親から引き継いだ田舎の実家。住む予定はなく、遠方で通うのも大変。それでも固定資産税と管理の手間だけは、毎年しっかりかかってきます。
「田舎の実家はいらないけれど、どうすればいいのか分からない」と手が止まっている方は少なくありません。
放置している間も、維持費は出ていきます。管理が行き届かなければ建物が傷み、買い手を探しにくくなることもあります。
田舎の実家は、時間がたつほど手放しにくくなる「負の遺産」になりがちです。
この記事では、いらない田舎の実家を手放す6つの方法を比較します。
あわせて、相続前と相続後での選び方、かかる費用と税金、そして「売れない」と諦める前に知っておきたい選択肢まで整理します。
相続放棄の期限や、相続土地国庫帰属制度を使える土地の条件も確認しながら、ご自身に合う方法を考えていきましょう。
知りたい項目からご覧ください。
【注意】いらない田舎の実家を放置し続けると負担だけが残る
いらない田舎の実家でも、持っている間は維持費と管理の責任が残ります。
特定空家等や管理不全空家等として勧告を受けると、土地の税負担が増える可能性もあります。
いらないからと放置することは「負の遺産」を増やすだけで、早く手放すほど負担を軽くできます。
田舎の家がやっかいなのは、「使っていないのに、費用と責任だけが残り続ける」点です。
田舎では借り手や買い手が見つかりにくい地域もあり、貸す・売るつもりでも、ただ持っているだけの状態になりがちです。
まずは、いらない田舎の実家を放置すると、どんな負担があるのかを具体的に見ていきます。
誰も住まない実家は年間数十万円の維持費がかかる
いらない田舎の実家も、持っている間は毎年お金が出ていきます。
田舎の実家の主な維持費は、固定資産税・都市計画税、火災保険料、庭木の伐採や草刈りなどの管理費です。
たとえば、田舎にある土地200㎡・築古の木造戸建てについて、年間の負担を次のように見込んでみます。
税金は評価額などによって変わるため、面積と築年数だけでは決まりません。
| 項目 | 年間の目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 5万~15万円 | 課税標準額×標準税率1.4%。住宅用地特例等を考慮。都市計画税は対象地域で課税 |
| 火災保険料 | 1万~3万円 | 空き家は補償が割高・加入を断られる場合もある |
| 管理費(草刈り・見回り) | 5万~20万円 | 遠方だと交通費や代行業者への委託費が上乗せ |
| 合計 | 約11万~38万円 | 使っていなくても毎年発生 |
遠方に住んでいると、年に数回の草刈りや見回りのためだけに、交通費と丸一日を使うことになります。
管理を代行業者に頼む場合は、委託料に含まれる作業と、別料金の作業を分けて確認しましょう。
「使っていないのに毎年数十万円が消えていく」状態が、何年も続くわけです。
しかも、維持費を払っていても、必要な手入れが行き届くとは限りません。
住んでいない田舎の家は、換気や通水、補修が滞ると傷みが進みやすくなります。
いらないまま持ち続けると、維持費に加え、将来の修繕費まで増えるおそれがあるのです。
特定空家等の勧告を受けると土地の税負担が増える
放置した田舎の家は、自治体から「特定空家」に指定されるおそれがあります。
特定空家とは、倒壊の恐れや衛生・景観上の問題があるとして、自治体が指定する空き家のことです。
具体的には下記のいずれかに当てはまる状態が対象です。
- 倒壊など著しく保安上危険
- 著しく衛生上有害
- 管理不全で著しく景観を損なう
- 周辺の生活環境の保全上放置が不適切
よく「特定空家に指定されると固定資産税が6倍になる」と言われますが、正確には少し違います。
住宅用地の特例が外れるきっかけは、自治体から改善の「勧告」を受けることです。
住宅1戸につき200㎡までの小規模住宅用地は、固定資産税の課税標準額が価格の6分の1になります。
特定空家等だけでなく、放置すれば特定空家等になるおそれがある「管理不全空家等」も、勧告を受けると特例の対象から外れます。
ただし、土地の負担調整措置などもあるため、実際の税額がそのまま6倍になるとは限りません。
田舎の家の税負担は、自治体の税務窓口で確認しましょう。
特定空家等への対応は、原則として助言・指導、勧告、命令、行政代執行と進みます。緊急時などの例外もあります。
勧告は途中の段階ですが、ここが増税の分かれ目です。
さらに命令に従わない場合は、50万円以下の過料の対象となります。
最終的に行政代執行で強制的に解体されれば、その費用まで所有者に請求されます。
いらない実家でも、勧告を受ける前に管理や手放し方を見直しましょう。
出典:国土交通省:空家等対策特別措置法関連情報/日高市:固定資産税/よくあるご質問
倒壊や樹木の越境で近隣への損害賠償を負うことがある
放置のリスクは、税金だけではありません。
管理されていない田舎の家は、近隣に実害を及ぼし、所有者が損害賠償責任を問われることがあります。
民法717条は、建物や塀の設置・保存に問題があり、他人に損害を与えた場合の責任を定めています。
まず占有者が責任を負い、必要な注意を尽くしていた場合は所有者が責任を負う仕組みです。
たとえば、老朽化した屋根や外壁が台風で飛んで隣家や通行人を傷つけた、ブロック塀が倒れて人にけがをさせた、といったケースです。
「自分は落ち度がない」と思っていても、管理が行き届いていない状態だとみなされれば、責任を免れるのは簡単ではありません。
倒壊で近隣の建物を壊せば修繕費、人身事故になれば治療費や慰謝料と、賠償額が数百万円から、場合によってはそれ以上にのぼることもあります。
