「市街化調整区域にある土地や家を売りに出しても、なかなか買い手がつかない」
「不動産会社に持ち込んだら、うちでは扱えないと断られてしまった」
相続などでこうした土地を抱え、途方に暮れている方は少なくありません。
事実として、こうした土地や家は売れにくい傾向がありますが、市街化調整区域だから売れない、と決まっているわけではありません。
建て替えができるのか、買った人が何に使えるのか。その条件を確かめると、自分のケースで取れる手放し方が見えてきます。
この記事では、市街化調整区域が売れないと言われる理由から、売れる物件と売れない物件の違い、手放すための6つの方法と費用の目安までを解説します。
市街化調整区域が売れにくい5つの理由
まず、市街化調整区域とは、都市計画法で「市街化を抑制すべき区域」と定められた区域です。
市街化調整区域の土地や家が売れない背景には、建築の制限があります。
買い手が希望する家を建てられなかったり、住宅ローンの審査に通りにくかったりするため、購入を検討する人が限られるのです。
上下水道などのインフラが整っていないことや、生活の利便性が低いことも、買い手が集まりにくい原因になります。
まずは、なぜ普通の土地のようには売れないのか、5つの理由を見ていきましょう。
原則として建物を「新築」も「建て替え」もできない
市街化調整区域で新しく家を建てるには、原則として都市計画法の許可基準を満たす必要があります。
一定の農林漁業用の建物などには例外がありますが、誰でも好きな用途で建てられるわけではありません。
今ある家を取り壊しても、同じように建て直せるとは限りません。
解体する前に、買った人が建て替えられるかを確認する必要があります。
なお、市街化調整区域の制限と、道路に十分接していないことによる「再建築不可」は別の問題です。
両方の制限が重なる土地もあります。家を建てられない土地は、マイホームを新築したい買い手には選ばれにくくなります。
「家を建てたい人」以外の買い手を探す必要があるため、住宅地と同じように売り出しても売れないことがあるのです。

住宅ローンが使えず現金で買える人しか手を出せない
住宅ローンの利用しにくさも、買い手が限られる理由の一つです。
金融機関は、融資するときに土地や建物を担保に取りますが、建て替えや再販売に制約がある物件は、担保としての評価が厳しくなります。
ただし、市街化調整区域の物件は一律に住宅ローンを使えない、というわけではありません。買った人が建て替えられるなど、条件を満たせば申し込める金融機関もあります。
利用できるローンが見つからなければ、買い手は現金などで購入資金を用意しなければなりません。
買い手の立場で考えると、購入しにくい理由が見えてきます。
気に入った土地でも、必要な資金を借りられなければ購入は難しくなりますし、現金を用意できる人にも、ほかの土地と比べて選ぶ理由が必要です。
隣地とまとめて使える、予定している事業に適しているなど、その人にとっての利点があるかどうかです。
そのため、売れないときは価格だけでなく、誰なら資金を用意でき、この土地を使いたいと思うかを考えることが大切になります。
出典:SBI新生銀行「市街化調整区域の物件を購入したいのですが、住宅ローンの申込みはできますか?」
上下水道やガスが未整備で追加費用がかかる
市街化調整区域には、上下水道・都市ガスといったインフラが引き込まれていない土地もあります。
インフラが未整備の場合、買い手はその土地を使うために、引き込み工事の費用を別途負担することになります。
工事の内容によっては数十万円から100万円以上かかることもあります。道路からの距離や工事範囲で変わるため、購入代金だけでは必要な予算を判断できません。
とくに、水道が井戸、排水が浄化槽や汲み取りといった土地は、維持管理の手間や費用も見込む必要があります。
土地の価格が安くても、工事費まで含めると予算を超えてしまう。これも、購入をためらう原因になります。
生活の利便性によっては住みたい人が集まりにくい
周辺にお店や学校、病院などが少ないエリアでは、生活の利便性も売れない理由になります。
市街化調整区域かどうかだけでなく、実際の周辺環境を見て判断する必要があります。
自分が住むために家や土地を買う人(実需の買い手)は、通勤・通学や日々の買い物のしやすさを重視します。
利便性の低いエリアは、この実需の買い手から選ばれにくくなります。
需要が少ないエリアの不動産は、価格を下げても売れないことがあります。
「安くすればいずれ売れる」とは限らず、買い手そのものがいなければ、何年待っても売れないという事態も起こりえます。
