相続した空き家を売りに出したのに、何か月たっても内見の連絡すら来ない。
その間も固定資産税と管理の手間だけがのしかかる。そんな行きづまりを感じていませんか。
空き家が売れない背景には、立地や建物の状態、価格設定など、いくつかの理由があります。
理由が分かれば、値下げ・買取・譲渡など、ご自身のケースに合った手放し方が見えてきます。
ご自身の状況に合わせて、気になる項目からご覧ください。
空き家が売れない主な原因は立地の需要の低さにある
空き家が売れない原因を考えるときは、まず「買い手が求める条件と合っているか」に目を向けてみましょう。
立地・老朽化・再建築不可・価格設定・境界の5つが主な要因です。
まずは、どの条件が買い手にとっての障害になっているかを確認しましょう。
下の表で、ご自身の物件に当てはまる条件を確認できます。
| チェック項目 | 当てはまると売れにくい状態 |
|---|---|
| 立地 | 駅やスーパーから遠い/過疎化が進む地域にある |
| 築年数・状態 | 築年数に加え状態を確認/雨漏り・シロアリなど傷みが目立つ |
| 権利・法規制 | 再建築不可(壊すと建て替えできない)/境界が未確定/共有名義 |
| 価格 | 近隣の成約事例より高く売り出している |
複数に当てはまるほど、一般の買い手が現れにくくなります。
とはいえ、当てはまったからといって手放せないわけではありません。
原因ごとに打つ手は変わるため、順に見ていきましょう。
相場が成立しない地域では値下げしても売れない
「相場より安くすれば売れるはず」と考えがちですが、空き家では必ずしもそうなりません。
そもそも相場という言葉が成り立つのは、似た物件の取引事例が積み上がり、買いたい人が一定数いる場合です。
需要の少ない地域の空き家では、この前提が崩れています。
取引事例が乏しい地域では、値付けの基準になる相場をつかめないこともあります。
都市部の人気エリアなら相場より高く売れることもある一方で、地方や郊外では、どんなに安くしても買い手がゼロということも実際にあります。
まずは近隣の成約事例や問い合わせ状況を不動産会社に確認し、一般の買い手が見込めるかを判断します。
立地が悪く生活に不便な空き家は買い手が集まらない
自宅として購入する人は、その家での日々の暮らしを考えて物件を選びます。
そのため、通勤・通学・買い物のしやすさが買い手の数を大きく左右します。
最寄り駅から遠い、周辺に商業施設がない、公共交通が乏しいといった立地では、買い手の母数そのものが小さくなります。
とくに人口減少が進む地域では、家が余っている状態のため、多少安くしても新たな買い手が現れにくいのが実情です。
立地が要因の場合は、買い手を一般消費者に限定しない売り方も視野に入れる必要があります。
老朽化やシロアリ被害で入居前に修繕費がかかる
築年数が古く傷みの進んだ空き家は、買い手にとって「購入後にさらにお金がかかる物件」に映ります。
雨漏り、シロアリ被害、水回りの劣化などがあると、住み始める前にリフォーム費用を見込まなければなりません。
フルリフォームは、広さや工事範囲によって数百万円単位になることもあります。
買い手からすれば、物件価格に加えてこの負担がのしかかるため、たとえ価格が安くても敬遠されがちです。
人が住まない家は換気や通水、補修が行き届かず、傷みが進むことがあります。
売れない期間が延びるほど傷みが進み、必要な修繕費が増える可能性もあります。
再建築不可の空き家はローンの制約で買い手が限られる
再建築不可物件とは、今ある建物を取り壊すと、新しく建て替えられない土地・建物のことです。
たとえば、建築基準法上の接道義務を満たさない土地が該当します。
接道義務は、都市計画区域等で、敷地が原則として建築基準法上の道路に2m以上接するという決まりです。
道路の幅員は原則4m以上ですが、4m未満でも指定された道路などの例外があります。
再建築できるかどうかは、自治体の建築担当窓口に確認しましょう。
再建築不可の空き家が売れない理由の一つは、住宅ローンを使いにくい点です。
建て替えができない土地は担保評価や融資条件に制約があり、購入資金を用意できる買い手が限られます。
また、融資の可否は金融機関や物件の条件によって異なります。
結果として買い手層が極端に狭まり、仲介では長期間動かないことが多くなります。
再建築不可の空き家が売れない場合は、こうした物件を専門に扱う買取業者への相談が選択肢になります。

