相続した土地や、以前住んでいた家の土地を売ろうとして、不動産会社から「検査済証がない」「擁壁をやり直さないと建て替えられない」と言われ、不安になっていないでしょうか。
仲介に出したまま半年~1年売れ残り、また、工事に数百万円から1,000万円以上かかると聞いて、手が止まっている方も少なくないでしょう。
仲介に出したまま半年~1年売れ残り、固定資産税と管理の負担だけが続いている方も少なくないでしょう。
結論から言えば、擁壁があるだけで売れないわけではなく、売れにくいのは書類や現況で安全性を確認できない擁壁に限られます。
そして、工事にお金をかけず、検査済証がなくても擁壁のある土地を現況のまま手放す方法もあります。
まずはご自身の擁壁が「売れる側」「売れにくい側」のどちらなのかを見分けるところから、はじめて売却を検討する方にもわかるように解説します。
擁壁のある土地が売れない6つの理由とは?

擁壁付き土地が売れないと言われるのは、主に以下の6つの理由からです。
- 高さ2m超の擁壁は建築確認が必要になるから
- 検査済証がないと既存不適格・違法のことがあるから
- 擁壁が経年劣化すると崩壊するリスクがあるから
- がけ条例で建て替えが制限されることがあるから
- 擁壁の補修や造り直しには高額な費用がかかるから
- 崩壊時に所有者が損害賠償責任を負う
いずれも、買主や銀行が敬遠する具体的な事情につながっています。
高さ2m超の擁壁は建築確認申請が必要になるから
高さが2mを超える擁壁は、建築基準法上の「工作物」として、建築確認申請の対象になります(建築基準法88条・同法施行令138条)
この2mという基準は政令で定められており、全国共通です。
つまり、高さ2m超の擁壁は、本来「役所の確認を受けて造られ、完了検査まで通っている」のが正しい状態です。
この手続きを経ているかどうかが、次に説明する検査済証の有無につながります。
なお、高さ2m以下の擁壁は建築基準法上の確認申請の対象外です。
宅地造成の規制(宅地造成及び特定盛土等規制法。2023年5月施行の通称・盛土規制法)の区域内では、2m以下でも別途の許可が必要になることがあります。
高さ2mを境に、書類の有無が売却で問われやすくなると覚えておくとよいでしょう。
検査済証がないと既存不適格や違法建築の場合があるから
検査済証とは、建築確認どおりに工事が完了したと役所が確認したことを示す書面のことです(建築基準法7条の完了検査)。
この書面がない擁壁は、「基準を満たしているか確認できない擁壁」として扱われます。
書類がない擁壁には、大きく2つのケースがあります。
- 既存不適格の擁壁:造られた当時は適法だったが、その後の法改正で現在の基準に合わなくなった擁壁
- 違法建築の擁壁:造られた時点で基準に違反している擁壁
どちらの場合も、買主は住宅ローンを利用しにくくなります。金融機関は、法適合が確認できない不動産への融資に慎重だからです。
買主の多くは住宅ローンでマイホームを購入する個人であり、ローンが使えないと、買えるのは現金を用意できる層に限られます。
結果として、買い手の数が大きく減ってしまいます。
ここで押さえておきたいのは、既存不適格と違法建築では意味が違うという点です。
既存不適格は「昔は合法だった」ため、直ちに撤去を求められるわけではなく、そのまま所有・売却できます。ただし建て替えの際には現行基準への適合が求められます。
一方で、違法建築は当初から基準に違反しているため、是正指導の対象になることがあります。
自分の擁壁がどちらなのかは、役所の建築指導課で過去の記録を確認するとわかる場合があります。売り出す前に、まずこの点を整理しておくと、買主への説明もスムーズになります。
擁壁が経年劣化すると崩壊するリスクがあるから
