「相続した実家が旧耐震で、売れないのではないか」「耐震補強に何百万円もかかると言われて動けない」。
そんな不安から、古い家やマンションを手放せずにいませんか。
旧耐震基準の物件でも、立地や建物の状態に合う方法を選べば売却できます。
ただし、買主が住宅ローンを利用するには耐震性などの確認が必要となる場合があり、新しい建物と同じ条件では買い手が見つかりにくいことがあります。
耐震補強してから売る方法がいつも得とは限りません。
工事費をかけずに現況で仲介に出す方法や、旧耐震基準の物件を扱う買取業者へ売却する方法もあります。
まず建築確認日と手元の資料を確認し、マンションと戸建ての違いを踏まえて、費用をかける前に売却後の手残りを比べましょう。
- 旧耐震基準と新耐震基準の違い、確認に使える書類
- 旧耐震基準の物件が売却しにくい5つの理由
- 補強・解体・現況売却・買取の費用と向き不向き
- マンションと戸建てで異なる確認事項
- 売却を先送りする費用と空き家管理のリスク
旧耐震基準とは1981年5月31日以前に建築確認を受けた建物の基準
一般に旧耐震基準とは、1981年(昭和56年)5月31日までに建築確認を受けた建物に適用されていた耐震基準を指します。
翌6月1日から新耐震基準が適用されました。
完成日だけで判断すると、旧耐震基準の物件を新耐震基準だと取り違える可能性があります。
まず確認済証などで建築確認日を調べることが、売却準備の出発点です。
旧耐震基準の物件だから直ちに危険、または売却できないという意味ではありません。
現在の耐震性は、構造、劣化、増改築、補強履歴などを含めて耐震診断で確認します。
旧耐震基準と新耐震基準は想定する地震の規模が異なる
旧耐震基準では、中規模の地震動で建物が倒壊・崩壊しないことなどを確認していました。
新耐震基準では、中規模の地震動に対してほとんど損傷しないことに加え、大規模の地震動に対して倒壊・崩壊しないことも確認します。
| 比較項目 | 旧耐震基準 | 新耐震基準 |
|---|---|---|
| 適用の目安 | 1981年5月31日までに建築確認 | 1981年6月1日以降に建築確認 |
| 耐震設計の考え方 | 中規模地震で倒壊・崩壊しないことなどを確認 | 中規模地震の損傷防止と大規模地震の倒壊・崩壊防止を確認 |
| 売却時の確認 | 耐震診断、補強履歴、劣化状況を確認 | 築年数だけでなく劣化や修繕状況も確認 |
熊本地震後に国土交通省が益城町中心部の木造建築物を調べた結果、倒壊・崩壊した割合は1981年5月以前が28.2%、1981年6月から2000年5月が8.7%でした。
これは特定地域・構造の調査結果ですが、買主が旧耐震基準の物件に慎重になる背景を示しています。
出典:国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」
出典:国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書」
自分の物件が旧耐震基準かは建築確認日で確認する
建築確認は、工事を始める前に建築計画が法令に適合するかを確認する手続きです。
そのため、1981年6月以降に完成した建物でも、建築確認日が同年5月31日以前なら旧耐震の物件にあたります。
売却前には、次の資料を探しましょう。
書類の名称や発行できる証明は自治体によって異なります。
- 建築確認済証・確認通知書:建築計画の確認時に交付された書類
- 検査済証:工事完了後の検査に合格したときに交付された書類
- 台帳記載事項証明書など:自治体に残る建築確認や完了検査の記録を証明する書類
台帳記載事項証明書は、紛失した検査済証そのものを再発行する書類ではありません。
また、完了検査の記録がなければ、建物全体が適法だったことの証明にはならない点に注意してください。
手元に資料がなければ、物件所在地の建築指導課などへ相談し、取得できる記録を売却の依頼先と確認します。
旧耐震基準でも売却できるが物件に合う方法を選ぶ必要がある
旧耐震の物件にも所有権があり、売買を禁じる決まりはありません。
駅に近い、土地の需要が高い、管理状態がよいなどの条件がそろえば、現況のまま仲介で売却できる場合があります。
一方で、住宅ローンや税制、修繕費への不安から買主候補は少なくなりがちです。
