「家が傾いている気がする」「インスペクションで傾きを指摘された」
そう気づいたとき、多くの方が「こんな家、売れるのだろうか」と不安になります。
結論からお伝えすると、傾いた家でも売却は可能です。
ただし、買い手が見込めるか、費用を引いていくら残るかは、傾きの原因や立地によって変わります。
傾きが進行している場合は、建物や暮らしの負担が増えるおそれがあります。早めに「どの程度傾いているか」「どの売却方法が合うか」を確認しましょう。
- 傾きが軽度で、近隣に住宅需要がある
そのまま仲介で売却する方法 - 修繕費より価格の上昇を見込める
直してから売却する方法 - 建物の価値が低く、土地として需要がある
再建築の可否を確かめて更地で売却する方法 - 工事費を先に用意しにくい・早く手放したい
専門の買取会社への売却
傾いた家とは?売却で問題になる傾きの基準
傾いた家とは、床や柱などに傾斜が見られる家のことです。
売却前には、傾きの数値だけでなく、測った場所や原因も確認します。
参考になるのが、国の住宅紛争処理の技術的基準です。
6/1000(3mで約18mm)以上は、構造耐力上主要な部分に瑕疵がある可能性が高い区分とされています。
簡易チェックは水平器やスマホアプリででき、正確な数値はホームインスペクション(建物状況調査)で測定します。
6/1000以上は構造耐力上主要な部分に瑕疵がある可能性が高い目安
国の「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」では、所定の方法で測った床や壁・柱の傾きを3段階で示しています。
構造耐力上主要な部分に瑕疵がある可能性は、3/1000未満で低い、3/1000以上6/1000未満で一定程度、6/1000以上で高いとされています。
ここでいう瑕疵は、建物に求められる品質を欠くことです。
床の6/1000は、6mの距離で36mm(約3.6cm)の高低差に相当します。
この数値だけで、原因や修繕費、売却価格までは決まりません。傾きが確認された家では、買主が修繕費を見込んで価格を交渉したり、住宅ローンの担保評価に影響したりすることがあります。
売却では、数値と調査結果を合わせて買主に説明することが大切です。
3/1000~6/1000は傾きや建具の不具合を確認したい水準
3/1000未満でも、不具合がないと断定はできません。ドアや窓が閉まりにくい、床に置いた物が転がるなど、気づいた変化と測定値を合わせて確認してください。
| 傾きの勾配 | 構造耐力上主要な部分に瑕疵がある可能性 |
|---|---|
| 3/1000未満 | 低い |
| 3/1000以上6/1000未満 | 一定程度ある |
| 6/1000以上 | 高い |
上表は国の技術的基準の区分です。「この数値なら安全」「この数値から病気になる」という判定には使えません。
健康面では、日本建築学会が紹介する被災地の調査に、10/1000(約0.6度)程度以上の床の傾きと、めまい・頭痛に関する報告があります。
影響には個人差があり、この数値未満なら症状が出ないという意味ではありません。
家の傾きは水平器やスマホアプリで簡易チェックできる
傾いた家かもしれないと気になったら、まずは簡易チェックから始めましょう。
ホームセンターで数百円から買える水平器を床に置く方法や、スマホの水平器アプリを使う方法があります。
ビー玉やゴルフボールを床に置き、転がるかどうかを見る昔ながらの方法も、傾きの有無を大まかにつかむには有効です。
ただし、これらはあくまで目安です。家全体がどの方向に、どれだけ傾いているかまでは正確にわかりません。
転がる場所と転がらない場所があるようなときは、次のホームインスペクションで正式に測ることをおすすめします。
正確な傾きはホームインスペクションで測定する
傾いた家を調べる方法の一つであるホームインスペクションは、専門家が目視や計測で住宅の状態を調べるものです。
床や壁などの傾きは、測定位置・測定値とともに報告書で確認しましょう。原因の特定には、別途、地盤調査などの詳細調査が必要になる場合があります。
費用は傾きの調査で数万円~十数万円程度が目安で、調査範囲によって変わります。
あわせて地盤調査を行う場合はさらに費用がかかります。
売却前に正確な数値を把握しておくと、買主への説明もスムーズになり、あとで「聞いていない」というトラブルを防げます。傾きを数値で示せることは、売主にとってむしろ安心材料になります。