古い擁壁は、経年劣化によって崩壊するリスクが指摘されることがあります。
次のような状態は、劣化のサインです。
- コンクリートのひび割れ、鉄筋のさび
- 擁壁の傾き、前面への膨らみ(はらみ出し)
- 水抜き穴の詰まり(内部に水がたまり、圧力で崩れやすくなる)
鉄筋コンクリート擁壁でも、一般には数十年で点検・補修が必要とされ、古いものは造り直しを検討する時期に入ります。
とくに、水抜き穴の詰まりは見落とされがちですが、内部に水がたまると土の重みと水圧で擁壁が押され、はらみ出しや崩壊の原因になります。
買主にとって「いつ崩れるかわからない擁壁」は大きな不安要素です。
購入後に補修が必要になれば、その費用は買主の負担になるため、査定額が下がったり、そもそも敬遠されたりします。
これが、劣化した擁壁の売却が難しくなる一因です。
がけ条例で建て替えが制限されることがあるから
がけ条例とは、一定の高さ・勾配のがけの上下に建物を建てる際の安全確保を、各自治体が条例で定めたルールのことです。
擁壁があっても、法律上は「がけ」として扱われることがあり、その場合は建て替え時に建物の位置や構造が制限されます。
たとえば、がけから一定の距離を離して建てる、擁壁を造り直す、建物側で安全対策(鉄筋コンクリート造にする、擁壁の高さ以上の距離をあけるなど)をとる、といった条件が付くことがあります。
制限の内容は自治体ごとに異なり、対象となるがけの高さも「2mを超えるもの」「3mを超えるもの」など地域差があります。
そのため、同じような擁壁でもエリアによって建てられる家の自由度が変わります。
買主の立場で考えると、「せっかく土地を買っても希望の間取りの家が建たない」「建てるために追加の対策費がかかる」土地は、避けたくなるのが自然です。
これが、がけ条例のかかる擁壁土地が実需の買主に敬遠される理由です。
がけ条例や建て替え制限で買い手がつかない点は、道路に接していないなどの理由で建て替えができない土地と共通します。
擁壁の補修や造り直しには高額な費用がかかるから
安全性に問題のある擁壁は、補修や造り直しに高額な費用がかかります。
そしてこの費用は、そのまま売却価格から差し引かれるのが一般的です。
売主にとっては「工事費を先に払う」か「その分だけ安く売る」かの違いで、いずれにせよ負担は擁壁の状態に応じてのしかかってきます。
たとえば、相場3,000万円の土地でも、擁壁のやり直しに1,000万円かかるなら、買主は2,000万円程度でなければ買わないと考えます。
むしろ買主は、工事のリスクや手間を見込んで、それ以上の値引きを求めてくることも珍しくありません。
費用の目安は次の章で詳しく説明しますが、この「実質的な値下げ」が、売れにくさに直結します。
崩れると所有者が損害賠償責任を負うことになるから
工作物責任とは、土地の工作物(擁壁など)の欠陥で他人に損害を与えた場合に、その所有者が負う賠償責任のことです(民法717条)
擁壁が崩れて隣家や道路、通行人に被害を与えた場合、その責任は基本的に土地の所有者が負います。
しかも民法717条では、占有者と違い、所有者には原則として免責が認められていません。
つまり「知らなかった」「手入れしていたつもりだった」では済まされない可能性があるということです。
擁壁の崩落は、隣家の損壊だけでなく、通行人や車への被害といった人身事故につながることもあります。
その場合の賠償額は高額になり得ます。買主は、購入後にこの責任を引き継ぐことを嫌がります。
そして売主にとっても、売れないまま持ち続ける間はこのリスクを負い続けることになります。
「売れないから仕方なく所有している」状態が、実は重い責任を抱え続けることを意味する点は、見落とされがちです。

土地の売却でお困りではありませんか?