農地は売買や転用に許可が必要になる
土地の登記上の種類を「地目」といいます。
市街化調整区域には、登記上の地目が「田」や「畑」の土地もあります。農地法が適用されるかは、登記の表示だけでなく、実際の利用状況も踏まえて判断されます。
農地のまま売る場合は原則として農業委員会の許可、農地以外に転用して売る場合は原則として都道府県知事等の許可が必要です。
農地のまま買う人は、自ら耕作するなどの要件を満たす必要があります。今すでに農家である人だけでなく、新たに農業を始める人も、要件を満たせば対象になります。
売主と買主が合意するだけでは売れないため、農地の取引は、まず農業委員会に相談しましょう。
農地の手放し方は、この記事の後半でくわしく解説します。
出典:農林水産省「農地法等の三段表・農地制度関係通知」/農林水産省「農地転用許可制度」
市街化調整区域で売れる物件と売れない物件の違い
同じ市街化調整区域でも、買い手が見つかる物件もあれば、長く売れない物件もあります。
違いを確かめるには、買った人が建て替えられるか・周辺に需要があるか・農地の制限を受けるかを調べます。
開発許可を受けた家や、区域が分けられる「線引き」の前からある家でも、今の所有者と買い手では認められる使い方が違う場合があります。
「昔から家が建っているから大丈夫」と判断せず、売却後も使える条件を確認しましょう。
- 家を建てたい人に売るなら→買い手が新築・建て替えできる条件を役所で確認する。
- 農地なら→農業委員会で売買や転用の許可を確認する。
- 利用条件がわかっても売れないなら→隣地所有者への打診や、対応実績のある買取業者への相談を検討する。
開発許可を受けた物件は買い手が使える条件を確かめる
市街化調整区域でも、正式に開発許可を受けて建てられた家などは、建て替えや増改築が認められる場合があります。建て替えの余地があれば、自分で住みたい買い手も検討しやすくなります。
ただし、農業を営む人の住宅など、許可を受けた人の事情が条件になっている物件では、買い手も同じように使えるとは限りません。
売却が進まない理由が許可条件にあるのかを確かめるため、手元の開発許可書を持って役所に相談しましょう。
「第三者に売った後も住宅として使えるか、建て替えられるか」と聞くと、確認点がはっきりします。
既存宅地や線引き前の建物は建て替えの余地がある
線引きとは、都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に分けることです。
この線引きが行われる前から宅地として使われていた土地や、そこに建っていた建物は、一定の条件のもとで建て替えが認められることがあります。
こうした土地を「既存宅地」と呼ぶことがあります。ただし、旧来の既存宅地確認制度は2001年に廃止されています。昔の確認や呼び名だけで、現在も自由に建築できるとは判断できません。
売り出す前に、自治体の現在の基準に照らして建て替えの余地があるかを確認する価値があります。
過去の登記簿や建築時の資料を用意して相談しましょう。
出典:横浜市「市街化調整区域で建築するにはどうすればよいのですか」
自治体の区域指定制度で建築が緩和される場合がある
自治体が条例で指定した区域では、一定の条件で住宅などを建てられる場合があります。
指定区域の有無や、建てられる建物の用途、買い手に求める条件は自治体によって異なります。
対象の土地なら、住宅を探している人にも売れる可能性があります。価格を決める前に、利用できる制度がないか確認しましょう。
役所には所在地を伝え、指定区域に入るかだけでなく、どのような人が何を建てられるのかまで尋ねてください。
農地・未接道・無許可の建物は特に売りにくい
反対に、とくに売りにくいのが、農地法の制限を受ける土地、道路に十分接していない土地、必要な許可を受けずに建てられた建物です。農地は前述のとおり売買に許可が必要です。
道路の条件を満たさない土地では原則として建て替えが難しく、必要な許可を受けていない建物には是正の問題もあります。
また、買い手が用途を実現できなければ、安くしても購入につながらないことがあります。
一般の仲介で売れない場合は、こうした物件を扱う買取業者に相談する方法があります。
ただし、専門業者であっても、建築や農地の制限を無視して買い取れるわけではありません。
区域区分と地目は都市計画図と登記簿で調べる
「買い手が使える土地なのか」を判断する前に、まず区域区分と地目、建て替えの条件を調べます。
手順は次のとおりです。