なお、費用をかけて調べる前に売却の見通しだけ知りたい場合は、傾いた家の取り扱いに慣れた買取会社へ現状のまま相談し、査定を受ける方法もあります。
家が傾く原因?売却前に特定すべき理由
家が傾く主な原因は、地盤沈下・不同沈下、地震などの災害、シロアリ被害や老朽化、施工不良の4つです。
地盤沈下・不同沈下など。建物の水平を戻す工事だけでなく、地盤への対応が必要かを確認します。
シロアリ・腐食・施工不良など。傷んだ部材の範囲や補修方法によって費用が変わります。
地震などで地盤と建物の両方に影響が出る場合もあります。
売却方法を決める前に、分かっている原因と追加調査が必要な点を整理しておきましょう。
地盤沈下や不同沈下は土地側が原因で修繕費が高くなりやすい
傾いた家の原因となる不同沈下とは、地盤が場所によって不均一に沈み、建物が部分的に傾く現象のことです。
もともと軟弱な地盤や、盛土・埋立地などで起こりやすく、土地そのものに原因があります。
土地側が原因の場合、建物を持ち上げるだけでは根本解決にならず、地盤の補強までが必要になります。
そのため修繕費は高額になりやすく、数百万円規模になることも少なくありません。
しかも、いったん直しても、地盤そのものが弱ければ再び沈下するリスクが残ります。買主もこの点を警戒するため、地盤沈下が原因の家は値引き幅が大きくなりがちです。
直すより手放したほうが負担が軽いケースが出てくるのは、この地盤沈下が原因のときが多いといえます。
地震など自然災害の傾きは保険の対象になる場合がある
地震や台風、豪雨などの自然災害で地盤や建物が損傷し、傾きにつながることもあります。
この場合、原因と契約内容によっては、火災保険や地震保険の保険金を修繕に充てられる場合があります。
ただし、経年劣化による傾きは補償の対象外になるのが一般的です。
「災害が原因かどうか」で扱いが変わるため、傾きに気づいたら、いつ・何をきっかけに傾いたのかを記録しておくと、保険の相談時に役立ちます。
保険で修繕できれば、直してから売却するという選択肢も現実味を帯びます。
シロアリ被害や老朽化は建物側の劣化が原因になる
築年数が経った傾いた家では、柱や土台などの木部がシロアリ被害や腐食で傷み、建物側が原因で傾くことがあります。地盤には問題がなく、建物の構造材が劣化しているケースです。
建物側の傾きは、地盤補強を伴わない分、地盤沈下よりは修繕費を抑えられる場合があります。
とはいえ、被害の範囲が広がっていれば大掛かりな工事になることもあります。
築古の家で傾きが出た場合は、シロアリや腐食がどこまで進んでいるかを含めて調べておくと、売却方法の判断がしやすくなります。
新築時からの施工不良は売主に説明責任が生じやすい
比較的新しい傾いた家では、建築時の施工不良が疑われます。地盤調査や基礎工事が不十分だったケースなどです。
施工不良が原因のときは、施工会社への補修請求や、住宅品質確保促進法(品確法)に基づく保証を検討できる場合があります。
ただし品確法の保証は、新築の引き渡しから10年以内の構造耐力上主要な部分などに限られるため、築年数が経った家では対象外となることが多い点に注意が必要です。
一方で、売却時には原因や経緯を買主へ正確に伝える必要があり、説明責任が重くなりやすい点にも注意が必要です。
傾きの原因特定が売却方法と価格を大きく左右する
ここまで見てきたとおり、同じ「傾いた家」でも、原因が地盤側か建物側かで、必要な工事も費用も大きく変わります。
地盤沈下が原因なら修繕は高額になりやすく、無理に直すより現状のまま売却するほうが合理的なこともあります。
また、原因がわかっていれば、買主への説明も具体的にでき、契約後のトラブルを防げます。
逆に原因が曖昧なまま売却すると、「なぜ傾いたのかわからない家」として敬遠されたり、あとで責任を問われたりしかねません。
売却前の原因特定は、価格と安全な取引の両方を支える土台になります。
傾いた家を売却する4つの方法
傾いた家の売却方法は、現状のままの仲介、修繕後の仲介、更地での売却、専門会社の買取の4つです。
売却価格だけでなく、先に払う費用と手放せる時期を比べましょう。
前提として押さえておきたいのが、買主の動きです。
傾いた家を進んで買う一般のマイホーム購入者は多くありません。そのため仲介では買い手が限られ、売却が長期化しやすい傾向があります。