売り出し価格が需要に対して高いと反応がない
内見も問い合わせもまったく来ない場合、売り出し価格が需要に対して高すぎる可能性があります。
買い手は似た物件と見比べるため、周辺の成約価格から外れていると候補から外されてしまいます。
需要のある都市部なら、1割程度の値引きで反応が出ることもあります。
「下げれば売れる」と一律に考えず、そもそも買い手がいるエリアなのかとあわせて判断することが大切です。
土地の境界が未確定だと売れない原因になることがある
土地の境界が隣地とはっきり定まっていない空き家も、売却でつまずきやすい物件です。
境界が不明確だと、購入後に隣地とのトラブルに発展するおそれがあり、買い手が敬遠します。
境界が不明確な場合は融資の審査で確認を求められることもあるため、金融機関ごとの条件を確認する必要があります。
境界を確認できる資料が不足している場合は、測量の必要性を土地家屋調査士に相談します。測量が必要なら、費用と時間も見込みます。
ただし、こうした費用は必ずしも売主が負担するとは限りません。
買取業者のなかには、境界が未確定のままでも買い取るケースがあります。
売れない空き家を持ち続けると年々コストがかさむ
売れない空き家を持ち続けると、固定資産税や管理費が毎年かかり続けます。
さらに、特定空家等や管理不全空家等として勧告を受けると、土地の税負担が増える可能性があります。
放置する年数が延びるほど、維持費と将来の解体費が積み上がり、総額は数百万円規模に達することもあります。
空き家が売れないからと持ち続ける場合も、「毎年いくらかかるか」「いつまで負担できるか」を考えておきましょう。
空き家は使わなくても固定資産税と管理費が毎年かかる
毎年1月1日時点の所有者に固定資産税が課され、地域によっては都市計画税もかかります。
以下のモデルでは税率をそれぞれ1.4%、0.3%と置きます。
税金以外にも、遠方の空き家なら見回りの交通費、庭の草刈り、火災保険料などがかかります。
たとえば、土地の固定資産税評価額500万円・建物200万円の木造戸建てをモデルにすると、次のような年間負担が考えられます。
| 費用項目 | 年間の目安 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 約5万円 |
| 管理費(見回り・草刈り・保険など) | 約5~10万円 |
| 合計 | 約10~15万円/年 |
※住宅1戸で敷地全体が200㎡以下の小規模住宅用地とし、土地の課税標準を固定資産税は6分の1、都市計画税は3分の1で計算すると、税額は約5.1万円です。
家屋の減額・土地の負担調整・自治体独自の減免は考慮していません。管理費は実務上の目安で、地域や管理内容によって変わります。
「使っていない家に毎年十数万円を払い続ける」という状態が、売れないあいだずっと続くことになります。
特定空家等の勧告を受けると土地の税負担が増える
特定空家等とは、そのまま放置すると倒壊等の危険があるなど、周辺への影響が大きい状態にある空き家等を指します。
著しく保安上危険になるおそれがある、著しく衛生上有害になるおそれがある、適切な管理がなく著しく景観を損なっているなどの状態が、判断の対象です。
特定空家等に該当しただけで、直ちに税負担が増えるわけではありません。
市区町村から勧告を受けると、その敷地は住宅用地の特例の適用対象から外れます。税額への反映は1月1日時点の状況などに基づいて判断されます。
住宅が建つ土地には「住宅用地の特例」があります。住宅1戸につき200㎡までの部分は、固定資産税の課税標準額が価格の6分の1になります。
勧告を受けると、この特例の対象から外れます。ただし、負担調整措置なども関わるため、実際の税額がそのまま6倍になるとは限りません。
市区町村から助言・指導を受けたら、必要な管理や改善内容を確認して対応しましょう。
放置10年で維持費と解体費は数百万円規模になりうる
先ほどの地方の木造戸建てモデルで、10年間持ち続け、最後に解体するケースを積み上げてみます。
| 期間 | 維持費の累計 | 解体まで行った場合の総額 |
|---|---|---|
| 1年 | 約10~15万円 | ― |
| 5年 | 約50~75万円 | ― |
| 10年 | 約100~150万円 | 約250~360万円 |