庭木の越境も、地味ですが典型的なトラブルです。
伸びた枝が隣地にはみ出す、落ち葉が隣家に入る、といった苦情は田舎の実家で頻繁に起こります。
遠方に住んでいると対応が後手に回り、近所付き合いのなかった相手との関係がこじれてしまうこともあります。
こうした「いつか誰かに迷惑をかけるかもしれない」という不安を、何年も抱え続けなくてよくなること自体が、早く手放す大きなメリットです。
いらない田舎の実家は放置するほど売れず負の遺産になる
田舎の実家でもっとも避けたいのは、「今なら手放せたのに、放置して手遅れになる」ことです。
田舎の実家も、空き家の期間に手入れが滞れば傷みが進みます。
雨漏りやシロアリ、水回りの劣化が進めば、買い手は修繕や解体の費用を見込みます。
その分、田舎の家に提示される価格が下がることもあります。
つまり、放置は「維持費で損をする」だけでなく、「将来の売却額まで減らす」二重の損失なのです。
そして、この負担は次の世代に引き継がれます。
自分が手放さずにいれば、いずれ子どもが同じ問題を、より劣化した状態で抱えることになります。
「先祖代々の土地だから」とそのままにした結果、誰も使わず売れもしない家が親族間で押し付け合いになる、というのは珍しい話ではありません。
いらない田舎の家は、早く動くほど選択肢が多く、遅れるほど選択肢が狭まります。


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いらない田舎の実家を手放す現実的な6つの選択肢

いらない田舎の実家を手放す選択肢は、次の6つです。
- 仲介で一般の買い手に売却する
- 買取業者に直接売る
- 隣地所有者や地元の人へ売却・譲渡する
- 自治体への寄付や空き家バンクを検討する
- 相続開始後に相続放棄を検討する
- 相続土地国庫帰属制度を利用する
田舎では買い手探しが長引くこともあるため、売れる見込みや急ぎ度で向く方法が変わります。相続放棄は、売却とは違い、遺産を引き継ぐかどうかの手続きです。
まずは全体像と比較表で、自分に合う選択肢を絞りましょう。
いらない田舎の家を手放すとき、都市部と同じ感覚で「仲介に出せば売れるだろう」と考えると、つまずきます。
田舎は買い手そのものが少なく、方法ごとの向き・不向きの差が都市部よりずっと大きいためです。
6つの方法を、次の3つの軸で見比べると選びやすくなります。
- 売れる見込み:需要のあるエリアか、建物が使える状態か
- 相続前か相続後か:親が存命なら選べる手段が増える
- 急ぎ度:多少安くても早く手放したいか、時間をかけても高く売りたいか
まず「向いている人」と「確認すること」を比べ、いらない実家に使えそうな方法を絞りましょう。費用と期間は、その下の表で確認できます。
| 手放し方 | 向いている人 | 先に確認すること |
|---|---|---|
| 仲介で売却 | 田舎でも需要があり、時間をかけられる人 | 価格・販売活動・待てる期間 |
| 買取業者に売却 | いらない実家を早く手放したい人 | 買取可否・手取り・引渡し条件 |
| 隣地・地元へ売却/譲渡 | 隣地などに利用の需要がある人 | 相手の意向・境界・費用負担 |
| 自治体への寄付/空き家バンク | 地域での受け入れや利用を探したい人 | 寄付は受け入れ可否。バンクは支援内容 |
| 相続放棄 | 遺産全体の負担が大きい人 | 相続開始後の期限・全財産・保存義務 |
| 相続土地国庫帰属 | 相続等で取得した土地を手放したい人 | 建物がないことに加え、境界などの要件 |
費用・期間・受け取るお金の目安は、次のとおりです。売却期間は物件や契約条件で変わり、成立を保証するものではありません。
| 手放し方 | 費用と手元に残る額 | 期間・期限の目安 |
|---|---|---|
| 仲介で売却 | 仲介手数料・登記など 売却代金から諸費用を引いた額が手取り | 数か月~年単位 売れない場合も |
| 買取業者に売却 | 直接取引なら仲介手数料なし その他の負担は契約で確認 | 条件が整えば最短数日~数週間 |
| 隣地・地元へ売却/譲渡 | 登記・測量等 代金は交渉次第で、無償の場合も | 数か月など、交渉と手続き次第 |
| 自治体への寄付/空き家バンク | 寄付は代金なし バンクは売買・賃貸の条件次第 | 受け入れや利用希望者次第 |
| 相続放棄 | 印紙800円・郵便切手等。専門家報酬は別途。遺産は受け取らない | 自己のための相続開始を知った時から原則3か月以内 |
| 相続土地国庫帰属 | 審査手数料1筆1万4000円+負担金。 基本20万円、土地により面積算定 | 標準処理期間8か月。 補正等で延びる場合も |
それぞれの方法を見ていきます。
仲介での売却は買い手がつけば高いが田舎では長期戦
もっとも一般的なのが、不動産仲介会社に依頼して買い手を探してもらう方法です。
仲介は、売主と買い手の間を不動産会社が取り持つ仕組みです。田舎の実家でも一般の買い手が見つかれば、買取より高く売れる場合があります。
ただしいらない田舎の家では、この「買い手が見つかれば」という前提が高いハードルになります。
仲介の買い手のほとんどは、そこに住みたいマイホーム購入者です。
人口が減り、住みたい人が少ない地域では、そもそも問い合わせが来ないことも珍しくありません。
半年経っても内見ゼロ、値下げしても反応がない、というのは田舎ではよくあることです。
いらない実家を仲介で売るなら、そのエリアに一定の需要があり、建物もまだ人が住める状態で、時間をかけられる場合に向いています。