| 方法・詳細 | 価格と費用の考え方 | 期間の目安 | 合いやすい状況 |
|---|---|---|---|
| そのまま仲介 | 工事費の先払いを避けられる。価格は値引きを見込む | 数か月~長期化も | 軽度の傾き・住宅需要がある |
| 修繕して仲介 | 修繕費を価格上昇で回収できるか確認 | 工事期間+販売期間 | 修繕後の需要と費用回収が見込める |
| 更地で売却 | 土地の売却価格から解体費・諸費用を差し引く | 解体期間+販売期間 | 建物価値が低く、再建築できる土地 |
| 専門会社の買取 | 仲介の成約想定より低い傾向。工事・片づけの負担は契約で確認 | 条件が整えば数日~数週間 | 重度の傾き・地盤沈下・早く手放したい |
そのまま仲介で売る方法は値引き前提だが手間が少ない
傾いた家を直さず、現状のまま不動産仲介会社を通じて買主を探す方法です。
修繕費や解体費がかからないため、売主の初期負担は少なくて済みます。
一方で、買主は傾きを理解したうえで購入するため、値引きを前提とした価格になります。
また、傾きの程度や立地の需要によっては、買い手がなかなか見つからず売却が長期化することもあります。
仲介で家を探す人の多くは、これから長く暮らすマイホームを求めています。
そのため、傾きという不安要素がある家は候補から外されやすく、需要の乏しいエリアでは何か月も、場合によっては年単位で買い手がつかないこともあります。その間も固定資産税や管理の手間はかかり続けます。
多少安くてもいいので手間をかけずにという方に向いた方法ですが、売れるまでの期間は読みにくい点を理解しておきましょう。
なお、この方法でも傾きの告知は必須で、隠して売却することはできません(詳しくは後半の注意点で解説します)。
傾きを直してから仲介で売る方法は費用回収が課題になる
傾いた家を沈下修正などの工事で直し、通常の中古住宅として売り出す方法です。買い手の候補が広がり、値引きされにくくなるのがメリットです。
課題は費用の回収です。
傾きの修繕には後述のとおり数百万円かかることもあり、その分だけ売却価格が上がるとは限りません。
本記事を監修するアルバリンクの買取実務でも、「修繕費が価格の上昇分を超えてしまい、直すほど手取りが減る」ケースは珍しくないといいます。
解体して更地で売る方法は再建築の可否確認が前提になる
傾いた家を解体し、土地として売り出す方法です。
古い建物に価値がつかない場合や、買主が新築を建てたいエリアでは、更地のほうが売りやすくなることがあります。
- 費用:解体費の総額と、土地としての売却見込みを比べる
- 再建築:道路への接し方など、建て替えの条件を役所で確認する
接道義務を満たさず、例外の認定・許可も受けられない土地では、原則として建て替えができません。
解体してから判明すると、建物を使う選択肢も失ってしまいます。
解体を検討する前に、再建築が可能かを役所などで確認しておく必要があります。

訳あり物件に強い買取なら現状のまま手放せる
不動産買取会社が直接、傾いた家を買い取る方法です。特に傾き・地盤リスクのある家は、一般の仲介では敬遠されやすいため、訳あり物件に強い買取会社が現実的な受け皿になります。
買取の価格は仲介での成約想定より低くなるのが一般的ですが、そのぶんメリットも明確です。
現状のまま、解体や残置物の片付けをせずに売却できる場合があります。条件が整えば、早ければ数日~数週間で現金化できることもあります。
契約不適合責任の免責を合意できる場合もあります。ただし、知っている不具合の告知は必要です。
なぜ買取会社は傾いた家を買えるのでしょうか。
一般の買主が「自分が住む家」を探すのに対し、買取会社は傾きの修繕やリフォーム、解体後の土地活用まで含めて事業として出口を設計できるためです。
だからこそ、一般の買主が敬遠する家にも値を付けられます。
「修繕費をかけられない」「仲介で半年以上売れない」「相続した実家が遠方で手が回らない」といった、大多数向けの売り方では取りこぼされる状況にこそ向いた方法です。

【状況別】傾いた家の売却方法の選び方
先ほど紹介した傾いた家を売却する4つの方法のうち、どれが自分に合うかは、「傾きの程度」「原因が地盤か建物か」「立地の需要と売却を急ぐか」の3つで判断できます。
おおまかには、軽度で需要のある立地なら現状のまま仲介、重度・地盤沈下・築古なら修繕せず買取、が基本の考え方です。