※解体費は付帯工事や廃材処分を含めた総額の目安として、木造30坪を坪5~7万円で試算。前提を置いた概算です。
木造の解体費は、本体工事で坪3~5万円程度、付帯工事や廃材処分を含めた総額では坪5~7万円程度、30坪なら150万~210万円ほどが目安です。建物の状態、立地、工事範囲によって金額は変わります。
このモデルでは、売れないまま10年間持ち続け、最後に解体すると、維持費と解体費の合計は約250万~360万円になります。
売れないまま保有を続ける場合は、想定する保有期間の維持費と、手放す際の費用を合わせて比較しましょう。
買取なら、解体や修繕をしないまま手放せるケースがあります。

倒壊や設備落下で近隣に損害賠償を負うことがある
老朽化した空き家を放置すると、金銭的な負担だけでなく、周囲への被害という別のリスクも生じます。
屋根瓦や外壁が落下して通行人にけがをさせたり、台風で建物が倒壊して隣家を壊したりすれば、所有者が損害賠償を求められる可能性があります。
民法第717条では、建物等の設置・保存の欠陥で他人に損害が生じた場合、まず占有者が賠償責任を負い、占有者が必要な注意をしていたときは所有者が責任を負うと定めています。
売れない期間も、外壁や屋根、塀などの状態を確認し、危険があれば補修や立入防止などの対応が必要です。
金銭面だけでなく精神的な負担も大きくなります。
管理不全空家も税優遇の解除対象に加わった
2023年12月施行の改正空家等対策特別措置法により、「管理不全空家等」への指導・勧告制度が設けられました。
適切な管理が行われておらず、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれがある状態を指します。
特定空家等だけでなく、管理不全空家等も勧告を受けると、住宅用地の特例の適用対象から外れます。
管理の手が回らない場合は早めに売却や管理委託を検討し、引渡しまで必要な管理を続けましょう。
売れない空き家を処分したいときの7つの対処法
売れない空き家を処分する方法は、主に7つあります。
- 価格の見直し
- 不動産会社の変更
- 買取
- リフォーム
- 更地化
- 隣地への打診
- 空き家バンクへの登録
まずは全体像を表で確認しましょう。
| 対処法 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 価格の見直し | 需要はあるが割高な物件 | 地方は下げても売れないことがある |
| 不動産会社の変更 | 販売活動が弱いと感じる場合 | 空き家に強い会社を選ぶ |
| 買取 | 早期に手放したい場合 | 買取実務の目安は仲介の6~8割程度(後述) |
| リフォーム | 少額で印象が改善する物件 | 費用が回収できないことがある |
| 更地化 | 建物に価値がなく土地に需要がある場合 | 解体費と固定資産税増に注意 |
| 隣地へ打診 | 隣地所有者に拡張ニーズがある場合 | 相手次第で成立しない |
| 空き家バンク | 移住需要のある地域 | 仲介・支援内容は自治体によって異なる |
内見の申し込みがあるなら売り出し価格を見直す
内見の申し込みがある程度あるのに成約しない場合は、価格が需要に対してわずかに高いだけかもしれません。
周辺の成約事例を調べ、買い手が「これなら」と思える水準まで見直すことで動き出すことがあります。
ただし、前述のとおり値下げの効果は地域差が大きいのが実情です。
「いくらまで下げれば売れるのか」だけでなく、「下げれば買う人がいるエリアなのか」を先に見極めましょう。
空き家の取り扱いに慣れた不動産会社へ変更する
売れない状態が続く場合、依頼している不動産会社の販売活動が物件に合っていない可能性があります。
活動状況は半年を待たずに確認しましょう。
築古住宅や再建築不可物件は、購入候補者の探し方や条件の説明に経験が求められます。取扱いに慣れた会社に変えることで状況が変わることがあります。
よく「複数の会社に査定を出して比較する」とすすめられますが、大切なのは数を集めることではなく、その空き家をきちんと売る力のある一社を見つけることです。
なお、ここで言う「不動産会社」には、買い手を探して仲介する会社と、自ら買い取る買取業者の両方があります。
売れないときは、販売を任せる仲介と、直接売る買取の条件を分けて確認しましょう。
専門の買取業者に現状のまま買い取れるか聞いてみる
買取とは、不動産会社が買主となって直接空き家を買い取る方法です。