市区町村の都市計画情報(都市計画図)で、その土地が市街化調整区域かどうかを確認します。
多くの自治体がインターネットで公開しており、窓口でも確認できます。
登記簿で宅地・田・畑などの表示を確認します。
農地の可能性があれば、実際の利用状況も農業委員会に伝えましょう。
開発許可や建築時の資料をもとに、買い手が使える用途と建て替えの条件を、役所の開発許可・建築の担当窓口で確認します。
確認した結果から、検討しやすい売り方を整理すると次のようになります。
| 物件のタイプ | 確認したい条件 | 検討する売り方 |
|---|---|---|
| 開発許可を得て建てた家 | 買い手も住宅として使い、建て替えられるか | 条件を満たし、住宅需要もあれば仲介を検討 |
| 既存宅地・線引き前の建物 | 現在の自治体の基準で建て替えが認められるか | 古い確認だけで判断せず、利用条件を確かめて売り出す |
| 区域指定制度の対象エリア | 用途や買い手の条件を満たすか | 許可の見通しを確認し、条件に合う買い手を探す |
| 幹線道路沿い・用途地域に近い土地 | 予定する事業用途が認められるか | 周辺の事業者や、事業用地を扱う会社に相談 |
| 農地法の制限を受ける田・畑 | 買い手が農地取得の要件を満たすか | 近隣の農家などに打診。転用を伴うなら先に許可を確認 |
| 未接道・無許可の建物 | 接道の問題や許可違反を解消できるか | 役所で状況を確認し、対応実績のある会社に相談 |
市街化調整区域を放置すると負担が増え続ける
「売れないなら、そのままにしておけばいい」と考えたくなりますが、放置には見えにくいコストがかかり続けます。
使っていなくても固定資産税などの負担は続きます。
建物の管理状態が悪化して行政の勧告を受けると、住宅用地の税の軽減が外れることもあります。
老朽化による近隣トラブルや損害賠償のリスクも、時間とともに高まります。
使っていなくても固定資産税と都市計画税がかかる
土地や建物を所有していると、使っていなくても毎年、固定資産税がかかります。
都市計画税は原則として市街化区域が対象で、市街化調整区域では通常かかりません。ただし、条例で課税される区域もあるため、納税通知書で確認しましょう。
売れない土地を貸すなどして活用していなければ、収入がないまま税金や管理費を支払い続けることになります。
草刈りや見回りを人に頼んでいるなら、その費用も毎年かかります。
売却までの期間が延びるほど負担は積み上がります。
早めに手放したい場合は、市街化調整区域を扱える買取業者にも条件を聞いてみましょう。
出典:東京都主税局「固定資産税・都市計画税」/交野市「都市計画税の課税区域の拡大」
特定空家に指定され勧告を受けると税が最大6倍になる
土地に空き家がある場合は、管理状態にも注意が必要です。
特定空家とは、倒壊の恐れや衛生・景観上の問題があるとして、行政に指定された放置状態の空き家のことです。
住宅の敷地には、固定資産税の課税標準を軽減する特例があります。
1戸あたり200㎡までの部分は6分の1、それを超える一定の部分は3分の1になります。
ところが、特定空家や管理不全空家として市区町村から勧告を受けると、住宅用地特例の対象から外れます。空き家になっただけで、すぐに軽減がなくなるわけではありません。
また、6分の1の特例が外れても、税額がそのまま6倍になるとは限りません。実際の税額には負担調整措置などが関わります。
たとえば評価額1,500万円の土地全体に6分の1の特例が適用され、税率が1.4%なら、単純計算では年3万5,000円です。軽減が外れた後にいくらになるかは、市区町村の税務窓口で確認してください。
売れないからと管理をやめてしまうと、手放すまでの負担がさらに増えるおそれがあります。

老朽化や草木の繁茂で近隣トラブルや賠償のリスクがある
人が住まなくなった家は、不具合に気づくのが遅れがちです。
屋根や外壁が崩れれば、通行人や隣家に被害を与える恐れがあります。
庭木や雑草が伸びて隣地に越境すれば、近隣トラブルの原因にもなります。
建物の設置や保存に欠陥があり、落下物などで他人に被害を与えた場合は、民法の工作物責任により損害賠償を求められる可能性があります。
占有者が必要な注意を尽くした場合でも、所有者が責任を負うことがあります。「見回りをしていたから責任はない」とは言い切れません。
被害が人身に及べば賠償額が高額になることもあり、金銭的な負担に加えて、「何かあったらどうしよう」という不安を抱え続けること自体が、大きな精神的な負担になります。