修繕費が価格の上昇分を超えるなら、直さずに売却するほうが合理的です。
売却方法は傾きの程度と原因と立地の需要で決まる
傾いた家の売却では、次の順で判断材料を整理すると、不動産会社への相談が進めやすくなります。
3/1000前後か、6/1000以上かといった数値だけでなく、どこを測ったか、不具合や進行があるかを整理します。
建物側の劣化か、地盤沈下など土地側の問題かを確認。原因が不明な点は推測で埋めず、追加調査の必要性を相談します。
軽度の傾きで需要のある立地は現状のまま仲介が向く
傾きが3/1000前後と軽度で、駅近や都市部など買い手の需要が見込める立地なら、傾いた家を現状のまま仲介で売却する方法が候補になります。
多少の値引きは前提になりますが、需要があれば買い手は見つかりやすく、大きな修繕費をかけずに済みます。
需要の高いエリアでは、無理に直したり解体したりせず、そのまま売り出したほうが手取りが多くなることもあります。
ただし「需要がある立地」かどうかは主観で判断せず、周辺の売り出し事例なども踏まえて見極めることが大切です。
重度の傾きや地盤沈下で築古なら修繕せず買取が現実的
傾きが6/1000以上と重度だったり、原因が地盤沈下で修繕費が高額になったりする場合は、修繕せず買取を選ぶのが現実的です。築年数が古く建物価値が低い家も同様です。
こうした家は、直すのに数百万円かかるうえ、直しても仲介で買い手がつくとは限りません。
地方や郊外で需要が乏しい場合は、値引きしても売れず、税金と管理費だけがかかり続けることもあります。
たとえば、遠方に住む方が相続した築40年の実家が地盤沈下で傾いている、というケースはよくあります。
通って管理するのも難しく、修繕に数百万円は出せない。仲介に出しても内見すら入らない——
こうした状況では、修繕や片付けをせず現状のまま買い取ってもらい、管理の負担ごと手放すほうが合理的です。
修繕費を回収できる見込みが立たないなら、無理に直さないという判断が、結果的に損を小さくします。
更地売却は解体費と再建築の可否を確認してから選ぶ
傾いた家の建物に価値がなく、土地としての需要が見込めるなら、解体して更地で売却する方法も選択肢になります。
ただし、解体費が土地の売却益を圧迫しないか、そして解体後に再建築できるかの2点を必ず先に確認してください。
再建築不可の土地を更地にしてしまうと、建物が建てられない土地として、かえって売りにくくなります。
解体してから後悔した事態を避けるためにも、役所調査で再建築の可否を確かめてから判断しましょう。
判断に迷う場合は、解体前に買取会社へ相談し、解体しないまま売れるかを聞いてみるのも一つの方法です。
傾いた家の売却相場と修繕・解体の費用
傾いた家に一律の相場はありません。傾きの程度・原因・立地の需要によって、価格の下がり方は大きく変わります。
傾きを直す修繕費は工法により200万~500万円、解体費は構造別に坪2万~10万円が目安です。火災保険や地震保険、補助金で修繕負担を減らせる場合もあり、買取なら修繕・解体をせずに手放せます。
傾いた家に一律の相場はなく需要と傾きの程度で決まる
傾いた家はいくら下がるのかを一律の割合で示すことはできません。
相場とは、取引事例の蓄積と需要があって初めて成り立つものですが、傾いた家は取引が少なく、立地による需要差も大きいためです。
たとえば同じ傾きでも、需要の高い都市部なら値引きは小幅で済むことがあります。
一方、需要の乏しい地方や郊外では、大きく値引きしても買い手がつかないこともあります。
軽度の傾きなら下落は数十万円規模にとどまることもありますが、重度の傾きや地盤沈下では数百万円規模で下がることもあり、「エリアの需要次第」という前提を押さえておくことが重要です。
傾きの程度別に見た売却価格の下落の目安
価格の下がり方は、大きく次のように整理できます。軽度(3/1000前後)で建物側が原因なら、下落は比較的小さく収まる傾向があります。
重度(6/1000以上)や地盤沈下が原因の場合は、買主が修繕費を織り込むため、下落幅は大きくなりがちです。
ただし、これらはあくまで傾向です。価格は、買主が見込む修繕費に加え、立地の需要や売却条件によって変わります。
だからこそ、原因と修繕費の見通しを売主側で把握しておくと、値引き交渉の場面で根拠を持って対応できます。