一般の買い手を探す仲介と違い、買主を探す期間がいらないのが買取の特徴です。一方で、価格は仲介より下がる傾向があります。
空き家の場合、買取価格は仲介で売れる価格のおおむね6~8割程度が目安となります。
買主が業者のため、一般の買い手がつかない地方・再建築不可・老朽物件でも買い取れるケースがあります。
条件が整えば、早ければ数日から1か月ほどで現金化できる場合もあります。引渡しや入金の時期は、査定の際に確かめておきましょう。
傷んだ建物や家財をそのまま引き受けてもらえるなら、解体・修繕・片づけを売主が手配せずに済みます。
ただし、費用が買取価格に反映されることもあるため、登記や税金も含め、最後に手元に残る金額で比べることが大切です。
仲介と買取を比較するときは、売却価格だけでなく、引渡し時期と諸費用を差し引いた手取りを確認しましょう。
最低限のリフォームやハウスクリーニングで印象を上げる
室内の傷みや汚れが原因で内見時の印象が悪い場合、最低限のリフォームやハウスクリーニングで反応が変わることがあります。
ハウスクリーニングは戸建てでおおむね10~20万円程度が目安です。広さや汚れ、作業範囲によって変わるため、見積もりで確認しましょう。
ただし、大規模なリフォームには注意が必要です。
数百万円かけて改装しても、その費用を上乗せした価格で売れるとは限りません。
かけた費用が売却価格の上昇分を上回れば、かえって損をすることになります。
必要以上の工事を避けるためにも、修繕の目的と見積もりの内訳を確認しましょう。
工事をする前に「本当に売却価格に反映されるのか」を冷静に確認し、迷う場合は現状のまま売る選択肢と比べて判断しましょう。
土地に需要があるなら建物を解体して更地にしてから売る
建物自体に価値がなく、土地に需要がある場合は、建物を解体して更地にしてから売る方法があります。
古い建物があると買い手が解体費を気にして敬遠しますが、更地にすれば土地として検討してもらいやすくなります。
一方で、解体には注意点が2つあります。
1つは費用です。
工事条件で変わりますが、木造なら付帯工事を含めた総額で坪5~7万円程度、30坪で150万~210万円ほどが目安です。
もう1つは税金です。
解体して住宅用地の特例から外れると、土地の税負担が増える可能性があります。毎年1月1日時点の状況などで判断されるため、引渡し時期と合わせて確認します。
解体しても売れない可能性があるため、工事前に更地の需要を確認しましょう。
現状売却と更地売却それぞれの価格から、解体費・税金・諸費用を差し引いた手取りで比較します。
土地の需要が読めない場合は、解体せずに現状のまま売れる方法とあわせて検討することをおすすめします。
不動産会社を通して隣地の所有者に売却を打診してみる
意外な買い手候補として、隣の土地の所有者がいます。
隣地の所有者にとっては、自分の土地を広げられる、日当たりや駐車スペースを確保できるといったメリットがあるため、一般の買い手より前向きに検討してくれることがあります。
とくに、狭い土地や再建築不可の土地は、隣地と一体になることで価値が上がるケースもあります。
単独では売れなかった土地が、隣地所有者にとっては魅力的に映ることもあるのです。
ただし、相手にニーズがなければ成立しないため、確実な方法ではありません。
打診する際は、直接持ちかけると価格交渉がこじれることもあるため、不動産会社を通じて話を進めると円滑です。
空き家バンクに登録して移住者への需要がないか探る
空き家バンクとは、自治体が移住希望者などに向けて空き家の情報を掲載する仕組みです。
地方への移住需要を取り込める可能性があり、登録は無料の自治体が多いため、選択肢の一つにはなります。
空き家バンクの支援内容は、自治体によって異なります。
協力する不動産会社が、見学や交渉、契約を仲介する場合もあります。
登録しても売れない場合は、情報が更新されているか、問い合わせが来ているかを確認しましょう。
空き家バンクは「登録すれば売れる」ものではなく、他の方法と並行して使う補助的な手段と位置づけるのが現実的です。
【状況別】空き家が売れない原因に合う手放し方
どの手放し方が向いているかは、まず「そのエリアに一般の買い手がいるか」が最も大きな分かれ道になります。
そのうえで「建物と土地の事情」「急ぎ度」を重ねて考えます。
ここでは、売れずに困りやすい5つのケースごとに、進め方の目安を整理します。