相続放棄しても管理義務はすぐには外れない
「相続放棄すれば、面倒な土地を手放せるのでは」と考える方もいます。
ただし、売れない土地だけを選んで相続放棄することはできません。
相続放棄をすると、その土地だけでなく、預貯金など他のプラスの財産もすべて放棄することになります。
さらに、放棄時にその不動産を現に占有していた人には、相続人や相続財産清算人に引き渡すまで保存義務が残ります。次の管理者が決まるだけでは終わりません。
つまり、相続放棄をしても「その場で管理から完全に解放される」とは限りません。
相続放棄の申述は、原則として自分に相続があったことを知った時から3か月以内です。
財産を売ると放棄できなくなることもあるため、迷っている場合は売却の実行前に弁護士などへ相談しましょう。
出典:法務省「民法等の一部を改正する法律等について」/裁判所「相続の放棄の申述」
市街化調整区域の不動産を手放したいときの6つの方法
ここからは、実際に手放すための方法を6つ紹介します。
市街化調整区域の不動産を手放す方法を大きく分けると以下の6つです。
- 隣地の所有者に売る
- 仲介で売る
- 更地にして売る
- 専門の買取業者に売る
- 農地として売る
- 相続土地国庫帰属制度を使う
なお、複数の不動産会社に査定を出して価格を比べる方法がよく紹介されますが、市街化調整区域のように扱える会社が限られる物件では、価格を比べること自体が難しくなります。
売れない物件ほど、その区域や農地の取引に対応した経験があるかが重要になります。
それぞれの特徴と、どんな人に向くのかを見ていきましょう。
- 仲介:想定売却価格から、手数料・必要な測量や解体・登記などの費用を引く。
- 買取:提示額から、売主が別に支払う費用を引く。測量・撤去の扱いは書面で確かめる。
- 売れないまま待つ期間の固定資産税・管理費も見込んで比較する。
隣地の所有者に売るか譲る
もっとも現実的な買い手候補が、隣の土地の所有者です。
隣地の所有者なら、自分の敷地と一体で使えます。
単独では売れない土地でも、敷地を広げられることに価値を感じてもらえる場合があります。農地を隣で耕作している人や、敷地を広げたい人がいれば、話がまとまることがあります。
価格は高くなりにくいものの、買い手を新たに探す手間がかからないのが利点です。
ただし、無償で譲っても登記費用などは生じます。農地なら譲渡にも許可が必要なので、価格とあわせて手続き・費用の分担を決めましょう。
そのまま仲介で売りに出す
不動産仲介会社に依頼し、買い手を探してもらう方法です。
仲介は、自分で住みたい買い手や、その土地を使いたい買い手が見つかれば、比較的高く売れる可能性があります。
一方で、買い手が限られる物件は、仲介では長期間売れないこともあります。半年から1年、あるいはそれ以上たっても買い手がつかないケースもあります。
買い手が建て替えられ、周辺にも住宅需要があるなら、まず仲介で売り出す方法が候補になります。

更地にして仲介で売る
古い建物が使えない状態であれば、解体して更地にしてから売る方法もあります。
買い手が新築できる土地なら、古家の解体が済んでいることを利点に感じてもらえる場合があります。ただし、更地にしても区域の制限はなくなりません。
ただし、注意したい点が2つあります。
1つ目は、建物を解体すると再建築できなくなるおそれがあることです。
売れないからと先に壊さず、買い手が新築できる条件を役所で確認しましょう。
2つ目は、解体費用です。
数十万円から百数十万円が目安となるケースもありますが、建物の規模・構造や搬出条件によっては、それ以上かかります。
解体後も買い手がつかなければ、費用の持ち出しだけが残ります。迷う場合は、壊す前に、そのまま買い取ってもらえる条件も聞いてみましょう。
建物を残して売る案と比べてから、解体するかを決めることが大切です。
市街化調整区域に強い買取業者に売る
不動産買取業者が、自社で直接その不動産を買い取る方法です。
仲介と違い、買い手を探す必要がないため、条件が合えば短期間で手放せます。
ここで正直にお伝えしておきたいことがあります。
再販売の見通しが立たない土地や農地は、一般の買取業者から査定を断られることがあります。
だからこそ、買い取った後の活用や再販売に詳しく、こうした一般的に取り扱いが難しいとされる物件の取引実績がある会社を探すことが大切です。
仲介で売れない物件でも相談の余地はあります。買取の可否と、売主が負担する費用をセットで確認しましょう。

農地は農家や農業法人に売り農地転用も検討する