下の表は傾きがなければ1,500万円で売れる木造戸建てに、地盤沈下による6/1000の傾きが出たと仮定したモデルケースです。
| 売却方法 | 仮の売却価格 | ここで差し引く工事費 | 工事費を引いた金額 |
|---|---|---|---|
| そのまま仲介 | 1,000万円前後 | 売主の修繕工事なし | 1,000万円前後 |
| 修繕して仲介 | 1,400万円 | 薬液注入の例:約350万円 | 約1,050万円 |
| 現状のまま買取 | 1,000万円未満になる場合も | 売主が修繕しない契約を想定 | 提示価格と契約条件で確認 |
この仮定なら、修繕後の差額は50万円です。
工事の追加費用や売却までの期間で結果は変わるため、直してからの価格が高いことと、手取りが多いことを分けて判断しましょう。
条件が整えば早ければ数週間で進む買取も、引き渡しまでの条件を確認します。
傾きを直す修繕費用は工法により200万~500万円が目安
傾いた家を直す沈下修正工事には、いくつかの工法があります。費用は工法や傾きの程度で幅がありますが、一般的な相場は次のとおりです。
| 工法 | 内容 | 費用の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| ジャッキアップ(土台揚げ)工法 | 土台を持ち上げて水平に戻す | 約200万~400万円 | 建物側が原因の軽度な傾き |
| 薬液注入工法 | 地盤に薬液を注入し沈下を修正する | 約250万~400万円 | 地盤沈下が原因のケース |
| 鋼管圧入・アンダーピニング工法 | 地中の支持層まで鋼管で支える | 約400万~500万円 | 軟弱地盤・重度の沈下 |
工事費用が売却価格の上昇分を上回りそうなときは、直さずに売却する判断も必要です。
なお、修繕費や解体費を売主が負担したくない場合、現状のままの買取で合意すれば、売主が修繕・解体費を先払いせずに手放せます。
解体費用は構造別に坪2万~10万円が目安になる
傾いた家を解体して更地で売却する場合は、解体費を見込む必要があります。
費用は建物の構造や立地で変わり、木造より鉄骨造やRC造(鉄筋コンクリート造)のほうが高くなります。
おおよその目安は次のとおりです。
| 建物の構造 | 坪単価の目安 | 延べ床面積30坪の本体費用目安 |
|---|---|---|
| 木造 | 2万~4万円 | 約60万~120万円 |
| 鉄骨造 | 4万~6万円 | 約120万~180万円 |
| RC造(鉄筋コンクリート) | 5万~10万円 | 約150万~300万円 |
付帯工事や処分費などが別途必要になるため、見積もりに含まれる範囲を確認してください。
このほか、重機が入りにくい立地では費用が割高になり、アスベストを含む建材があればさらに追加費用がかかります。
解体費が土地の売却益を上回ると、更地にしても手取りが残りません。
売却価格1,000万円-解体費100万円=900万円
売却価格600万円-解体費100万円=500万円
いずれも、仲介手数料・登記費用・税金などを引く前の金額です。
現状のまま売却する場合とも比べて判断します。
解体は更地にすれば売れると決めつけず、土地の需要と解体費を並べて判断することが大切です。
- 修繕なら、工法・工事範囲と費用を確認したか
- 解体なら、本体以外の費用と再建築の可否を確認したか
- 売却価格から、売主が別に払う費用を差し引いたか
火災保険や地震保険・補助金で修繕負担を減らせる場合がある
傾きの原因が地震や台風などの自然災害であれば、原因と契約内容に応じた保険金を修繕に充てられる場合があります。
また、自治体によっては、地盤改良や耐震改修に対する補助金制度を設けている場合があります。
これらを活用できれば、自己負担を抑えて傾きを直し、通常の中古住宅として売り出す道も見えてきます。
まずは加入中の保険の補償内容と、お住まいの自治体の補助制度を確認してみましょう。
ただし、経年劣化が原因の傾きは保険の対象外になるのが一般的で、補助金にも条件や予算枠があります。
「必ず使える」とは限らない点は理解しておく必要があります。
傾いた家を売却するときの注意点
傾きを知りながら隠して売却すると、契約不適合責任を問われ、損害賠償や契約解除につながることがあります。
告知は口頭だけでなく書面で正確に伝えることが重要です。