| あなたの状況 | 検討する方法 |
|---|---|
| 田舎で買い手がつかない | 買取・売却以外の処分 |
| 再建築不可で断られた | 専門の買取業者 |
| 老朽化が激しい | 現状のまま買取 |
| 親族と意見が割れている | 話し合い・権利関係の確認、持分買取 |
| 空き家バンクでも売れない | 掲載・反響の確認、買取なども比較 |
田舎で買い手がつかない空き家は買取か処分を軸に選ぶ
過疎化が進む地域の空き家は、一般の買い手を見つけるのが特に難しいケースです。
人口が減り家が余っている地域では、価格を下げても買い手が現れず、何年待っても売れないこともあります。
ここは正直にお伝えすべき点です。
こうした地域では、一般の買い手を前提とした仲介にこだわらず、業者が直接買い取る買取や、売る以外で手放す方法を軸に考える方が現実的です。
空き家が仲介で売れる見込みが薄いなら、待ち続ける前に別の方法も確かめておきましょう。
再建築不可で仲介に断られた空き家は専門買取が選択肢
再建築不可の空き家は、一般の不動産会社(仲介)から「うちでは扱えない」と断られることが少なくありません。
建て替えができず住宅ローンも使いにくいため、仲介で一般の買い手を探すのが難しいからです。
こうした物件で売れない場合は、再建築不可を専門に扱う買取業者に相談できます。
専門業者は、リフォームして賃貸に出す、隣地とまとめて活用するなど、一般の買い手にはない出口を持っているため、仲介で売れない物件でも買い取れることがあります。
老朽化で売れない物件は現状のままの売却も比較する
雨漏りやシロアリ被害などで傷みが激しい空き家は、「直してから売るべきか」で迷いがちです。
リフォーム費用が売却価格の上昇分を上回るなら、無理に直さず現状のまま売る方が手元に残るお金は多くなります。
とくに需要の低い地域では、いくらお金をかけて改装しても、その分を価格に上乗せして売るのは困難です。
傷んだ空き家でも、現状のまま買い取る条件で合意できれば、売主が先に修繕費をかけずに手放せます。
「直さないと売れない」と思い込む前に、そのままで引き取ってもらえる方法を検討してみてください。
相続した実家で親族の意見が割れて動けない
相続した実家が、兄弟や親族との共有名義になっていて、意見が割れて動けないケースもあります。
「売りたい人」と「残したい人」がいると話がまとまらず、売れないまま保有が続きがちです。
共有名義の不動産は、原則として共有者全員の同意がなければ全体を売却できません。
ただし、自分の持分だけであれば、他の共有者の同意なしに売却できます。
持分のみを買い取る業者もあるため、話し合いが進まない場合の選択肢になります。

空き家バンクでも売れない場合は売り方を見直す
登録したものの、問い合わせがないまま時間が過ぎている場合もあります。
登録後に売れないままなら、まず掲載情報と問い合わせ状況を確認することがおすすめです。
自治体や協力する不動産会社に、どこまで支援してもらえるかを聞いてみましょう。
また、掲載内容を見直しても売れないのであれば、買取など別の方法を検討するタイミングです。
一般の買い手を待つのではなく、業者による買取や、売る以外の手放し方に切り替えることを検討しましょう。
掲載の見直しで改善できるのか、買取なども検討するのか。反響と希望する期限をもとに、次の手を決めることも大切です。
どうしても空き家が売れないときは時期から次の手を見直す
空き家が売れないときは、やみくもに値下げや工事をする前に、反応を見ながら次の手を決めましょう。
見直す時期の目安は、次のとおりです。
- 売り出しから3か月ほど:価格・写真・掲載内容と、問い合わせや内見の反応を確認する
- 半年ほど動きがない:仲介を続ける見込みと、買取の条件を比較する
- 急ぐ事情がある:3か月・半年を待たず、現状で買い取ってもらえるかを相談する
これは販売方針を見直すための目安です。相続放棄などの法的な期限とは別なので、期限のある手続きは先に確認してください。
大切なのは、「いつまでに反応がなければ次の手に移るか」をあらかじめ決めておくことです。
期限を決めずに待ち続けると、売れないまま維持費だけがかさんでいきます。
3か月を目安に売れない原因と販売活動を確認する
一般の買い手が見込めるエリアなら、まずは仲介で売る努力をする価値があります。
売り出しから3か月ほどを一つの目安に、内見や問い合わせの反応を見ましょう。