売り出しても反応が乏しい物件では、耐震補強後の売却価格だけでなく、工事をせず買取を利用した場合の金額も比べる必要があります。
マンションは共用部分を区分所有者1人の判断で補強できません。
戸建ては所有者が耐震改修や解体を選べますが、再建築不可の土地を先に更地にすると、かえって売却しにくくなることがあります。
旧耐震の物件を売却するときは、まず「今の状態での仲介査定」「必要な工事費」「現況での買取価格」を同じ時点で確認すると、費用をかけるべきか判断しやすくなります。
旧耐震基準の物件が売れにくい5つの理由
旧耐震の物件が売れにくい理由は、単に築年数が古いからではありません。
買主の資金計画と、購入後に必要となる修繕や管理の見通しに影響するためです。
住宅ローンや減税が使えるかは、建築時期だけで一律に決まりません。
買主が検討を続けられるよう、売主側で用意できる資料を先に整理しておきましょう。
買主の住宅ローン審査が通りにくい
金融機関は、買主の返済能力に加えて物件の担保評価も審査します。
旧耐震の物件は、耐震性や残存耐用年数、将来の売却しやすさを慎重に見られ、希望額まで借りられないことがあります。
フラット35の中古住宅では、原則として適合証明書が必要です。
建築確認日が1981年5月31日以前の物件は、住宅金融支援機構が定める耐震評価基準を満たすことに加え、接道、劣化、管理など他の技術基準にも適合する必要があります。
旧耐震基準だからフラット35を一律に利用できないわけではありません。
ただし、調査の結果、基準を満たさない場合や、証明に必要な資料をそろえられない場合は利用できません。
一般の住宅ローンも金融機関ごとに判断が異なるため、買主の利用予定を早めに確認します。
買主が住宅ローン減税を受けるには証明が必要な場合がある
住宅ローン減税では、1982年1月1日以後に建築された住宅が耐震要件を満たす住宅として扱われます。
それより前に建築された物件は、現在の耐震基準に適合することを所定の書類で示す必要があります。
2026年時点で国土交通省が案内する書類は、耐震基準適合証明書、建設住宅性能評価書の写し、既存住宅売買瑕疵保険付保証明書のいずれかです。
減税には所得、床面積、入居時期など他の要件もあります。
証明がないまま旧耐震の物件を売却すると、買主が受けられる優遇を判断しにくく、同じ価格帯の新しい物件へ流れることがあります。
取得の可否と費用を売却前に確認しておくと、説明材料になります。
地震保険の割引を受けられないことがある
地震保険の基本料率は、建物の構造と所在地で決まります。
旧耐震基準という理由だけで一律に保険料が上がる仕組みではありません。
ただし、1981年6月1日以降に新築された建物に適用される建築年割引は、旧耐震の物件では使えません。
現行耐震基準と同等の耐震性能が確認できれば耐震診断割引、耐震等級などを証明できれば所定の割引を利用できる場合があります。
売却時に「地震保険が高い」と断定するのではなく、耐震診断や評価書など、買主が割引を確認できる資料の有無を伝えましょう。
老朽化による耐震性と修繕費を心配される
旧耐震の物件は築年数が経過しており、基礎、屋根、外壁、配管などに修繕が必要なことがあります。
買主は、耐震補強費と通常の修繕費が同時に発生する可能性を考えて価格を判断します。
一方、旧耐震基準であることだけを理由に、現在の建物が危険だとも安全だとも判断できません。
適切に修繕されていても、それだけで現在の耐震基準への適合が証明されるわけではないためです。
過去の耐震診断結果、補強工事の設計図、修繕履歴、インスペクションの報告書があれば整理します。
資料がない部分は推測で補わず、未確認として買主へ説明することが、売却後のトラブル防止につながります。
マンションは修繕積立金や建て替えの負担を判断しにくい
旧耐震基準のマンションでは、専有部分だけでなく、建物全体の耐震性と管理状態が売却価格に影響します。
修繕積立金が不足していれば、将来の一時金や値上げを心配されます。
2026年4月1日施行の改正区分所有法では、マンション建て替え決議の原則は区分所有者と議決権の各5分の4です。
耐震基準に適合していないなど一定の客観的事由がある場合は、各4分の3へ緩和されます。
それでも、多数の合意や資金計画が必要である点は変わりません。
