地にしても売れない土地があるのはなぜですか?
-
買い手が土地に求めるのは、立地と「建物を建てられるか」だからです。
更地にしても、この2つは変わりません。
需要の少ない地域の土地や、再建築不可・市街化調整区域など建築に制限のある土地は、更地にしても買い手がつきにくいままです。
すでに更地にして売れずに困っている場合は、現状のまま買い取る買取業者に相談する方法があります。
値がつきにくい土地では価格がゼロに近いこともありますが、固定資産税や草刈りの負担からは解放されます。
- 古家付き土地の解体費用は売主と買主のどちらが払いますか?
-
更地渡しなら売主、古家付きのまま引き渡すなら買主が払うのが一般的です。
買主が払う場合は、その分が売買価格の値引きとして交渉されることが多いです。
解体の見積もりを取っておくと、値引きの額が妥当かを判断できます。
- 解体費用に使える補助金はありますか?
-
老朽化した空き家の解体に補助金を出している自治体があります。
対象となる建物や金額、工事前の申請が必要かどうかは自治体ごとに異なります。
解体業者と契約する前に、土地がある市区町村の窓口やホームページで確認しましょう。
まとめ|更地にするかは現況のまま査定を受けてから決めよう
更地にして売却するのが得になるのは、次の3つがそろうときに限られます。
- 立地に需要があり、解体費を売却価格で回収できる
- 解体後に同じ規模の家を建て直せる
- 建物に住む・直す価値が残っていない
1つでも当てはまらない、または判断がつかない場合は、古家付き土地として売り出すのが損をしにくい進め方です。
買主が更地を望めば、契約後に解体する更地渡しに切り替えられます。
相続した空き家の3,000万円控除も、現在は買主が解体する形で使えるようになっています。
再建築不可や市街化調整区域の土地、需要の少ない地方の土地、家財が大量に残る実家は、更地にするとかえって手放しにくくなることがあります。
こうした土地は、解体も片付けもせずに現状のまま買い取ってもらう方法があります。
価格は仲介より下がるのが一般的ですが、解体費を先に払うリスクや、売れないまま税金を払い続ける負担からは解放されます。
解体は一度すると元に戻せません。
解体業者に連絡する前に、まずは建物が建ったままの状態でいくらになるのか、どんな売却方法があるのかを確かめてください。
その結果を見てから更地にするかを決めても、決して遅くはありません。
※本記事の解体費・税額などの金額は一般的な目安や試算であり、物件の条件・地域・業者によって変わります。実際の金額は個別の見積もりや査定、税務署・税理士への確認でお確かめください。