売り出している間も固定資産税と管理費はかかり続けるため、「いつまで待つか」をあらかじめ決めておくことが大切です。
買取業者への売却なら売れにくい田舎の家も現金化しやすい
仲介で買い手がつかない田舎の実家でも、買取業者に直接売る方法なら手放せることがあります。
不動産買取とは、業者が物件を直接買い取る取引のことです。
買い手を探す仲介と違い、業者自身が買主になるため、買い手が見つかるのを待つ必要がありません。
空き家や訳あり物件に強い業者は、買い取った家を再生・活用して収益化する仕組みを持っているため、一般の買い手がつかない家にも値をつけられます。
買取は、買い手を探す期間を省き、引渡し時期を相談しやすい方法です。
査定や権利関係の確認が済み、条件が整えば、最短で数日~数週間で現金化できる場合もあります。いらない実家を急いで手放したい方は、希望する入金・引渡し時期を伝えましょう。
田舎の家に残置物(家財)が残ったまま、あるいは傷んだ状態でも、そのまま買い取ってもらえるケースが多いのも特長です。
一方で、買取価格は仲介で売れた場合より下がるのが一般的です。
業者は再生の費用とリスクを織り込んで買い取るためで、この点は正直なデメリットです。
「いらない実家を多少安くても早く手放したい」のか、「時間がかかっても価格を優先したい」のか。
田舎での売れる見込みも踏まえ、仲介と買取を選び分けましょう。
業者選びでは、田舎の実家を実際に扱ってきた、信頼できる相談先を見つけることが大切です。価格だけで決めず、金額の根拠と引渡し条件を説明してもらいましょう。
田舎の家の価値を正しく判断できる業者かどうかが、対応の丁寧さや金額の根拠の説明に表れます。

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隣地の所有者への売却・譲渡は田舎ならではの出口になる
いらない田舎の実家でも、隣の土地の所有者や地元の人が、現実的な買い手になることがあります。
隣地の所有者にとって、隣接する土地は「自分の敷地を広げられる」「日当たりや駐車スペースを確保できる」といった価値があります。
第三者には売れない土地でも、隣の人にだけは需要がある、というのは田舎ではよくあるパターンです。
農地であれば、近隣で農業を続けている人が買い手になることもあります。
ただし、相手にも買う動機とお金が必要なため、いつでも成立するわけではありません。
価格も、市場で売る場合より安くなったり、無償に近い譲渡になったりすることがあります。
譲渡でも登記費用はかかり、農地の場合は農地法にもとづく手続きが必要になる点にも注意しましょう。
いらない田舎の家なら、心当たりのある相手に声をかけてみる価値はありますが、「隣の人が必ず買ってくれる」とは考えず、あくまで選択肢の一つとして持っておくとよいでしょう。
自治体への寄付や空き家バンクは受け入れが限定的
「田舎の家が売れないなら自治体に寄付すればいい」「空き家バンクに載せれば誰か見つかる」と考える方は多いのですが、実際にはどちらも過度な期待は禁物です。
自治体への寄付は、受け入れてもらえるとは限りません。
自治体は、その土地を公共目的で使える見込みや管理コストを踏まえて判断するため、使い道のない田舎の土地はそもそも引き取らないことが多いのが実情です。
寄付が認められる場合でも、境界の確定や測量、権利関係の整理を求められ、費用と手間がかかります。
空き家バンクは、自治体などが空き家情報を掲載し、利用希望者とつなぐ仕組みです。
田舎の家を掲載しても、利用希望者が現れるとは限りません。掲載内容や写真を整え、問い合わせの状況を見ながら進めましょう。
空き家バンクの支援内容は自治体によって異なり、協力する不動産会社が見学・交渉・契約を仲介する場合もあります。情報掲載だけなのか、どこまで支援してもらえるかを確認しましょう。
寄付も空き家バンクも、うまくはまれば有効ですが、確実な出口としては当てにしにくいのが現実です。
いらない実家の処分をここに頼りきるより、売却・買取と並行して考えるのが安全です。
相続放棄をする場合は相続開始から3か月の期限に注意
親が亡くなり、遺産全体を調べた結果、いらない実家などの負担が大きいなら、相続放棄も選択肢になります。
相続放棄をすれば、田舎の家を含め、被相続人(亡くなった親など財産をのこした人)の財産を一切引き継がずに済みます。
相続放棄が有効に認められると、初めから相続人でなかったものとみなされます。ただし、占有していた実家の保存義務など、別に確認すべき負担があります。
ただし、相続放棄は「いらない家だけを放棄する」ことはできず、預貯金などのプラスの財産も含めてすべてを手放す手続きです。
期限は、自己のための相続開始を知った時から原則3か月以内です。親の存命中には相続放棄の手続きはできません。
使いどころの難しい制度なので、詳しくは次の章で相続後の選択肢とあわせて解説します。
出典:裁判所:相続の放棄の申述
相続土地国庫帰属制度で国に返す方法は建物付きだと対象外
2023年に始まった相続土地国庫帰属制度も、手放す方法の一つです。
相続土地国庫帰属制度とは、相続した不要な土地を、一定の負担金を納めて国に引き取ってもらう制度のことです。
相続した土地の使い道がなく売却も難しい場合に、国が引き取ってくれるという点で注目されています。
ただし、この制度には見落とされやすい大きな条件があります。
建物が建っている土地は、そのままでは申請できません。
建物付きの実家は更地にする必要があります。ただし、解体すれば必ず国が引き取るわけではありません。
工事を決める前に、法務局へ土地の条件を相談しましょう。