本サイトの監修・協力会社であるAlbaLinkが運営する「訳あり物件買取プロ」では、空き家・共有持分・再建築不可物件など、売りにくい不動産の買取に対応しています。
- 東証グロース上場企業
- 年間相談件数25,000件超(2025年実績)
- 全国の不動産に対応
【結論】擁壁があるだけで土地が売れないわけではない
結論から言えば、擁壁があるだけで土地が売れないわけではありません。
検査済証があり、高さ2m以下で劣化のない「安全性を確認できる擁壁」なら通常どおり売れ、むしろ眺望や日当たりの良さが利点になることもあります。
売れにくいのは、書類や現況で安全性を確認できない擁壁に限られます。
まずは「自分の土地はどちらなのか」を切り分けるところから始めましょう。
擁壁とは高低差のある土地を支える壁状の構造物のこと
擁壁とは、高低差のある土地の側面が崩れないように支える壁状の構造物のことです。
斜面を造成して平らな宅地をつくるときや、道路との間に段差があるときに設けられます。
擁壁は、主に次の3種類に分けられます。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 鉄筋コンクリート(RC)擁壁 | 鉄筋入りのコンクリート製。強度が高く、現在の主流 |
| 間知石・間知ブロック擁壁 | 石やブロックを積み上げた擁壁。古い住宅地に多い |
| 大谷石・ブロック積み擁壁 | 加工しやすい石やブロックを積んだもの。古く現行基準に合わないことがある |
種類そのものより、「安全性が確認できるか」が売れやすさを左右します。
安全性を確認できる擁壁付きの土地は問題なく売れる
書類と現況の両面で安全性を確認できる擁壁なら、売却に大きな支障はありません。
具体的には、次の条件がそろっている擁壁です。
- 高さが2m以下、または高さ2m超でも建築確認・検査済証がある
- ひび割れ・傾き・膨らみ(はらみ出し)などの劣化がない
- 土砂災害警戒区域などに該当しない
こうした擁壁は、買主も安心して購入でき、住宅ローンの審査も通りやすくなります。
高台で日当たりや風通しが良い、水害時に浸水しにくいといった点は、むしろ買主にとっての魅力になります。
つまり、「擁壁がある=売れない」という思い込みは正確ではありません。問題になるのは、あくまで安全性を確認できない擁壁です。
ご自身の擁壁がどちらに当てはまるかを、まず落ち着いて見極めることが第一歩です。
安全性を確認できない擁壁付き土地が売れにくいのは事実
一方、安全性を書類や現況で確認できない擁壁は、買い手が敬遠しやすくなります。
たとえば、次のような擁壁です。
- 検査済証や建築確認の記録がない
- 二段に積まれている(二段擁壁)
- ひび割れ・傾き・水抜き穴の詰まりなど、劣化が進んでいる
- 現行基準に合わない古い工法(大谷石・空石積みなど)
これらは「安全かどうかを買主が判断できない」ため、売却が難しくなります。なぜ売れにくくなるのかは、次の章で一つずつ見ていきます。
擁壁のある土地が売れるか見分ける3つのチェックポイント
自分の擁壁が売れやすいかどうかは、次の3点で大まかに判断できます。
- 擁壁の高さ
-
擁壁の高さが2mを超えているか
- 書類の有無
-
建築確認・検査済証・造成の許可書類があるか
- 擁壁の劣化具合
-
ひび割れ・傾き・膨らみ・水抜き穴の詰まりがあるか
高さ2m以下・書類あり・劣化なしであれば、売れやすい擁壁です。
逆に、高さ2m超で書類がなく、劣化も見られる場合は、通常の仲介では売れにくく、後述する別の手放し方を検討する段階といえます。
売れにくい擁壁付き土地でも手放す方法はある
前述のチェックの結果「売れにくい側」だったとしても、擁壁付きの土地を手放せないわけではありません。
工事をせず、検査済証がなくても、現況のまま売る方法があります。
具体的には、契約不適合責任(引渡し後に見つかった不具合の補修費などを売主が負う責任)を免責にした現況での売却や、擁壁のような扱いの難しい不動産に強い買取会社への売却です。
「直してから売る」以外の選択肢を、この記事の後半で詳しく解説します。まずは、なぜ売れにくくなるのかを理解しておきましょう。

土地の売却でお困りではありませんか?
本サイトの監修・協力会社であるAlbaLinkが運営する「訳あり物件買取プロ」では、空き家・共有持分・再建築不可物件など、売りにくい不動産の買取に対応しています。
- 東証グロース上場企業
- 年間相談件数25,000件超(2025年実績)
- 全国の不動産に対応
擁壁のやり直しや補修にかかる費用の相場は?