買取で責任の範囲を整理したい場合は、現状渡しの条件と免責特約を分けて確認しましょう。あわせて、住み続けるリスクや、悪質な業者にも注意しておきましょう。
傾きを隠して売ると契約不適合責任を問われる
契約不適合責任とは、売却した傾いた家などが契約内容と異なる場合に売主が負う責任のことです。
2020年の民法改正で、以前の「瑕疵担保責任」から変わりました(出典:e-Gov法令検索「民法」)。
傾きを知っていながら買主に伝えずに売却すると、引き渡し後に発覚した際、買主から修繕費の請求(損害賠償)や契約の解除を求められることがあります。
契約不適合責任では、買主は追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除を求められます。
つまり、傾きを隠して1,000万円で売っても、後から数百万円の修繕費を請求されたり契約自体をなかったことにされたりする可能性があるということです。
「言わなければわからないだろう」という対応は、売った代金以上の負担を招きかねません。
傾きは隠さず伝える、が売却の大原則です。
告知義務は口頭だけでなく書面で正確に伝える
告知義務とは、傾いた家の欠陥や不具合など買主の判断に影響する事実を、売主が事前に伝える義務のことです。
傾きは典型的な告知対象で、過去の沈下や修繕の履歴も含めて伝える必要があります。
注意したいのは、「伝えたつもり」がトラブルになるケースです。口頭で軽く触れただけでは、後から「聞いていない」と食い違いが生じがちです。
- 傾きを知った時期と、気づいた不具合
- 測定場所・数値・インスペクションの報告書
- 分かっている原因と、未調査・不明な点
- 過去の沈下や修繕の時期・内容・資料
告知書と契約内容を照らし合わせ、買主への説明を記録に残すことが、売却後の食い違いを防ぎます。
現状渡しと契約不適合責任の免責は分けて確認する
傾いた家を売却した後の負担が気になる場合は、「現状渡し」と「免責」を分けて確認しましょう。
家を今の状態のまま引き渡すという条件です。
現状渡しだけで、契約不適合責任がなくなるわけではありません。
専門の買取会社への売却では、契約不適合責任を免責とする特約を合意できる場合があります。
何を免責にするか、例外は何かを契約書で確認します。
個人への仲介でも、免責の可否は契約内容や当事者によって変わります。
売却後の責任が不安なら、専門会社に取引条件を相談し、必要に応じて法律の専門家にも確認しましょう。

免責特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れません。
分かっている傾きや修繕履歴は正確に伝えてください。
傾いた家に住み続けると建物と健康のリスクが進む
傾いた家で「まだ住めるから」と不具合を放置して暮らし続けるのは、おすすめできません。
原因によっては傾きが進行し、建具の不具合や雨漏り、構造材の劣化が進むおそれがあります。
健康面でも、傾きが10/1000程度以上の床の傾きと、めまい・頭痛などに関する被災地の調査報告があるとされています。
健康への影響には個人差があります。数値だけで判断せず、体調の変化があれば医療機関にも相談してください。
「気にしない」ことと「問題がない」ことは違います。さらに、放置には金銭面のリスクもあります。
傾きが進むほど修繕費は膨らみ、直して売却する選択肢は取りにくくなります。地盤沈下が原因なら、隣家との地盤トラブルに発展することもあります。
傾きに気づいたら、早めに原因を調べ、住み続けるか手放すかを判断することが、建物・健康・お金の3つを守ることにつながります。判断を先送りするほど選択肢が狭まる、という点は覚えておいてください。
高値査定で契約直前に減額する業者に注意する
売却を急ぐ気持ちにつけ込む業者にも注意が必要です。
相場より明らかに高い査定額を出して契約を取り付け、契約直前や引き渡し前になって傾きが想定より重いなどと難癖をつけ、金額を大幅に下げてくる業者には注意が必要です。
こうした被害を避けるには、査定額の根拠を具体的に説明できるか、傾き・地盤リスクのある家の取り扱い実績があるかを確認することが大切です。
複数社に振り回されるよりも、傾きや訳あり物件に強く正直に条件を提示してくれる信頼できる一社を見つけることが、納得のいく売却につながります。

傾いた家の売却でよくある質問
- 傾いた家は直さないと売れませんか?