ほかにも、境界がはっきりしない土地、土壌が汚染されている土地、管理に過度の費用がかかる土地などは対象外とされ、要件は決して緩くありません。
費用もかかります。
審査手数料が土地1筆あたり1万4000円、承認された場合の負担金が原則20万円~(土地の種類・面積により変動)で、これらは所有者の持ち出しです。
「国が引き取ってくれる」と聞くと万能に思えますが、実際には田舎の実家のように建物付きのケースでは、解体費用まで含めると使いにくい制度です。
土地だけを相続した場合の選択肢として、条件を確認したうえで検討するのが現実的です。
出典:法務省:相続土地国庫帰属制度の概要/法務省:相続土地国庫帰属制度に関するQ&A
田舎の実家は相続前と相続後で手放せる方法が変わる
田舎の家を手放す手段は、親が存命の「相続前」と、すでに引き継いだ「相続後」で大きく変わります。
相続放棄には相続開始後の期限があり、放棄時に占有していた実家の保存義務が残る場合もあります。
いらない家をどうするか迷うなら、売れる価格だけでなく、遺産全体の財産・借金と手続きの期限も並べて確認しましょう。
「実家はいらない」と感じていても、多くの人は親が亡くなり、相続してから初めて具体的に動き始めます。
しかし、引き継いでから考えると選べる手段が減ってしまうことがあります。
時間の流れに沿って、いつ何ができるのかを整理すると、下記の通りとなります。
- 親が存命:親の意向と住まいを確認し、田舎の実家の売却や相続方針を話し合う
- 相続が始まった直後:実家以外の財産・借金と、相続放棄の期限を確認する
- 相続する方針が決まった後:名義や共有者の意向を整理し、実家の売却・買取などの条件を比べる
親が存命なら実家の売却や相続方針を話し合う
田舎の実家がいらないと考えていても、持ち主が親なら、まず親の意向と今後の住まいを確認しましょう。
一つは、親の存命中に、親自身が田舎の家を売却してしまう方法です。
持ち主である親が売れば、相続の対象そのものがなくなり、子が「いらない家」を引き継ぐ問題は起きません。
売却代金は親の老後資金や介護費用にあてることもできます。
相続放棄を考える場合も、生前にできるのは財産を調べたり、家族で方針を話し合ったりする準備です。手続きは相続が始まってから行います。
実家以外にめぼしい財産がなく、負担のほうが大きいと見込まれるなら、あらかじめ家族で方針を話し合っておくと、いざというときに慌てずに済みます。
判断のためにも、親が元気なうちに「田舎の実家は売れるのか」「いくらになりそうか」を早めに確認しておくことをおすすめします。
認知症などで親の判断能力が低下すると、本人名義の家を売ることが一気に難しくなるためです。元気なうちの話し合いが、後の選択肢を守ります。
出典:裁判所:相続の放棄の申述
相続放棄の申述は相続開始を知ってから原則3か月以内
相続後にもっとも注意したいのが、相続放棄の期限です。
相続放棄は、原則として「自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に、家庭裁判所へ申述(放棄する意思を申し立てること)をしなければなりません。
判断がつかない場合は、期限内に家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てる方法があります。いらない実家の調査に時間がかかりそうなら、早めに相談しましょう。
しかも、一度受理された相続放棄は、あとから撤回できません。
また、いらない実家でも、売却など相続財産を処分すると、相続を単純承認したものとみなされる場合があります。放棄を検討中なら、売却や家財の処分を進める前に確認してください。
田舎の実家を「いらない」と感じているなら、相続が発生したらできるだけ早く、放棄すべきかどうかを見極める必要があります。
査定の相談と、実際の売却・処分は分けて進めましょう。
出典:裁判所:相続の放棄の申述/民法:第572条・第717条・第921条等
相続放棄は預貯金も含め全財産を失う手続き
相続放棄でもう一つ誤解が多いのが、「いらない田舎の実家だけを放棄する」ことはできない、という点です。
相続放棄とは、相続人としての地位そのものを手放し、一切の遺産を引き継がない手続きのことです。
不要な不動産だけを選んで捨て、預貯金や株式などのプラスの財産だけを受け取る、という都合のよい使い方はできません。
そのため、いらない家のほかに預貯金や有価証券などまとまった財産がある場合、相続放棄をすると、それらもすべて受け取れなくなります。
「田舎の実家を手放したい」という一点のために全財産を放棄するのは、かえって損になることが少なくありません。
相続放棄が向いているのは、実家などの負担が明らかに大きく、プラスの財産がほとんどない場合です。
田舎の実家以外にも財産があれば、借金や今後の維持費、処分費を差し引いて比べましょう。相続してから売るほうが有利な場合もあります。
「放棄」か「相続して手放す」かは、遺産全体を見て判断することが大切です。
出典:裁判所:相続の放棄の申述
相続放棄しても管理義務が残るケースがある
「相続放棄すれば、田舎の実家とは完全に縁が切れる」と思われがちですが、これも正確ではありません。
放棄した後も、一定の場合には管理(保存)の義務が残ります。
2023年4月に改正された民法940条では、相続放棄をした人でも、放棄した時点でその財産を「現に占有している」場合には、相続人や相続財産清算人に引き渡すまでの間、自分の財産と同じ注意をもって保存しなければならない、と定められています。
田舎の実家に住んでいた場合などは、現に占有していたかが問題になります。管理への関わり方なども含め、個別の事情で判断されます。