もしも擁壁の工事を行う場合、ひび割れ程度の補修なら数十万円ほどですが、造り直し(やり直し)をする場合は数百万~1,000万円超に達します。
この工事費はそのまま売却価格から差し引かれるのが一般的で、直してから売ると手取りが大きく減ります。
工事をかけずに現況のまま手放す選択肢もあるので、まずは工事をする場合どれくらいの費用がかかるのかを知っておきましょう。
同じ擁壁工事でも補修とやり直しで費用は大きく変わる
同じ「擁壁の工事」でも、内容によって費用は大きく違います。
| 工事の内容 | 費用の目安 | 工事の内容 |
|---|---|---|
| 補修 | 数十万円程度で収まることがある | ひび割れの充填、水抜き穴の清掃、部分的な補強など |
| やり直し(造り替え) | 数百万円~1,000万円超になることがある | 既存の擁壁を撤去し、新しく造り直す工事 |
たとえば、表面の細いひび割れを埋める、詰まった水抜き穴を清掃・再設置する、といった補修なら比較的軽い負担で済みます。
一方、擁壁が傾いている、大きく膨らんでいる、といった場合は、部分補修では対応できず、造り直しが必要になることがあります。
「劣化はあるが構造上は問題ない」のか「造り直しが必要」なのかで、負担は桁違いに変わります。
見た目だけで自己判断せず、まずは専門家の診断で、どちらが必要かを見極めることが大切です。
やり直しの場合の費用相場は数百万~1,000万円超になる
やり直し工事の費用は、擁壁の種類・高さ・長さで決まりますが、一般的な単価と規模別のモデルケースは次のとおりです。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 鉄筋コンクリート(RC)擁壁 | 1平方メートルあたり約3~10万円 |
| 間知石・間知ブロック擁壁 | 1平方メートルあたり約2.8~7万円 |
| 高さ3m×延長10m(約30平方メートル)のモデル | 約90~300万円 |
| 高さ3m×延長20m(約60平方メートル)のモデル | 約180~600万円 |
| 大規模・条件が悪い場合 | 1,000万円を超えることもある |
※工事費用には公的な費用統計が存在しないため、金額は目安
高低差が大きい、重機が入りにくい、基礎を深く掘る必要がある、といった条件が重なると、費用はさらに上がります。
たとえば、高さ3m・延長15m(約45平方メートル)の鉄筋コンクリート擁壁を造り直す場合、45平方メートル×7万円=約315万円が目安になります。
これに、既存擁壁の撤去費、仮設・重機の搬入費、地盤の状況によっては地盤改良費が加わります。前面道路が狭くて大型重機が入らない場所では、小型機での作業になり、工期も費用もかさみます。
正確な金額は、現地を見た専門業者の見積もりでしかわかりませんが、同じ高さ・長さでも、現地条件しだいで数百万円の差が出るということです。
やり直しが必要な擁壁はその費用分だけ売却価格が下がる
前述のとおり、やり直しが必要な擁壁は、その費用分だけ売却価格が下がるのが基本です。
相場3,000万円の土地で1,000万円の工事が必要なら、売値は2,000万円程度が現実的な水準になります。
ただし、下がり幅はエリアの需要によっても変わります。
人気のある住宅地なら、買主が多少の工事費を織り込んでも買うことがあります。
一方、もともと需要の少ないエリアでは、価格を下げても買い手が現れず、何年も売れないこともあります。
「◯割下がる」と一律には言えず、最終的にはその土地に住みたい人がいるかどうかで決まります。
工事費をかけずに現況のまま売るという選択肢もある
ここで多くの方が迷うのが、「先に数百万円を払って直してから売るべきか」という点です。
実は、「直してから売る」以外の道もあります。それが、工事をせず擁壁がある現況のまま手放す方法です。
とくに、擁壁のような扱いの難しい不動産に強い買取会社であれば、工事費を売主が負担しなくても買い取れるケースがあります。
次の章以降で詳しく解説しますが、手元に工事費を用意できない場合や、これ以上費用をかけたくない場合の現実的な選択肢になります。
なお、「建物を解体して更地にすれば売れるのでは?」と考える方もいますが、更地にしても擁壁そのものは残るため、擁壁の問題は解決しません。
がけ条例による建築制限も、更地にしたからといって変わるわけではありません。むしろ解体費が別途かかる分、負担が増えることもあります。
更地化が有効かどうかも、擁壁の状態と土地の需要を見て判断する必要があります。

土地の売却でお困りではありませんか?