反応の有無は、内見の申し込み件数を目安にすると分かりやすくなります。
売り出して1~2か月たっても内見が0件、あるいは問い合わせすらない場合は、価格だけでなく、写真や掲載内容、販売活動も確かめてみましょう。
反応が乏しければ、価格が需要に合っているか、不動産会社の販売活動が適切かを見直します。
売れない原因が価格や見せ方にあり改善が見込めるなら、仲介を続ける期間を決めて反応を確認します。
半年動かなければ買取への切り替えを検討する
価格や販売活動を見直しても半年ほど動きがないなら、仲介を続ける見込みと、買取で手放す条件を比べる時期です。
半年を一つの区切りとして、出口の切り替えを前向きに考えましょう。
手間や時間をかけたくないなら最初から買取が向く
遠方に住んでいて何度も足を運べない、高齢で手続きの負担が大きい、早く現金化したいといった事情がある場合は、最初から買取を選ぶのも合理的です。
買取なら、条件が整えば早ければ数日から1か月ほどで手放せる場合があります。
一般の買い手向けの内見対応や販売活動も不要ですが、査定や契約の手続きは必要です。
とくに遠方で管理に通えない場合は、売れるのを待つ間も維持費と交通費がかさむため、早い段階での買取が結果的に負担を抑えることもあります。
希望する手取りと引渡し時期を伝え、その条件に合う買取が可能か相談しましょう。
売れないまま放置すると維持費の負担が続く
売れない期間も、固定資産税・管理費は毎年かかります。
さらに、特定空家等や管理不全空家等の勧告を受けると、土地の税負担が増える可能性もあります。
売れずに悩む時間そのものも負担になります。
手放すまでの管理方法と、次に売却方針を見直す時期を決めておきましょう。
売れない空き家は売却以外で手放す方法もある
買取でも引き取り手が見つからないときは、売る以外で手放す道もあります。
無償譲渡・寄付・相続土地国庫帰属制度などが選択肢です。相続放棄は、相続するかを判断する段階の手続きとして分けて確認しましょう。
寄付は相手の受け入れが必要で、国庫帰属は建物付きの土地では使えません。
相続放棄にも期限があり、放棄後の保存義務が残る場合があります。
| 手放し方 | 主な条件 | 費用の目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 無償譲渡 | 引き取り手がいること | 登記費用など | 受贈側に税がかかることがある |
| 寄付 | 相手が受け入れること | ケースによる | 断られることが多い |
| 国庫帰属 | 更地であることなど要件多数 | 審査手数料・負担金など | 建物付きは対象外 |
| 相続放棄 | 自己のための相続開始を知って原則3か月以内 | 手続き費用 | 被相続人の財産・借金全体が対象 |
個人や隣人へ無償譲渡して手放す
売れない空き家でも、「タダでもいいから使ってほしい」という無償譲渡なら、引き取り手が見つかることがあります。
隣地の所有者、近隣で土地を探している人、活用したい知人などが候補になります。
ただし、個人から個人へ無償で不動産を渡すと、受け取った側に贈与税がかかることがあります。
また、名義変更の登記費用も発生します。
譲る相手が決まったら、税金や手続きの費用を誰がどう負担するかを事前に話し合っておくことが大切です。
自治体や法人への寄付は受け取られないこともある
「自治体に寄付すればよいのでは」と考える方は多いのですが、実際にはそう簡単ではありません。
自治体は、その土地に公共の使い道がなければ、寄付を受け付けないのが一般的です。
寄付を受ければ管理の手間や費用が自治体側に生じるため、使い道のない土地を進んで引き取る理由がないのです。
法人や町内会などへの寄付も同様に、相手にメリットがなければ成立しません。
法人への贈与では、贈与した側に時価で売却したものとして譲渡所得の課税が生じる場合もあります。寄付先と費用・税金の扱いを確認しましょう。
相続土地国庫帰属制度は建物がある土地は使えない
相続土地国庫帰属制度は、相続等で取得した土地を、一定の要件と負担金のもとで国に引き取ってもらえる制度です。
2023年に始まった比較的新しい制度で、売れない土地の出口として注目されています。
建物がある土地は申請できません。ただし、更地にしても他の要件を満たす必要があるため、解体前に法務局へ相談しましょう。