ほかに相続人がいない場合などは、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立て、その人に引き継ぐまで管理を続ける必要が生じることもあります。
遠方に住んでいたというだけで、保存義務の有無が決まるわけではありません。いらない家をどのように支配・管理していたかを確認しましょう。
いずれにせよ、「放棄=すべての負担から即座に解放」とは限らない点は、あらかじめ知っておくべき落とし穴です。
迷うならまず実家がいくらで手放せるか把握する
いらない家の価格を知ることは、売却と保有を比べる材料になります。相続放棄を考えている場合は、その期限の確認も同時に進めましょう。
「その実家が、今いくらで手放せるのか」を知ることです。
相続放棄すべきか、売却すべきかを迷う人の多くは、田舎の実家の価値がまったく分からないまま悩んでいます。
実家に値がつく場合も、売却代金だけで結論は出せません。ほかの遺産や借金、売却までにかかる費用を含めて比べると、判断しやすくなります。
田舎の家はいらないと感じていても、金額と条件を整理してから方法を選びましょう。

田舎の実家の査定を受けること自体は、売却の意思を固めていなくても問題ありません。
いらない田舎の実家が「いくらになるか」を知ることは、放棄・売却・保有のどれを選ぶにしても必要な情報です。
特に田舎の実家は、一般の相場が当てはまりにくく、実際に査定してみないと分からないことが多いため、早めに現状の価値を把握しておくことが、後悔しない第一歩になります。
【状況別】あなたの田舎の実家に向いた手放し方は?
同じ「いらない田舎の実家」でも、建物の状態・権利関係・住まいからの距離によって、現実的な手放し方は変わります。
傷んだ実家なら現状での買取、共有なら全体売却や持分売却、遠方なら家財を残した引渡しなどが候補になります。使える条件を確認しながら読み進めてください。
自分の状況に近いケースから読み進めてください。
方法の一覧を見ても「結局、自分はどれなのか」が分からない、という声は多いものです。
ここでは、田舎の実家でとくに多い5つの状況ごとに、現実的な選び方を示します。
築古でボロボロなら現状のまま買取が現実的
建物がかなり傷んでいて、「こんな状態では売れないだろう」と感じる田舎の実家は少なくありません。
雨漏りやシロアリ、傾きがある田舎の実家は、仲介で一般の買い手を探しても、まず敬遠されます。
いらない家を仲介で売る際、状態や土地の需要によっては「解体して更地にしてから」と提案されることもあります。
しかし、解体には木造でも100万円以上かかることが多く、更地にすると固定資産税の軽減も外れます。
持ち出しばかりが増えるわけです。
築古でボロボロの田舎の実家がいらないなら、現状のまま買い取ってくれる買取業者に相談するのが現実的です。
田舎の家が傷んでいても、そのまま買い取れる業者であれば、解体もリフォームもせずに手放せます。
本記事を監修するアルバリンクの買取現場でも、「一般の不動産会社に断られた」「もう解体するしかないと思っていた」という田舎の実家の相談は珍しくないといいます。
「直してから」「壊してから」と身構える必要がない点が、傷んだ田舎の家では大きな利点になります。
土地だけや農地なら国庫帰属や隣地売却を検討
建物はすでになく、田舎の土地だけが残っている、あるいは農地を相続した、というケースもあります。
土地だけであれば、前述の相続土地国庫帰属制度が選択肢に入ります。
建物付きだと解体が必要ですが、もともと更地であれば、その手間なく申請を検討できます。
ただし、要件と負担金は事前によく確認しましょう。
また、田舎の土地や農地は、隣地の所有者や近隣で農業を続けている人が買い手になりやすいケースです。
第三者には売れなくても、隣の人には価値がある、というパターンが土地では特に多く見られます。
なお農地の売買には農地法にもとづく許可が要るため、農業委員会などへの確認が欠かせません。
土地の種類によって使える手段が変わるので、まずは「更地の宅地なのか」「農地なのか」を整理することが出発点です。
兄弟と共有で割れているなら自分の持分だけ手放せる
田舎の家を、兄弟姉妹など複数人で共有名義のまま相続しているケースも多くあります。
「いらないけれど、他の共有者が反対している」「話し合いがまとまらず、何年も塩漬け」という状態です。
共有名義の不動産全体を売るには、共有者全員の同意が必要です。
共有持分が確定している場合、自分の持分だけなら他の共有者の同意なしに売却できます。
遺産分割が済んでいない場合は、同じように扱わず権利関係を確認しましょう。
持分の買取に対応した業者へ、いらない田舎の実家の持分を相談する方法があります。
ただし、売却後に新しい共有者が加わるため、親族に知られないことは保証できません。
業者に売った後は、その業者と残った共有者との間で権利関係を調整することになります。実家全体の売却や親族による持分の買取も含め、条件を比べて判断しましょう。
「もめていて動けない」状況でも、自分だけは負担から抜けられる道がある、と知っておくと気持ちが楽になります。

遠方で片付けに通えないなら残置物そのまま買取を使う
田舎の実家を相続した人の多くは、実家から遠く離れた都市部に暮らしています。
「片付けのために何度も帰省できない」「家財がそのまま残っていて手がつけられない」というのは、非常によくある悩みです。
仲介で売る場合も、家財を残せるかは買い手との合意次第です。田舎の実家を空にして引き渡す条件なら、売主が片付けを手配します。
田舎の家から遠くに住んでいると、この片付けだけで何日も帰省することになり、処分費用もかさみます。