農地には、農地のまま売る方法と、宅地などへの転用を伴って売る方法があります。
先に造成せず、予定する使い方が認められるかを確認します。
農地のまま売る場合は、買い手が耕作などの要件を満たし、原則として農業委員会の許可を受ける必要があります。
農地以外に使うための売買は、農地法5条の許可が原則必要です。農業委員会に相談し、都道府県知事または指定市町村の長の許可に向けて手続きを進めます。
ただし、農地転用の許可だけで家を建てられるわけではありません。
都市計画法の許可も別に確認する必要があります。農用地区域内の土地なら、その区域からの除外が必要になる場合もあり、転用できるとは限りません。
手続きが複雑なため、農地を扱える不動産会社や行政書士などの専門家に相談しながら進めるのが安全です。
相続土地国庫帰属制度や引き取りで手放す
売れない土地が相続で取得したものなら、相続土地国庫帰属制度も候補になります。
相続土地国庫帰属制度とは、相続した不要な土地を一定の負担金を納めて国に引き取ってもらえる制度のことです。
費用は、1筆あたり1万4,000円の審査手数料と、承認後の負担金です。
負担金は20万円が基本ですが、土地の種類や所在区域、面積によっては増えます。建物がある土地や境界が明らかでない土地などは、申請できません。
要件に合うかを先に確認しておきましょう。
また、有料で不要な土地を引き取る民間サービスもあります。
その場合は、料金だけでなく、誰に所有権が移るのか、契約後に追加負担が残らないかも確認しましょう。いずれも、お金を払って手放す方法です。土地を持ち続ける費用と比べて判断することが大切です。
国庫帰属は審査だけでも標準で8か月程度かかります。早く手放したい場合は、売却の相談とあわせて、法務局で利用条件や見通しを聞いておきましょう。
以上6つの方法を、費用と期間、向いている人の観点で整理すると次のとおりです。
| 手放す方法 | 主な費用・負担 | 期間の目安 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 隣地の所有者に売る | 登記・必要な測量など。分担は合意で決める | 相手次第 | 隣に買いたい人がいる場合 |
| 仲介でそのまま売る | 仲介手数料、必要な測量・登記など | 数か月~長期 | 買い手が建て替えられ、周辺に需要もある物件 |
| 更地にして仲介で売る | 解体費+仲介手数料など | 数か月~長期 | 解体後の建築が認められ、土地に需要がある場合 |
| 専門の買取業者に売る | 直接買取なら仲介手数料なし。測量・撤去・登記等は契約で確認 | 条件が整えば最短数日~数週間。許可や登記が必要なら長期化 | 売れない・他社に断られた物件 |
| 農地として売る・転用する | 許可申請の費用 | 数か月~ | 耕作する買い手がいる、または転用の見通しがある場合 |
| 相続土地国庫帰属制度 | 審査手数料1筆1万4,000円+負担金20万円など | 審査は標準8か月程度 | 相続等で取得し、建物がないなどの要件を満たす土地 |
【状況別】市街化調整区域の現実的な手放し方
「結局、自分の場合はどうすればいいのか」がいちばん知りたいところだと思います。
ここでは、よくある4つの状況ごとに、現実的な手放し方を整理します。
売却が進まない原因によって、相談する相手や先に調べることは変わります。
自分の状況に近いものを参考にしてください。
相続した実家が市街化調整区域で誰も住まない
相続した実家が市街化調整区域にあり、誰も住む予定がないケースです。
まずは、開発許可や建築時の資料をもとに、買い手がその家を使い続けられるか、建て替えられるかを確認しましょう。
建て替えの余地があれば、仲介で買い手を探せる可能性があります。
建物の傷みが原因で売れない場合は、解体せずそのまま買い取れる会社に相談する方法があります。
壊してからでは戻せないので、建物がある状態で査定を依頼してください。

相続した農地や田んぼを使う予定がない
相続した農地や田んぼを、自分では耕作しないケースです。
農地は売買に許可が必要なため、まずは隣で農業を営む人や、地域の農業法人に買い手がいないかを当たるのが基本です。
近隣に打診しても買い手が見つからない場合は、農業委員会に相談し、地域で耕作する人につなげてもらえるかを確認しましょう。
転用を検討するなら、農地の取引に詳しい不動産会社にも相談できます。
ただし、専門業者が農地のまま直接買う場合も、取得の要件を満たす必要があります。
仲介に出したが1年以上買い手がつかない