売却前には、耐震診断結果、長期修繕計画、修繕積立金残高、総会議事録、建て替えや改修の検討状況を管理組合や管理会社へ確認します。
出典:法務省「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」
マンションの耐震性や将来負担は、築年数だけでは説明できません。
管理組合から取得できた資料と、まだ決まっていない事項を分けて買主へ提示しましょう。
旧耐震基準の物件を売却する4つの方法
旧耐震の物件を売却する方法は、現況のまま仲介に出す、改修して仲介に出す、戸建てを解体して土地として売る、買取業者へ売る、の4つが中心です。
高く売れる可能性だけを見ると、工事費や売却期間を見落とします。
最終的に手元へ残る金額と、引き渡し後の責任まで比較しましょう。
| 売却方法 | 期待できる点 | 主な負担・注意点 | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| 現況で仲介 | 工事費をかけず市場価格を狙える | 買主が見つかるまで期間を要する | 立地需要があり、期間を確保できる |
| 耐震改修後に仲介 | 安全性を説明しやすくなる | 改修費を売却価格で回収できるとは限らない | 診断結果と費用対効果が合う |
| 解体して土地で売却 | 戸建ての老朽化を切り離せる | 解体費、税負担、再建築の可否を確認 | 土地需要があり、建て替えできる |
| 専門業者の買取 | 現況で早期売却を検討できる | 仲介相場より価格が下がる傾向 | 工事費をかけず早く手放したい |
そのままの状態で仲介に出して売る
耐震補強やリフォームをせず、現況のまま不動産会社に買主を探してもらう方法です。
立地がよく、建物の管理状態や価格に納得する買主がいれば、旧耐震の物件でも売却できます。
仲介では、広告で耐震診断の実施状況や修繕履歴を明確にし、内覧前に買主へ確認事項を伝えます。
曖昧なまま契約直前に問題が分かると、値下げや融資否決で売却が止まりやすくなります。
売り出して一定期間反応がない場合は、値下げだけを続けるのではなく、想定する買主と販売方法を見直しましょう。
近隣の成約事例、問い合わせ数、買取価格を比べると、待つ期間の上限を決めやすくなります。
仲介査定は売却を保証する金額ではありません。
査定額の根拠、想定する売却期間、値下げ条件まで確認してください。
耐震改修やリフォームをして仲介で売る
耐震診断の結果に基づいて補強し、必要に応じて内外装も整えてから売却する方法です。
耐震性能を証明できれば、買主の住宅ローンや減税の検討材料になる場合があります。
監修元の実務では、一般的な木造戸建ての耐震改修に100万~150万円程度かかることが多いものの、構造、劣化、工法、補強範囲によって金額は大きく変わります。
リフォーム費用は別に必要です。
仮に200万円の工事をしても、売却価格が100万円しか上がらなければ、売主の手残りは減ります。
補強前と補強後の査定、工事見積もり、補助金を同じ表にして比較しましょう。
自治体の耐震診断・改修補助は、着工前の申請を条件とすることがあります。
売却のために工事をする場合も対象になるか、申請前に窓口へ確認してください。
買主の好みが分かれる内装リフォームを先に行うと、費用を売却価格へ反映できないことがあります。
耐震性の説明に必要な工事と、見た目を整える工事を分けて検討しましょう。
戸建てを解体して更地にしてから売る
建物の劣化が大きく、土地としての需要が見込める戸建ては、解体後に更地で売却する方法があります。
買主は解体費を見込む必要がなく、土地の利用計画を立てやすくなります。
ただし、解体費は構造、延べ床面積、道路条件、残置物、アスベストの有無で変わります。
地中埋設物が見つかれば、追加費用が発生することもあります。
さらに、土地が再建築不可なら、建物を壊した後に新しい建物を建てられません。
古家を利用したい買主も対象外となり、旧耐震の物件を売却する選択肢を狭めます。
固定資産税は毎年1月1日の状況を基準に課税されます。
住宅を解体して住宅用地特例が外れる時期も含め、古家付きと更地の査定を比べてから決めましょう。

旧耐震基準に強い買取業者へそのまま売る