また、担保権が設定されている、境界が不明確、管理に過大な費用がかかるといった土地も対象外です。
申請には、土地1筆につき審査手数料1万4,000円がかかります。承認後は、10年分の標準的な管理費をもとにした負担金も必要です。
負担金は基本20万円ですが、市街化区域や用途地域内の宅地などは、面積に応じて計算されます。

出典:法務省:相続土地国庫帰属制度の概要
出典:法務省:相続土地国庫帰属制度に関するQ&A
相続放棄は原則3か月以内で、相続財産全体が対象
相続放棄は、亡くなった人の財産も借金も、すべて引き継がないと家庭裁判所に申し出る手続きです。
原則として、亡くなったことと、それにより自分が相続人となったことを知った時から3か月以内に申述します。
この期限は意外と短く、迷っているうちに過ぎてしまうこともあります。
相続放棄をすると、不要な不動産だけでなく、被相続人の預貯金などプラスの財産も引き継げなくなります。
空き家だけを選んで手放すことはできないため、他に価値のある財産がある場合は慎重な判断が必要です。
出典:裁判所:相続の放棄の申述
相続放棄時に占有していた財産は保存義務が残る
「相続放棄をすれば管理から完全に解放される」とは限りません。
2023年4月施行の改正民法では、相続放棄の時点で財産を「現に占有している」人に保存義務が残るとされています。
相続人や相続財産清算人へ引き渡すまでは、自分の財産と同じ注意をもって保存する必要があります。
実家を事実上支配・管理していた場合などは、この義務が残る可能性があります。占有に当たるかは個別の事情で判断されます。
相続放棄は「放棄すれば終わり」という単純な手続きではありません。
放棄後の保存や引渡しが必要かも含め、期限内に確認しましょう。
空き家を手放す前に確認する注意点と税の特例
売却前に、相続登記の状況・境界資料・共有者の意向を確認しておくと手続きがスムーズです。
相続した空き家を売るなら、譲渡所得から最大3000万円を差し引ける特別控除の活用も検討しましょう。
買主への所有権移転前に相続登記を済ませる
買主への所有権移転登記に先立ち、相続人名義への登記が必要です。登記の準備と売却の相談を早めに進めましょう。
相続登記は2024年4月1日から義務化されました。
相続による所有権の取得を知った日から原則3年以内の申請が必要で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となります。
施行前から取得を知っている未登記の不動産は、原則2027年3月31日が期限です。
手続きには戸籍謄本などの書類集めが必要で、時間がかかることもあるため、売却を考え始めたら早めに着手しましょう。
土地の境界を確定しておくと買主が安心する
土地の境界が隣地とはっきりしていないと、買い手は購入後のトラブルを心配します。
境界の資料がそろっていれば、買い手が土地の範囲を確認しやすくなります。
融資や売買契約で求められる資料は、金融機関や契約条件によって異なります。
境界を確認できる資料が不足している場合は、土地家屋調査士に測量の必要性と費用を相談しましょう。
ただし、この費用は必ず売主が負担しなければならないわけではありません。
買取業者のなかには、境界が未確定のままでも買い取るところがあり、その場合は測量の手間や費用を省けることがあります。
共有名義の物件全体を売るには共有者全員の同意が必要
空き家が複数人の共有名義になっている場合、その空き家全体を売るには共有者全員の同意が必要です。
相続した実家が兄弟の共有になっているケースなどで、よくつまずくポイントです。
共有持分が確定していれば、自分の持分だけを他の共有者の同意なしに売却できます。
遺産分割が済んでいない場合は同じように扱わず、権利関係を確認してから進めましょう。
持分を専門に買い取る業者もあるため、話し合いがまとまらないときの出口になります。

空き家の3000万円特別控除は売却期限と適用条件を確認
相続した空き家を売却し、一定の要件を満たす場合、譲渡所得から最大3000万円を差し引ける特例があります。
売却益にかかる譲渡所得税を大きく減らせるため、使えるかどうかで手取りが変わります。
主な条件は、次のとおりです。
- 1981年5月31日以前に建てられ、区分所有建物登記がされていないこと
- 相続開始直前に、原則として亡くなった方が1人で住んでいたこと
- 相続後、居住・賃貸・事業に使っていないことなどの利用条件を満たすこと