一方、残置物をそのまま引き取ってくれる買取業者であれば、いらない実家を、家財を片付けずに手放せます。
査定も、現地に行かなくても、写真や資料をもとに進められる場合が多く、遠方でも話を進められます。
実際、相続した実家の相談では、遠方・残置物ありという条件はごく一般的で、そのまま対応できる業者は存在します。
「遠くて通えないから無理」と諦める前に、田舎の家を現状のまま引き取れるかを相談してみる価値があります。
周囲に知られにくく手放すなら広告不要の買取業者へ
「田舎の実家を手放すことを、近所や親戚に知られたくない」という思いを持つ方もいます。
仲介で売り出すと、物件情報が広告やポータルサイトに公開され、地元の人の目に触れることになります。
田舎では顔が知られていることも多く、これを避けたい心理は自然なものです。
買取業者との直接取引なら、いらない実家を売るために広告を出す必要がありません。一般に公開して買い手を探す方法より、周囲に知られにくくなります。
ただし、現地調査や登記の変更などから知られる可能性はあります。誰にも知られないと約束できる方法ではありません。
人に知られたくない事情があるケースほど、公開して買い手を探す仲介より、当事者間だけで完結する買取が向いています。
プライバシーを守りながら手放したい、という希望も、業者買取であれば実現しやすくなります。

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田舎の実家が売れないと諦める前に知ること
田舎の実家は取引事例が乏しく、一般的な「相場」が成立しにくいのが実情で、需要がなければ0円のこともあります。
ただし、仲介で売れない家でも、買い取って再生する買取業者なら現金化できる場合があります。
有料引き取りになることもありますが、放置による負担を早く断てる点に価値があります。
「仲介に出したけれど売れなかった」「不動産会社にうちでは扱えないと断られた」。
そんな経験をして、諦めかけている方に向けて、最後にもう一段深く掘り下げます。
田舎の実家は相場をつかみにくく需要次第で0円もある
まず知っておきたいのは、田舎の実家には、都市部のような「相場」が成り立ちにくいという事実です。
相場という言葉が成立するには、①取引事例が十分にあり②その物件を欲しい人が一定数いる、という条件が必要です。
田舎でも地域によって事情は違いますが、取引事例や買い手が少なく、相場をつかみにくい家もあります。
近隣の成約事例が乏しい場合は、土地や建物の条件と、買い手がどう使えるかを具体的に見てもらう必要があります。
そのため、田舎の実家の価値は、需要次第で大きく振れます。
人気の観光地や移住需要のあるエリアなら思わぬ高値がつくこともある一方、需要のまったくない地域では、いくら値下げしても買い手がつかず、実質0円ということもあります。
「地方だから一律に安い」のではなく、「需要があるかないかで天と地ほど違う」というのが正確なところです。
だからこそ、ネットの相場情報をうのみにせず、実際に価値を確かめることが欠かせません。
仲介で売れない家でも買取業者なら買い取れる理由
仲介では売れなかった家が、なぜ買取業者になら売れるのか。
その理由は、両者の仕組みの違いにあります。
仲介の買い手は、そこに住みたい一般の個人です。住みたい人がいなければ、どんなに時間をかけても売れません。
一方、買取業者は、買い取った家を再生・活用して収益を上げることを前提にしています。
リフォームして貸す、更地にして別の用途に使う、といった出口を業者側が持っているため、一般の人が「住みたい」と思わない家にも値をつけられるのです。
| 比較項目 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 買い手 | そこに住みたい個人 | 再生・活用する業者 |
| 売れるまでの期間 | 数か月~年単位(売れないことも) | 条件が整えば最短数日~数週間 |
| 価格 | 一般に買取より高値を目指せる | 仲介より下がる |
| 売主の手間・費用 | 片付け・修繕・広告対応など | 少ない(現状のままのことも) |
「住みたい人を探す」のが仲介、「事業として引き取る」のが買取、と考えると分かりやすいでしょう。
田舎で住みたい人が見つからない家ほど、買取の仕組みが効いてきます。
有料引き取りになることもあるが早く負担を断てる
正直にお伝えすべき点として、需要のまったくない田舎の実家では、「有料引き取り」になることもあります。
有料引き取りとは、売却代金よりも処分にかかる費用が上回り、所有者がお金を払って手放す取引のことです。
建物が傷みすぎて再生費用が価値を超える、重機が入らず解体費が高くつく、そもそも需要がない、といった土地・建物では、値がつかないどころか、手放すのに費用がかかることがあります。
「お金をもらうどころか、払って手放すのか」と落胆されるかもしれません。
しかし、ここで立ち止まって考えたいのは、放置し続けた場合のコストです。
前述のとおり、持ち続ければ毎年数十万円の維持費と、賠償リスクや精神的な負担がかかり続けます。
有料でいらない田舎の実家を引き取ってもらう場合も、支払いだけで所有権や責任が移るわけではありません。
契約と名義変更、引渡しまで確認しましょう。
「いつまでこの問題が続くのか分からない」状態から解放されること自体に、大きな価値があります。
大切なのは、有料引き取りになるかどうかも、査定してみなければ分からないということです。
実際に必要な金額を出してもらい、持ち続ける費用と比べましょう。田舎の実家を引き取る相手、追加費用の有無、所有権を移す時期も確認が必要です。