-
いいえ、直さなくても売却は可能です。
傾きを直す修繕には200万円以上かかることも多く、費用が価格の上昇分を上回るケースでは、現状のまま売却するほうが手取りが多くなることもあります。
訳あり物件に強い買取会社なら、修繕せず現状のまま売却できる場合があります。買取の可否や条件は物件によって異なります。
- 家の傾きはどのくらいから「やばい」ですか?
-
3/1000(3mで約9mm)や6/1000は、国の住宅紛争処理の技術的基準で示される区分です。
6/1000以上は構造耐力上主要な部分に瑕疵がある可能性が高いとされますが、安全性や健康への影響を数値だけで断定はできません。
不具合や進行があれば、数値にかかわらず専門家に相談してください。
- 傾いた家を売却するとき告知義務はありますか?
-
あります。
傾きは買主の判断に影響する重要な事実のため、知っている傾きや過去の沈下・修繕の履歴は正確に伝える必要があります。
隠して売却すると契約不適合責任を問われ、賠償や契約解除になるおそれがあります。
- 傾いた家に住み続けても大丈夫ですか?
-
放置すると建具の不具合や雨漏りが進み、傾きが大きくなると、めまい・頭痛など体調への影響が出ることもあります。
原因によっては傾きが進行するため、「気にしない」まま住み続けるのは避け、原因の特定と早めの判断をおすすめします。
- 傾いた家の傾きを直す費用はいくらですか?
-
工法によって幅があり、薬液注入やジャッキアップなどでおおむね200万~500万円が目安です。
地盤沈下が原因の場合は土地側の補強も必要になり、費用は高くなりやすい傾向があります。
まとめ|傾いた家は原因の見極めと売り方選びで手放せる
傾いた家でも、売却は十分に可能です。大切なのは、傾きの程度と原因を見極め、自分の状況に合った売却方法を選ぶことです。
売却方法は、以下の4つです。
- そのまま仲介
- 直して仲介
- 解体して更地
- 訳あり物件に強い買取
傾きの程度・原因・立地の需要という3つの軸で考えると、選ぶべき方向が見えてきます。
軽度で需要のある立地なら現状のまま仲介、重度・地盤沈下・築古で修繕費を回収できないなら、無理に直さず買取で手放すのが現実的です。
売却では、傾きを隠さず書面で正確に伝えることが、契約不適合責任のトラブルを防ぐ鍵になります。
「修繕費をかけられない」「仲介で断られた」「売却後の責任も含めて相談したい」——
そんな場合は、傾き・地盤リスクのある家を現状のまま、免責の範囲を相談できる訳あり物件専門の買取という選択肢があります。
- 所在地・築年数・図面など、物件の基本情報
- 傾きを知った時期、測定値、調査報告書
- 修繕履歴・見積書、分かっている原因
- 希望する売却時期と、工事費を先に負担できるか
まずは自分の家の傾きと向き合い、負担を外せる道を知ることから始めてみてください