耐震改修や解体に費用をかけられない、早く売却したいという場合は、旧耐震基準や築古の物件を扱う買取業者へ直接売る方法があります。
買取業者は、購入後の改修、賃貸、再販売などを前提に査定します。
条件が合えば、一般の買主を探す期間がなく、最短数日~数週間での売却を検討できます。
監修元のAlbaLinkでは、物件ごとの契約条件によって、残置物がある現況での引き渡しや、売主の契約不適合責任を免責とする契約にも対応しています。
一方、買取価格は仲介で成約する相場より低くなる傾向があります。
価格だけでなく、耐震補強、解体、片付け、仲介手数料、保有期間中の費用を差し引いた手残りで比べましょう。
現況買取でも、知っている雨漏りやシロアリ被害などを伝えなくてよいわけではありません。
売却条件と告知する事項を書面で確認します。
【状況別】旧耐震基準の物件を手放す方法はマンションと戸建てで異なる
旧耐震の物件を売却するとき、マンションと戸建てでは所有者が決められる範囲が異なります。
マンションは共用部分に関する資料と管理組合の方針、戸建ては土地の再建築条件と工事費を中心に確認します。
相続した空き家では、名義と管理費用も早めに整理しましょう。
マンションは管理組合の資料を確認して現況での売却を判断する
マンションの柱、梁、外壁などは共用部分にあたり、区分所有者1人で耐震補強を決められません。
管理組合で耐震診断や改修を実施しているかを確認します。
ただし、個人では旧耐震基準のマンションの証明書を取得できない、と一律に決まるわけではありません。
建物全体の診断結果や改修記録など必要な資料がそろえば、建築士や指定確認検査機関へ適合証明の可否を相談できます。
売却前には、管理規約、長期修繕計画、修繕積立金残高、総会議事録、耐震診断・改修の資料を取り寄せます。
取得できない書類がある場合は、その事実を不動産会社へ伝え、現況での仲介と買取を比較しましょう。
- 耐震診断結果と耐震改修の設計・工事記録
- 長期修繕計画、修繕履歴、修繕積立金の残高
- 管理費・修繕積立金・借入金・一時金の予定
- 管理規約、使用細則、直近の総会議事録
戸建ては改修・解体・現況売却を費用対効果で選ぶ
戸建ては、所有者の判断で耐震診断、耐震補強、解体を進められます。
その分、費用をかければ高く売れると思い込みやすいため注意が必要です。
まず、建築確認や検査の資料、接道状況、建物の劣化を確認します。
その後、現況での仲介査定と買取査定を取り、補強または解体後の査定との差額が工事費を上回るかを比べます。
再建築不可の土地や、建築条件が不明な土地では、解体を先行しないでください。
建物が残っているから利用できる価値を失い、売却先がさらに限られるおそれがあります。
自治体の補助金を使う場合は、対象となる建物、診断者、申請時期を確認します。
補助額だけで工事を決めず、売却までの期間も含めて判断しましょう。

相続した空き家は名義・管理費・期限を整理して判断する
相続した旧耐震の物件は、まず相続登記を行い、売却できる名義に整えます。
共有者がいる場合は、売却方法、最低価格、片付けや工事の費用負担を話し合っておきましょう。
遠方の空き家は、固定資産税、火災保険、草木の手入れ、通風、修繕などの費用が続きます。
マンションなら管理費と修繕積立金も毎月発生します。
相続税の申告納付期限や、一定の相続空き家の売却で使える譲渡所得の特例には期限・要件があります。
税理士や不動産会社へ早めに相談し、耐震改修して売る場合と現況で売る場合を比較してください。

相続人の間で方針が決まっていない段階でも、現況の査定と年間維持費は確認できます。
数字を共有しておくと、工事をするか売却するかを話し合いやすくなります。
旧耐震基準の物件を少しでも高く売却するコツ
旧耐震の物件は、見た目だけを整えるより、買主が資金計画と修繕計画を立てられる資料をそろえることが大切です。
証明書を無理に取得するのではなく、取得費用と売却への効果を確認し、取れない場合は現況を正確に説明します。
適合証明書は取得できる物件と取得できない物件がある
旧耐震の物件でも、耐震診断や必要な補強を経て、要件を満たす証明書を取得できる場合があります。
ただし、目的によって必要な書類は同じではありません。
| 目的 | 主な書類・確認 | 注意点 |
|---|---|---|