仲介に出しているのに、1年以上売れないケースです。
まず仲介会社に、問い合わせや内覧の件数、検討をやめた理由を聞きましょう。
価格が原因なのか、建築条件や融資が壁になっているのかで、見直す点が変わります。
価格の見直しや条件の説明をしても売れないなら、待ち続ける以外の方法も検討しましょう。
買い手を探す仲介から、直接買い取ってもらう買取に切り替えることで、手放せる可能性があります。
売れない期間が長いほど、固定資産税などの負担は積み上がっていきます。
業者に査定を断られた・0円と言われた
不動産会社に持ち込んだところ、査定を断られた、あるいは「価値がつかない」と言われたケースです。
その会社に扱う経験がないこともあれば、費用が価格を上回ると判断されていることもあります。
査定を断られただけで、物件に一切の価値がないとは限りません。
まずは「取り扱いが難しい理由」を聞いてみてください。
買い取った後に活用・再販売できる専門の買取業者であれば、他社が断った物件でも値をつけられることがあります。
断られた理由や調べた条件を次の相談先に伝えると、対応できるかを判断してもらいやすくなります。
市街化調整区域を手放すときの費用と税金の目安
手放すと決めたら、次に気になるのが「いくらかかって、いくら残るのか」です。
仲介手数料や、必要に応じた測量・解体・登記などの費用がかかります。売却で利益が出れば、税金も考えておく必要があります。
一方で、買取なら測量や残置物の費用を業者が負担してくれる場合もあります。
相続した土地には税金の特例も用意されています。代表的な費用と税金を整理します。
売却時の主な費用は仲介手数料と測量費と解体費
仲介で成約すると、仲介手数料がかかります。
売買価格800万円以下の物件では、通常の上限と異なる特例により、事前の説明・合意のうえで税込33万円までの報酬となる場合があります。
また、土地を売る際は隣地との境界を確定する測量が求められることが多く、測量費として数十万円かかることがあります。
古い建物を解体する場合は、解体費も別途必要です。
これらの費用は、売れる価格に対して無視できない金額になることがあります。
売れないからと価格を下げる前に、諸費用を引いていくら残るかを計算しましょう。
価格だけでは手放した後の負担を判断できません。
買取なら測量や残置物の費用を負担してもらえる場合がある
こうした費用の負担を抑えたい場合、買取という選択肢があります。
買取業者に売る場合、境界の測量費用や、家の中に残された家財(残置物)の撤去費用を、業者側が負担してくれるケースがあります。
買取価格には、業者が負担する費用や再販売のリスクが織り込まれます。「自分で先に払わなくてよい」ことと「費用が一切かからない」ことは別です。
仲介で売れない物件や、費用を持ち出したくない場合には、費用負担まで含めて比較すると、買取が現実的なこともあります。
仲介と買取のそれぞれで、売却代金から自分が払う費用を差し引きます。
売れない間の税金や管理費も含めると、待つかどうかを判断しやすくなります。
売って利益が出たら譲渡所得税がかかる
不動産を売って利益(譲渡所得)が出た場合は、譲渡所得税がかかります。
譲渡所得は、売却価格から、購入時の費用などの取得費と、売るためにかかった譲渡費用を差し引いて計算します。
建物の取得費は減価償却相当額を差し引くため、購入額をそのまま使うわけではありません。
売れない物件を安く売っても、税金がかからないとは限りません。相続した土地は、原則として亡くなった方の取得費を引き継ぎます。
取得費がわからない場合などには、売却価格の5%を取得費とする計算が認められます。
実際の購入額より小さくなると課税される利益が増えるため、昔の売買契約書や領収書を探しておきましょう。
出典:
国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
国税庁「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
国税庁「取得費が分からないとき」
相続した土地は取得費加算や3,000万円控除を確認する
相続した不動産を売る場合は、税負担を軽くできる特例があります。
代表的なのが、相続した空き家の売却で譲渡所得から最高3,000万円を控除する特例です。
2024年以降の売却で、対象の家屋・敷地等を取得した相続人が3人以上なら、上限は1人2,000万円になります。