本サイトの監修・協力会社であるAlbaLinkが運営する「訳あり物件買取プロ」では、空き家・共有持分・再建築不可物件など、売りにくい不動産の買取に対応しています。
- 東証グロース上場企業
- 年間相談件数25,000件超(2025年実績)
- 全国の不動産に対応
【状況別】特に売れにくい擁壁のある土地の最適な手放し方
二段擁壁・大谷石・無許可の擁壁、仲介で長期間売れ残っている土地、相続した遠方の土地などは、特に買い手がつきにくいケースです。
こうした土地は値下げよりも、現況のまま買い取れる出口に切り替えるほうが現実的なことがあります。
ご自身の状況に近いものからお読みください。
| 状況 | なぜ売れにくいのか | 現実的な手放し方 |
|---|---|---|
| 二段擁壁 | 造り直し前提で建築確認が下りにくい | 現況のまま買取 |
| 大谷石・無許可 | 現行基準外でローンが使えない | 現金客・現況のまま買取 |
| 仲介で売れ残り | そもそも需要が乏しい | 出口の切り替え |
| 相続した遠方の土地 | 現地確認・管理ができない | 写真・資料ベースで買取 |
| 崩落が不安 | 賠償リスクを抱え続ける | 早期のうちに現況のまま買取 |

土地の売却でお困りではありませんか?
本サイトの監修・協力会社であるAlbaLinkが運営する「訳あり物件買取プロ」では、空き家・共有持分・再建築不可物件など、売りにくい不動産の買取に対応しています。
- 東証グロース上場企業
- 年間相談件数25,000件超(2025年実績)
- 全国の不動産に対応
二段擁壁は特に売れにくいため買取業者に相談する
二段擁壁とは、既存の擁壁の上にさらに擁壁やブロックを積み増した状態のことです。
現地調査でも特に注意して見られる箇所で、構造上の安全性が確認しにくく、買主に敬遠されやすい典型例です。
二段擁壁の土地は、建て替えの際に「一体で造り直すよう求められる」ことがあり、そのままでは建築確認が下りにくいケースがあります。
工事費が読めないため、仲介では買い手が決まりにくく、現況のまま買い取れる会社に相談するのが現実的です。
こうした「現状のまま買い取ってもらう」進め方は、関連記事「再建築不可物件の買取」と共通する部分が多いので、参考にしてみてください。
大谷石や無許可の擁壁がある土地も買主がつきにくい
大谷石やブロックを積んだ古い擁壁、確認申請を受けていない無許可の擁壁は、現在の基準に合わないことが多く、住宅ローンが使えないため買い手が限られます。
とくに大谷石は加工しやすい反面もろく、経年で表面が崩れやすいため、買主や金融機関から敬遠されやすい擁壁です。
こうした土地の買い手は、現金で購入できる投資家や、再生を前提とする買取会社が中心になります。
一般のマイホーム購入者を待ち続けても決まりにくいため、はじめから現金で買える相手を探すほうが、結果的に早く手放せます。
仲介で半年以上売れ残っているなら出口を変える
仲介に出して半年以上動きがない場合、価格をさらに下げる前に、売り方(出口)そのものを見直す段階かもしれません。
需要の少ないエリアや条件の悪い擁壁土地は、値下げをしても買い手が現れず、何年も売れ残ることがあります。
値下げを重ねるほど「何か問題がある土地では」という印象を与え、かえって内覧が入らなくなることもあります。
その間も固定資産税や管理費は出ていき、崩落の賠償リスクも抱えたままです。
値下げを繰り返して消耗するより、擁壁付き土地を現況で買い取れる会社に切り替えたほうが、確実に区切りをつけられる場合があります。
「あと少し待てば売れるかもしれない」という期待と、実際にかかり続けるコストを、一度冷静に比べてみることをおすすめします。
相続した遠方の擁壁付き土地でも写真だけで進められる
相続した実家の土地が遠方にあり、「現地に行けないから売れない」と感じている方もいます。
しかし、写真や登記簿・図面などの資料があれば、現地に行かなくても査定を進めることは可能です。
遠方・現況のままでも、資料ベースで話を進められる買取会社があります。
査定に必要な登記簿謄本や公図などは、法務局でオンライン請求もできるため、現地に行かずに準備できます。
なお、相続した土地を売る前提として、名義を亡くなった方から相続人に変更する相続登記が必要です。
崩落が心配な擁壁は早く手放すほど賠償リスクが減る