| フラット35 | フラット35用の適合証明書 | 耐震評価基準に加え、住宅全体の技術基準を確認 |
| 住宅ローン減税 | 耐震基準適合証明書など所定の書類 | 築年、入居、所得、床面積など他の要件も確認 |
| 地震保険の割引 | 耐震診断や耐震等級を示す所定資料 | 利用する割引により必要書類が異なる |
同じ「適合証明書」という呼び方でも、融資と税制では制度が異なります。
売却先の買主が何に使うのかを確認し、建築士や検査機関へ相談してください。
調査費や補強費がかかるうえ、必ず取得できるとは限りません。
取得できない場合は、理由と現況を示して売却するか、証明を前提としない買取を検討します。
証明書の取得費だけで判断せず、必要となる補強工事と、証明によって見込める売却価格の差まで確認しましょう。
検査済証がない場合は取得できる記録で補う
築古の物件では、建築確認済証や検査済証を紛失していることがあります。
自治体に記録が残っていれば、台帳記載事項証明書などを取得し、確認番号や検査年月日を示せる場合があります。
ただし、台帳の証明は検査済証の再発行ではありません。
完了検査を受けた記録がなければ、その証明書だけで竣工時の法令適合を示すこともできません。
必要に応じて、国土交通省のガイドラインに基づく既存建築物の調査など、別の方法を建築士や売却の依頼先と検討します。
買主には、存在する資料と確認できなかった事項を分けて伝えます。
契約不適合責任のトラブルを避けて売る
契約不適合責任とは、引き渡した物件の種類、品質、数量が契約内容に適合しない場合に、買主から修補、代金減額、損害賠償、解除などを求められる可能性がある責任です。
旧耐震の物件では、雨漏り、シロアリ、給排水管、傾き、増改築の履歴など、知っている不具合を物件状況報告書や契約書へ具体的に記載します。
耐震基準が古いことだけで、すべての不具合が契約内容に含まれたことにはなりません。
売主と買主の合意で責任の範囲や期間を定めることはできます。
ただし、売主が知りながら告げなかった事実について、免責の特約で責任を逃れることはできません。
買取業者へ売却する場合も、免責の有無は契約書で確認します。
口頭で「現況のままでよい」と言われただけで判断しないようにしましょう。

管理状態やアピール材料を整理して開示する
耐震診断や補強工事の結果だけでなく、日常の管理と修繕の記録も買主の判断材料になります。
領収書だけでなく、工事箇所、時期、施工会社が分かる資料をまとめましょう。
戸建てでは、屋根・外壁・基礎・配管・防蟻工事の履歴、建築確認関係書類、境界や接道の資料が役立ちます。
マンションでは、建物全体の修繕履歴や管理組合の資料も重要です。
情報を開示する目的は、旧耐震の物件を実際以上によく見せることではありません。
買主が購入後の費用を見積もれるようにすることです。
事実と未確認事項を分けて提示すると、価格交渉の前提が整います。
売却の依頼先には、良い資料だけでなく不具合の記録も渡しましょう。
最初から条件へ反映したほうが、契約直前の値下げや引き渡し後の争いを防ぎやすくなります。
旧耐震基準の物件を売却せずに保有し続ける3つのリスク
売却を急ぐ必要がない場合でも、旧耐震の物件を保有する費用は毎年発生します。
時間がたてば必ず価格が下がるとは限りませんが、劣化が進むと修繕や安全管理の負担が増えます。
売却を先送りするなら、年間費用と必要な管理を数字で把握しておきましょう。
固定資産税と維持費が毎年かかり続ける
使っていない物件でも、所有している限り固定資産税と、地域によっては都市計画税がかかります。
戸建てでは庭木、清掃、保険、修繕の費用が必要です。
マンションでは管理費と修繕積立金が毎月発生します。
たとえば、課税標準が土地1,000万円、建物300万円で、土地全体に小規模住宅用地の特例が適用され、固定資産税率を1.4%と仮定すると、単純計算は土地約2.3万円、建物約4.2万円です。
実際の税額は、固定資産税評価額と課税標準の違い、土地面積、負担調整、自治体の税率、都市計画税などで変わります。
納税通知書の金額を確認し、管理費や交通費も加えて年間負担を計算してください。
旧耐震の物件を売却するまで1年かかれば、その間の費用は売主が負担します。
高い売り出し価格を長く維持するか、価格を調整して早く売るかを考える材料になります。