契約不適合の免責や解体不要で売主の負担を外せる
田舎の家の買取には、価格以外にも売主の負担を軽くする利点があります。
いらない田舎の実家のような古い家では、この点が特に効いてきます。
一つは、契約不適合責任を免責にできる場合があることです。
契約不適合責任とは、売った後に雨漏りや土地の欠陥など契約と違う不具合が見つかったとき、売主が修補や賠償の責任を負う仕組みです。
買取では、契約不適合責任を負わない特約を相談できる場合があります。
ただし、知りながら告げなかった不具合などは、免責特約があっても責任を免れません。
田舎の実家で把握している傷みは、契約前に伝えましょう。
もう一つは、解体や片付けが不要なことです。
買取では、傷んだ建物や残置物をそのまま引き取る条件で合意できれば、いらない田舎の実家の解体・片付けを先に手配せずに済みます。
費用が買取価格に反映されることもあるため、手取りで比べましょう。
名義変更などの手続き面でも、業者側で対応してくれるケースがあります。
遠方に住み、いらない田舎の実家を持て余している方にとって、工事や片付けを手配する手間が減ることも、売り方を選ぶ大切な判断材料です。
いらない田舎の実家を手放すときの費用と税金
田舎の実家を手放すときは、仲介手数料・登記・測量などの費用と、売却益にかかる譲渡所得税が主なコストです。
相続した空き家は3000万円の特別控除で税を大きく減らせる場合があります。
売却額が小さい田舎では、安易に更地にすると固定資産税の軽減が外れ、かえって損になることもあります。
「手放したいけれど、費用や税金でかえって損をしないか」という不安に、ここで答えます。
田舎の実家は売却額が小さいぶん、費用の比率が重くなりやすいので、事前に全体像をつかんでおきましょう。
売却にかかる費用は仲介手数料・登記・測量が中心
田舎の実家を売却するときにかかる主な費用は、次のとおりです。
- 仲介手数料:
仲介で売る場合、売却価格に応じて上限が決まっています。
通常は価格帯ごとの料率で計算し、400万円超は「売却価格×3%+6万円」に消費税を加えた額が上限です。
800万円以下の物件には、事前の説明・合意により税込33万円までとする特例があります。
直接買取では仲介手数料はかかりません。 - 登記費用:
相続した実家は、買主への所有権移転前に相続人名義への登記が必要です。
抵当権が残っていれば抹消登記も必要です。司法書士に依頼すると報酬もかかります。 - 測量費用:
境界がはっきりしない土地では、売却前に測量を求められることがあります。
数十万円かかることもあります。 - その他:
残置物(残った家財)の処分費、解体する場合の解体費など。
処分費は残っている家財の量によって変わり、少なければ数万円程度、家財一式がそのままなら数十万円に及ぶこともあります。
解体費は木造で100万円以上かかることが多いといえます。
相続登記は、相続による所有権取得を知った日から原則3年以内の申請が必要です。
2024年4月1日より前から取得を知っている未登記の実家は、原則2027年3月31日が期限です。
ここで押さえておきたいのが、買取ならこれらの費用の一部を業者が負担してくれるケースがあることです。
業者が手続きや処分を引き受ける場合も、費用の負担者と買取価格への反映を確認しましょう。
田舎の実家は、売却代金から何が差し引かれるかが大切です。
田舎の実家のように売却額が小さい場合、こうした費用負担の差が手取りに大きく響きます。
出典:国土交通省:不動産取引の仲介手数料/法務省:相続登記の申請義務化に関するQ&A
売却益の譲渡所得税は空き家特例で減らせる
田舎の実家を売って利益が出ると、その利益に譲渡所得税(所得税・住民税)がかかります。
ここでよくある誤解が、「売れた金額すべてに税金がかかる」というものですが、これは間違いです。
税金がかかるのは、売れた金額ではなく「利益(譲渡所得)」の部分だけです。
計算式は次のとおりです。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
取得費は、親が田舎の実家を買ったときの購入代金や手数料などをもとに計算し、建物は減価償却費相当額を差し引きます。
譲渡費用は仲介手数料など、売却のために直接かかった費用です。
税率は、売却した年の1月1日時点の所有期間で分かれます。
相続した実家は親の取得時期を引き継ぎ、5年以下なら約39%、5年超なら約20%です。特別控除が使える場合は、控除後の課税譲渡所得に税率をかけます。
さらに、相続した空き家には心強い特例があります。
空き家の3000万円特別控除とは、相続した空き家を売った利益から最大3000万円を差し引ける税の特例のことです。
たとえば、相続した田舎の実家を売って500万円の利益が出た場合でも、この特例が使えれば3000万円を差し引けるので、譲渡所得はゼロとなり、譲渡所得税はかかりません。
いらない田舎の実家を売って特例を使うには、主に次の条件を満たす必要があります。
- 1981年5月31日以前の建築で、区分所有建物登記がされていない
- 相続開始直前に、原則として親など被相続人が1人で住んでいた
- 相続後、居住・賃貸・事業に使っていないことなどの利用条件を満たす
- 売却代金が1億円以下などの金額要件を満たす
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る
耐震・解体の要件もあります。2024年以降の譲渡では、売却した年の翌年2月15日までに耐震改修や取壊しを行って要件を満たす方法もあるため、先に工事をする必要があるか確認しましょう。