「崩れて隣の家に被害が出たらどうしよう」という不安を抱えたまま所有を続けるのは、精神的にも負担が大きいものです。
前述のとおり、工作物責任(民法717条)は所有している限り続きます。
擁壁の状態が悪く崩落が心配な場合は、早く手放すほど、この賠償リスクから解放されます。
金銭面だけでなく、「いつか誰かに迷惑をかけるかもしれない」という不安から解放される点も、売却の大きなメリットです。
擁壁のある土地を売る方法と現況のまま手放すコツを解説
擁壁のある土地は、「安全性を示す資料集め → 専門家の調査 → 仲介または買取」の順で検討します。
検査済証がなくても、契約不適合責任を免責にした現況売却や、擁壁に強い買取会社への現況買取で手放せます。
なお、買取価格は仲介を通して売却できた場合と比べると6~8割になるのが目安です。
まずは擁壁の安全性を買主に示すための資料を集める
擁壁の安全性を買主に示せれば、売却は有利に進みます。
まずは次の書類を探しましょう。
- 建築確認・検査済証
- 宅地造成の許可書類、擁壁の構造図・断面図
- 過去の補修・点検の記録
手元にない場合も、あきらめる必要はありません。役所に問い合わせれば確認できることがあります。
- 建築指導課:建築確認や違反建築の有無、再建築の可否
- 道路管理課:前面道路が建築基準法上の道路かどうか
- 都市計画課:用途地域や建築制限、がけ条例の該当有無
こうした役所調査は、一つの窓口では完結せず、複数の課を回って情報を集めるのが実情です。
まずは自分で調べられる範囲を押さえておくと、仲介会社や買取会社との相談が早く進みますが、平日に何度も役所へ足を運ぶのは負担が大きいものです。
買取会社に売る場合は、委任状を渡すことで、これらの役所調査や書類取得を代行してもらえることもあります。
遠方に住んでいて現地の役所に行けない方にとっては、この点も現況買取を選ぶ理由の一つになります。
専門家による調査で安全性を証明できると売れやすくなる
劣化が軽い擁壁なら、建築士や土木の専門家による調査(擁壁のインスペクション)で「安全である」と示せれば、査定にプラスに働きます。
買主も安心して購入でき、通常の仲介で売れる可能性が高まります。
調査費用は内容や規模によりますが、簡易な現況診断で数万円、構造計算を伴う詳細調査で十数万円程度が目安です。
この方法が向くのは、書類がそろっている、または劣化が軽微で、調査費用に見合う立地の需要がある土地です。
調査で「安全」と示せれば、その費用以上に売却額が上がることが期待できます。
反対に、調査の結果、造り直しが必要なほど劣化していることがわかった場合は、無理に仲介にこだわらず、次に説明する現況での売却を検討することになります。
診断で現状を正確に把握しておくこと自体が、次の判断の材料になります。
検査済証がなくても現況のまま売ることはできる
検査済証がなくても、売る方法はあります。
まず、売主の手元に書類がなくても、役所に過去の建築確認の記録が保管されていれば、基準に適合した擁壁として扱われることがあります。
まずは役所で記録の有無を確認しましょう。
役所での確認方法は、建築指導課の窓口で住所や地番を伝え、「建築計画概要書」や過去の建築確認・検査の記録が保管されていないかを尋ねる、という流れです。
古い擁壁だと記録が残っていないこともありますが、確認する価値はあります。
記録も見つからない場合は、擁壁の現状をありのままに開示したうえで、「現況のまま引き渡す」条件で売却します。
書類がないこと自体は売却をあきらめる理由にはなりませんが、この際に重要になるのが次に説明する契約不適合責任の扱いです。
契約不適合責任を免責にして手放せると引き渡し後も安心
契約不適合責任の免責特約とは、引渡し後に見つかった不具合の補修費などを売主が負わない、と契約で定める取り決めのことです。
通常の売買では、引渡し後に擁壁の欠陥が見つかると、売主が補修費用などを求められることがあります。
免責特約を結んでおけば、この負担を避けられます。
ただし、免責が認められる前提として、売主が知っている擁壁の状態を、重要事項説明や物件状況報告書(告知書)で正直に伝えておく必要があります。
たとえば「ひび割れがある」「検査済証が見つからない」「過去に一部を補修した」といった情報は、隠さずに記載します。
伝え方が不十分だと、あとから「聞いていない」とトラブルになり、免責が認められないこともあります。