老朽化で修繕費が増え売却条件が厳しくなることがある
空き家は、雨漏りや漏水に気づきにくく、換気不足でカビや腐朽が進むことがあります。
台風後の破損や庭木の越境を放置すれば、周囲への被害につながるおそれもあります。
建物の状態が悪化すると、買主は修繕費を見込んで価格を下げたり、住宅ローンの審査が難しくなったりします。
土地の需要が上がるなど別の要因もあるため、築年数だけで将来価格は断定できません。
保有を続ける場合は、定期点検と最低限の補修にいくらかかるかを確認します。
その年間費用と、現在の売却査定を比べれば、待つことが自分に合うか判断しやすくなります。
管理不全空家等の勧告を受けると住宅用地特例が外れる
空き家の状態が悪く、放置すれば特定空家等になるおそれがあると自治体に判断されると、管理不全空家等として指導の対象になることがあります。
改善せず勧告を受けると、敷地は固定資産税などの住宅用地特例の対象外です。
小規模住宅用地では固定資産税の課税標準が価格の6分の1とされますが、特例が外れた後の実際の税額がそのまま6倍になるとは限りません。
負担調整措置などがあり、建物分の固定資産税が6倍になるわけでもないためです。
特定空家等について命令に違反した場合は50万円以下の過料の対象となり、要件を満たせば行政代執行で除却され、費用を請求されることもあります。
売却まで時間がかかる場合も、自治体からの通知を放置せず管理を続けてください。
「空き家の固定資産税が必ず6倍になる」という説明は正確ではありません。
勧告によって土地の住宅用地特例が外れることと、納税通知書上の税額を分けて確認しましょう。
旧耐震基準の物件は買取が現実的な選択肢になる
耐震補強にかける資金がない、管理組合で改修を決められない、仲介で買主が見つからないという場合は、買取を検討できます。
買取は価格だけを見ると仲介より低くなる傾向があります。
一方で、工事費と保有期間を抑え、物件の状態に応じた契約条件で売却できる点に価値があります。
補強できない旧耐震基準の物件は買取を検討する
次のような状況では、仲介だけで長期間待つより、買取査定も同時に取ると判断しやすくなります。
- 耐震診断や耐震補強の費用を先に用意できない
- 工事費をかけても売却価格で回収できる見込みが薄い
- マンションの管理組合に耐震改修の予定がない
- 相続した物件が遠方にあり、管理を早く終えたい
- 仲介で一定期間売り出しても具体的な買主が現れない
買取の相談では、建築確認の資料がないことや、補強していないこともそのまま伝えます。
業者は再販売や活用に必要な費用を見込んで価格を出すため、資料の不足を隠しても条件がよくなるとは限りません。
査定金額と契約条件に納得できなければ、売却を断ることもできます。
仲介を続ける場合の保有費用と比べて検討しましょう。
買取なら残置物や契約不適合責任の負担を減らせる場合がある
監修元のAlbaLinkの買取実務では、契約条件が合えば、家具や家財を残した現況での引き渡しに対応しています。
売主が片付け、耐震補強、リフォーム、解体を行わずに売却できれば、先に費用を用意する必要がありません。
契約不適合責任を免責とする契約にできる場合もあります。
ただし、免責の対象や、売主が知っている不具合の告知は別に確認が必要です。
買取業者によって、引き取れる残置物、費用負担、引き渡し日、免責条項は異なります。
「全部そのままでよい」と思い込まず、査定書と契約書で確認してください。
査定では「売主が引き渡しまでに行う作業」「売却代金から差し引く費用」「引き渡し後も残る責任」をセットで確認します。
買取価格が仲介相場より安くなる理由を知る
監修元の実務では、旧耐震の物件の買取価格は、仲介で成約が見込まれる相場のおおむね6~8割程度となる傾向があります。
これは全国一律の成約統計や、査定額を保証する数字ではありません。
買取業者は、購入後の耐震改修、修繕、残置物処分、税金、再販売期間、販売リスクを負担します。
こうした費用を見込むため、一般の買主へ仲介で売却する価格より低くなります。
立地の需要が弱い、再建築できない、権利関係が複雑などの事情があれば、目安を下回ることや買取できないこともあります。
反対に、土地需要が高く、建物の管理状態がよければ評価が上がる場合があります。