1981年5月31日以前に建てられた家などが対象です。相続開始から3年を経過する日の属する年の末まで、かつ2027年12月31日までに売る必要があり、耐震性や取り壊し、売却代金などにも要件があります。
相続税が課された方には、一定期間内の売却で、その一部を取得費に加える特例もあります。
期限は、相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。
空き家の3,000万円控除と取得費加算は、同じ物件について併用できません。
特例の適用には確定申告が必要です。売れないまま期限を過ぎないよう、売却の相談と並行して税務署や税理士に確認しましょう。
出典:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」/国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
代表的な費用と税金を、次の表にまとめます。
| 費用・税金の項目 | 目安金額 | 負担・確認点 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 法定上限内。800万円以下は事前合意で税込33万円までの特例あり | 売主 |
| 測量費 | 数十万円程度 | 契約で確認。買取価格に反映される場合もある |
| 解体費 | 数十万円~百数十万円 | 解体する場合に見積もり。規模・構造等で目安を超えることもある |
| 残置物撤去費 | 数万円~数十万円 | 契約で確認。物量・搬出条件で増減 |
| 譲渡所得税 | 取得費・譲渡費用・特例を踏まえた譲渡所得に応じる | 売主 |
| 売主側の登記費用 | 数万円程度のケースもあるが、登記の種類・評価額等で変わる | 相続登記・抵当権抹消など必要な手続きを確認 |
よくある質問
- 市街化調整区域の自宅は売却できますか?
-
売れる可能性はあります。
まずは買い手が住宅として使い続けられるか、建て替えられるかを役所で確認しましょう。
住宅需要があれば仲介が候補になります。
仲介では売れない場合は、市街化調整区域の取引実績がある買取業者にも相談できます。
- 市街化調整区域かどうかはどう調べますか?
-
市区町村の都市計画情報(都市計画図)で確認できます。
多くの自治体がインターネットで公開しているほか、役所の都市計画の担当窓口でも確認できます。
あわせて、登記簿で土地の地目(宅地か農地かなど)を確認しておくと、売りやすさの判断に役立ちます。
- 市街化調整区域の畑や田んぼは売れますか?
-
農地のまま売るなら、原則として買い手が取得の要件を満たし、農業委員会の許可を受ける必要があります。
近隣の農家などに打診しても売れない場合は、農業委員会や農地の取引に詳しい会社に相談しましょう。
転用を伴う売買には別の許可が必要です。
- 買取だと相場よりかなり安くなりますか?
-
仲介より安くなる傾向がありますが、費用の負担も含めて比べることが大切です。
買取価格に測量や撤去の費用が織り込まれることもあります。
売れない間の管理費と、売主が別に払う費用まで確認して判断しましょう。
- 売れないなら相続放棄すればよいですか?
-
売れない土地だけを選んで放棄することはできず、預貯金なども相続できなくなります。
放棄時に現に占有していた不動産は、相続人や相続財産清算人に引き渡すまで保存義務が残ります。
申述は原則3か月以内なので、売却の実行前に弁護士などへ相談してください。
まとめ|市街化調整区域が売れないときは利用条件と相談先を見直そう
市街化調整区域の土地や家が売れないのは、建築や融資の制限によって、買い手が限られやすいためです。
インフラの未整備や利便性の低さ、農地の売買制限も、売りにくさに拍車をかけます。
しかし、売れにくいことと、手放せないことは違います。
買い手が建て替えられ、周辺に需要があれば仲介を検討できます。隣地と一緒に使える土地なら隣の所有者に、農地なら耕作する人に打診する方法もあります。
仲介で売れない物件は、対応実績のある買取業者への相談も候補です。
大切なのは、売れないまま放置して固定資産税や管理の負担を抱え続けるのではなく、自分の物件がどのタイプかを見極め、扱える相手に早めに相談することです。
一般の不動産会社に断られても、相談先を変えることで売却の条件が見えてくる場合があります。
所在地、地目、建物の状態がわかる資料を用意して、「今の状態で売れるか」「自分が負担する費用はいくらか」を聞いてみてください。
売れない理由を確かめることが、無理なく手放すための第一歩になります。