つまり、免責特約は「黙って売るための仕組み」ではなく、「正直に開示したうえで、補修費の負担を線引きする仕組み」です。
開示すべきことを開示するからこそ、売主は引渡し後の負担から守られます。
擁壁のある土地に強い専門の買取業者なら工事せずに手放せる
擁壁のように扱いの難しい不動産は、そうした物件を専門に扱う買取会社に売る方法があります。
仲介が「買いたい個人を探す」のに対し、買取は「会社が直接買い取る」仕組みです。
擁壁付き土地の買取に強い会社であれば、次のような対応が可能なことがあります。
- 擁壁のやり直し工事をせず、現況のまま買い取る
- 契約不適合責任を免責にする
- 残置物(庭の物置や古家など)をそのままにして買い取る
- 測量や登記にかかる費用を負担する
こうした対応により、売主が数百万円の工事費を用意しなくても手放せます。
買取の進め方は、おおむね次の流れです。
- 電話やメールで、土地の所在地・擁壁の状態などを伝える
- 登記簿・図面・写真などの資料をもとに、おおよその買取額の連絡を受ける
- 必要に応じて現地調査(遠方なら資料ベースで進むこともある)
- 買取金額・条件(免責の範囲・引渡し時期)を確認して契約
- 決済・引渡し
遠方で現地に行けない場合や、残置物が残っている場合でも、その旨を最初に伝えれば進められます。
買取価格は仲介で売れた場合の6~8割になる点には注意
一方で、買取には正直にお伝えすべき点があります。
買取価格は、仲介で売れた場合の相場のおおむね6~8割程度が目安とされます。
たとえば仲介なら3,000万円で売れる土地でも、買取ではおおむね1,800万~2,400万円程度が現実的な水準です。
会社が買い取った後、工事やリスクを引き受けて再販するため、その分が価格に反映されるからです。
実際の割合は、擁壁の状態や立地の需要によって変わります。
そのため、擁壁に問題がなく、時間をかけても仲介で売れる見込みがある土地なら、仲介のほうが手取りは多くなります。
仲介と買取の違いを整理すると、次のとおりです。
| 比較項目 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 相場に近い | 相場の6~8割程度 |
| 売れるまでの期間 | 数か月~長期化も | 短期間で確定しやすい |
| 擁壁工事費の負担 | 売主が負担することが多い | 負担せず売れることがある |
| 契約不適合責任 | 負うことが多い | 免責にしやすい |
「価格は下がっても、工事費・売れ残りのコスト・崩落の賠償リスクから解放されたい」という場合には、買取が合理的な選択肢になります。
どちらが向くかは、擁壁の状態と、その土地に買い手がつく見込みで判断しましょう。
無理に一社の言いなりになる必要はありませんが、擁壁に強い信頼できる一社を見つけて相談することが、遠回りを避けるコツです。
擁壁のある土地を売れないまま持ち続ける4つのリスク
擁壁のある土地を売れないまま放置すると、固定資産税や管理費が出続けるうえ、崩壊時には民法717条の工作物責任で損害賠償を負う可能性があります。
相続登記の義務化もあり、放置の出口は年々狭くなっています。
「急がず持っておく」ことにも、見えないコストがある点を押さえておきましょう。
固定資産税と管理費は持ち続ける限りかかる
土地を所有している限り、固定資産税(と地域によっては都市計画税)がかかり続けます。
たとえば、固定資産税評価額1,000万円の土地なら、標準税率1.4%で年約14万円、都市計画税を含めると年17万円ほどになる計算です(出典:総務省 地方税制度)。※税率は自治体・特例により異なるため要確認
なお、住宅が建っている土地は住宅用地の特例で軽減されますが、更地や古家付きで特例が外れると負担は大きくなります。
これに加えて、草刈りや擁壁の点検といった管理の手間・費用もかかります。
遠方の土地なら、現地に行く交通費や、業者に管理を頼む費用もかさみます。
仮に年間20万円前後の保有・管理コストがかかるとすれば、5年で100万円近くが出ていく計算です。
売れないまま持ち続けると、こうした費用が資産価値を生まないまま流れ出ていく一方になります。
「いつか売れるかもしれない」と待つ間にも、コストは積み上がっていく点は見落とせません。
いつか崩壊した時の損害賠償責任を負い続ける
前述のとおり、擁壁が崩れて他人に被害を与えた場合、所有者は工作物責任(民法717条)を問われます。