| 比較項目 | 仲介で売却 | 買取で売却 |
|---|---|---|
| 価格 | 市場価格での成約を目指す | 仲介相場より低くなる傾向 |
| 期間 | 買主探しと融資審査に時間が必要 | 条件が合えば最短数日~数週間 |
| 事前費用 | 修繕・片付けを求められる場合がある | 現況で対応できる場合がある |
| 契約条件 | 一般の買主と個別に調整 | 免責や残置物の扱いを業者と調整 |
比較するときは、提示額から売却前の工事費、仲介手数料、保有費用を差し引きます。
手残りと、いつ管理を終えられるかの両方で選びましょう。
旧耐震基準に強い買取業者は実績と条件で見極める
買取業者を選ぶときは、旧耐震基準や築古の物件を扱った実績、購入後の活用方法、査定額の根拠を確認します。
マンションと戸建てでは必要な調査が異なるため、同種の事例があるかも聞きましょう。
高い査定額だけで決めず、その金額がどの資料と条件を前提にしているか、契約までに減額となる可能性があるかを確認します。
残置物処分費や登記費用など、売主負担となる項目も書面で比べてください。
複数社を比較する場合も、同じ資料と同じ引き渡し条件で査定を依頼すると、価格差の理由が分かります。
信頼できる一社を選ぶ基準は、金額の高さだけでなく、分からない点や不利な条件まで説明できることです。
口頭の最高額ではなく、物件調査後の価格、減額条件、売主負担、契約不適合責任の範囲を確認してから売却先を決めましょう。
旧耐震基準の物件売却でよくある質問
- 旧耐震の物件でも住宅ローンは使える?
-
利用できる場合があります。
金融機関や商品により、担保評価、耐震性、築年数などの審査条件が異なります。
フラット35では、建築確認日が1981年5月31日以前の物件も、耐震評価基準を含む所定の技術基準に適合し、適合証明書を取得できれば対象となり得ます。
買主が利用する金融機関へ事前に確認してください。
- 旧耐震は耐震補強しないと売れない?
-
補強していない物件も売却できます。
立地と価格が合えば現況で仲介に出せますし、築古物件を扱う買取業者へ売却する方法もあります。
補強する場合は、工事費を売却価格の上昇分で回収できるかを確認します。
補助金を利用するなら、着工前に申請条件を調べましょう。
- 旧耐震マンションと戸建てで売り方は違う?
-
異なります。
マンションの共用部分は1人で耐震改修を決められないため、管理組合の診断結果、修繕計画、積立金などを確認して現況での売却を検討します。
戸建ては所有者が補強や解体を選べます。
ただし、再建築不可の土地では先に解体すると売却しにくくなるため、古家付きと更地の査定を取ってから判断します。
- 旧耐震の物件はそのままの状態でも売れる?
-
売却できます。
仲介では、耐震診断や修繕履歴、確認できていない事項を開示したうえで買主を探します。
買取では、契約条件が合えば残置物を残した現況で引き渡し、契約不適合責任を免責とする契約にできる場合があります。
対応範囲は業者ごとに確認が必要です。
- 旧耐震の物件はいくらで売れる?
-
立地、土地価値、建物の状態、耐震診断・補強の有無、マンションの管理状況によって変わります。
旧耐震基準だけを理由に一律の値引き率は決められません。
監修元の買取実務では仲介相場の6~8割程度が一つの目安ですが、全国一律の数字ではありません。
現況の仲介査定と買取査定を取り、必要費用を差し引いた手残りで比較してください。
まとめ|旧耐震基準の物件も条件に合う方法で売却できる
旧耐震の物件は売却できます。
ただし、買主の住宅ローン、耐震性の資料、修繕費、マンションの管理状況などを確認しないまま、新しい物件と同じ条件で売り出すと苦戦しやすくなります。
最初に建築確認日と手元の書類を確認し、現況での仲介査定、耐震補強や解体にかかる費用、買取価格を比べましょう。
マンションは管理組合の資料、戸建ては接道と再建築の可否も重要です。
高く売れる可能性ではなく、費用と保有期間を差し引いた手残りで売却方法を選ぶことが、損を防ぐポイントです。
補強費を用意できない場合や、仲介で買主が見つからない場合は、旧耐震の物件を扱う買取業者へ現況で相談できます。
資料がない、不具合があるという状況も含めて伝え、査定額と契約条件を確認してください。