適用期限は2027年12月31日までの譲渡とされています。
2024年以降の譲渡で、対象の家屋と敷地等を相続・遺贈で取得した相続人が3人以上の場合は、控除額が1人当たり最大2000万円となります。
相続人全員の人数だけで判断するものではありません。
田舎の実家は兄弟姉妹で共有相続することも多いため、該当しやすい点に注意が必要です。
特例を使うには、必要書類を添えた確定申告が必要です。田舎の実家がいらないからと先に解体や賃貸を進めず、適用条件を税務署や税理士へ確認しましょう。
出典:国税庁:相続等による取得費と取得時期/国税庁:取得費となるもの/国税庁:長期譲渡所得の税額の計算/国税庁:短期譲渡所得の税額の計算/国税庁:被相続人の居住用財産を売ったときの特例
相続放棄や国庫帰属にも費用や負担金がかかる
「売らずに手放す」方法にも、それぞれ費用がかかります。
無料で終わるわけではない点は、あらかじめ知っておきましょう。
相続放棄は、家庭裁判所への申述に必要な収入印紙代(800円)や郵便切手代などで、自分で行えば数千円程度です。
ただし、手続きに不安があり弁護士や司法書士に依頼すると、数万円~の報酬が別途かかります。
相続土地国庫帰属制度は、前述のとおり審査手数料が土地1筆あたり1万4000円、承認された場合の負担金が原則20万円~(土地の種類・面積により変動)かかります。
建物付きの田舎の実家では、これに加えて解体費用も必要になるため、トータルの負担は決して小さくありません。
これらの「手放すためにお金を払う」方法と、売却・買取で「現金を得る(または負担を最小化する)」方法を、費用面でも比べて判断することが大切です。
出典:法務省:相続土地国庫帰属制度の概要/法務省:相続土地国庫帰属制度に関するQ&A
更地にすると固定資産税の軽減が外れ負担が増える
最後に、田舎の実家でやりがちな失敗として、「とりあえず解体して更地にする」ことの落とし穴に触れておきます。
住宅1戸につき200㎡までの小規模住宅用地は、固定資産税の課税標準額が価格の6分の1になります。
実家を解体して住宅用地の特例から外れると、土地の税負担が増える可能性があります。
毎年1月1日の状況などで判断されるため、引渡し時期も合わせて確認しましょう。
買い手がすぐ見つかればよいのですが、田舎では更地にしても売れないことが多く、「解体費を払ったうえに、税金まで上がった」という事態になりかねません。
解体は、買い手や活用の見込みが立ってから行うのが原則です。
売れる当てもないまま先に解体するのは、田舎の実家では特にリスクが高い選択です。
前述のとおり、傷んだ家でも解体せずにそのまま買い取れる業者もあります。
「解体しないと手放せない」と思い込む前に、田舎の実家を現状のまま引き取ってもらえないかを確認すれば、解体費と増税の両方を避けられる可能性があります。
田舎の実家がいらないときのよくある質問
- 田舎の実家はいらないので相続放棄すればいいですか?
-
いらない実家だけを選んで相続放棄することはできず、預貯金や借金を含む遺産全体で判断します。自己のための相続開始を知った時から原則3か月以内の申述が必要です。査定を待って期限を過ぎないようにし、売却・処分前に相談しましょう。放棄時に占有していた財産は、引渡しまで保存義務が残る場合もあります。
- 田舎の実家が売れないときはどうすればいいですか?
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仲介で売れなくても、田舎の実家を扱う買取業者なら現状で買い取れる場合があります。いらないからと先に解体せず、買取の可否、手取り、必要な費用を確かめましょう。条件によっては有料引き取りとなるため、金額と契約内容の確認も必要です。
- 相続土地国庫帰属制度で建物ごと国に返せますか?
-
建物付きの土地は、そのままでは申請できません。更地にしても境界などの要件を満たす必要があるため、いらない実家を壊す前に法務局へ相談しましょう。審査手数料や負担金、解体費を含めて売却・買取と比べることが大切です。
- 遠方で片付けにも行けませんが手放せますか?
-
家財を残したまま引き渡せる条件で合意できれば、片付けに通わず手放せる場合があります。田舎の実家がいらないものの帰省できない方は、写真や資料での相談、現地確認への立会い、鍵の受け渡し、残す家財の範囲を業者へ確認しましょう。
まとめ|いらない田舎の実家は放置せず手放し方を決めよう
いらない田舎の実家を手放す方法は、仲介売却・買取・隣地や地元への売却・自治体寄付や空き家バンク・相続放棄・相続土地国庫帰属制度の6つでした。
需要があり急がないなら仲介、いらない実家を早く手放したいなら買取も検討する、というように、売れる見込み・相続の状況・急ぎ度で選び分けましょう。
大切なのは、放置だけは避けることです。
持ち続ける限り、毎年の維持費と法的な責任、そして次世代への負担が積み重なり、家は売れにくくなっていきます。
田舎の実家は、早く動くほど選択肢が多く残ります。
まずは、いらない田舎の実家の状態と名義、必要な費用、売却の見込みを整理しましょう。
相続放棄を考えている場合は、査定を待つ間も期限を確認し、実家以外の財産や借金も含めて判断してください。
田舎の実家は一般の相場が当てはまりにくいからこそ、実際に確かめてみることが、後悔しない第一歩になります。
「売れない・面倒」で止まっていた手を、まず現状を知ることから動かしてみてください。

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