管理が不十分だったとみなされれば、隣家の損壊や、最悪の場合は人身被害について、高額な賠償を求められる可能性もあります。
このリスクは、売れないまま所有している間ずっと続きます。
「売れないから仕方なく持っている」状態が、実はリスクを抱え続けることにつながっている点は見落とされがちです。
法改正による相続登記の義務化で過料の対象になった
2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。
相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記をしないと、正当な理由がない場合、10万円以下の過料の対象になります(出典:法務省)。
2024年4月より前に相続した土地も対象で、その場合の期限は2027年3月31日までです。
すぐに遺産分割がまとまらない場合は、「相続人申告登記」という簡易な手続きで、いったん義務を果たすこともできます。
ただし、これはあくまで過料を避けるための暫定的な手続きで、土地を売るにはあらためて正式な相続登記が必要です。
「相続したまま名義を放置していた擁壁付きの土地」も、これからは登記して向き合う必要があります。
金銭面だけでなく精神的な負担にもつながる
擁壁付きの土地を持ち続けることは、金銭的な負担だけでなく、「いつか崩れるかもしれない」「子どもに負担を残したくない」といった精神的な負担にもつながります。
売却して手放せば、これらの不安から解放されます。
とくに、他社で断られたり、何年も売れずに疲れてしまった方にとっては、「いつまでにこの問題が終わるか」という区切りがつくこと自体が、大きな安心材料になります。
金額の多少だけでなく、「終わりが見える」ことの価値は小さくありません。
先祖代々の土地や、親から受け継いだ土地を手放すことに、抵抗を感じる方もいるでしょう。
しかし、崩落のリスクや負担を次の世代に引き継がせないという意味では、きちんと整理して手放すことも、責任ある選択の一つです。
まずは現状がどうなのかを知るために、無理のない範囲で相談してみるとよいでしょう。
擁壁のある土地の売却でよくある質問
- 擁壁のある土地は本当に売れないのですか?
-
売れないとは限りません。安全性を確認できる擁壁なら通常どおり売却でき、確認できない場合でも、現況買取など手放す方法があります。
- 検査済証がない擁壁でも売れますか?
-
売れます。役所に過去の建築確認が保管されていれば適合扱いになることがあり、無い場合も、契約不適合責任を免責にした現況売却や買取で手放せます。
- 擁壁のやり直し費用は誰が負担しますか?
-
直してから売る場合は売主負担が基本で、費用分は価格から差し引かれます。現況のまま買取に出せば、工事費を負担せずに手放せるケースもあります。
- 相続した擁壁付きの土地が遠方で現地に行けなくても売れますか?
-
売れます。写真や登記・図面などの資料をもとに査定を進められるため、現地に行けなくても相談できます。売却の前提として、先に相続登記が必要です。
まとめ|擁壁のある土地は現況のままでも手放せる
擁壁があるだけで土地が売れないわけではありません。
検査済証があり劣化のない擁壁なら、通常どおり売却できます。
売れにくいのは、高さ2m超で書類がない、二段擁壁、劣化が進んでいる、といった「安全性を確認できない擁壁」です。
売れにくい擁壁でも、手放す方法はあります。
まずは役所で書類の有無を確認し、安全性を示せるなら仲介で売る、示せない場合は契約不適合責任を免責にした現況での売却や、擁壁に強い買取会社への現況買取という道があります。
買取価格は相場の6~8割程度になりますが、工事費や売れ残りのコスト、崩落の賠償リスクから解放されるという利点があります。
数百万円の工事費を用意できなくても、検査済証がなくても、現況のまま手放す選択肢はあります。
売れずに悩んでいる場合は、擁壁付き土地の扱いに慣れた会社に、まず現状を相談してみることをおすすめします。

土地の売却でお困りではありませんか?
本サイトの監修・協力会社であるAlbaLinkが運営する「訳あり物件買取プロ」では、空き家・共有持分・再建築不可物件など、売りにくい不動産の買取に対応しています。
- 東証グロース上場企業
- 年間相談件数25,000件超(2025年実績)
- 全国の不動産に対応