- 売却代金が1億円以下であること
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ現行制度では2027年12月31日までに売ること
耐震・解体にも要件があります。2024年以降の譲渡では、売却した年の翌年2月15日までに耐震改修や取壊しを行って要件を満たす方法もあります。
特例のために先に工事をする必要があるかは、契約前に税務署や税理士へ確認しましょう。
2024年以降の売却で、対象の家屋・敷地を相続等で取得した相続人が3人以上の場合、控除額は1人当たり最大2000万円です。相続人全員の人数だけで判断するものではありません。
たとえば、取得費が不明な空き家を1000万円で売った場合でも、この控除を使えれば譲渡所得税がかからずに済むケースがあります。
適用には確定申告と必要書類の提出が必要です。
売れない期間が長引くと期限に間に合わない場合もあるため、売却条件を決める前に税務署や税理士へ確認しましょう。
売れない空き家に関するよくある質問まとめ
- 田舎の空き家はまったく売れないのですか?
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需要が極端に少ない地域では、値下げしても仲介では売れないことがあります。
ただし、専門の買取業者なら現状のまま買い取れるケースもあります。
買取の条件を確認し、売却以外の方法も含めて検討しましょう。
- 空き家バンクに登録すれば売れますか?
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登録だけで売却が決まるわけではありません。
自治体によっては協力する不動産業者が見学・交渉・契約を仲介します。
支援内容と反響を確認し、売れない場合は掲載情報の見直しや買取も検討しましょう。
- ボロボロの空き家は解体してから売るべきですか?
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一概には言えません。現状売却と更地売却それぞれの価格から、解体費・税金・諸費用を差し引いた手取りで比較します。
住宅用地の特例が外れると土地の税負担が増える可能性もあるため、解体前に需要と引渡し時期を確認しましょう。
- 売れない空き家は相続放棄すればいいですか?
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相続放棄は、不要な家だけでなく被相続人の財産・借金全体を引き継がない手続きです。
自己のための相続開始を知った時から原則3か月以内の申述が必要で、相続財産を処分すると放棄できなくなる場合があります。
放棄時に占有していた財産は、引渡しまで保存義務が残る点も確認しましょう。
- 相続した空き家を売ると税金はどうなりますか?
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売却益には譲渡所得税等がかかりますが、要件を満たすと最大3000万円の特別控除を使えます。
2024年以降、対象の家屋・敷地を取得した相続人が3人以上なら1人当たり最大2000万円です。
売却期限は相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ現行制度では2027年12月31日までです。確定申告も必要です。
まとめ|空き家は売れなくても手放す道は残されている
空き家が売れないのは、多くの場合「一般の買い手からの需要が低い」ことが原因です。
立地・老朽化・再建築不可・価格・境界のどれに当てはまるかを見極めれば、打つ手は見えてきます。
売れないまま持ち続ける間も、固定資産税・管理費はかかります。勧告による土地の税負担増も含め、保有する期間の費用を確認しましょう。
価格と販売活動を見直し、反応と希望時期を踏まえて買取も比較します。相続放棄を検討する場合は、売却を進める前に期限と条件を確認してください。
田舎・再建築不可・老朽化など一般の買い手が望みにくい空き家では、無理に仲介にこだわらず、現状のまま買い取ってもらう、あるいは譲渡・国庫帰属といった売る以外の方法も含めて出口を探すことができます。
まずは売り出してからの期間、物件の状態、これまでの問い合わせ・内見件数、希望する引渡し時期を整理しましょう。
相談先には、売却価格と必要な費用、現状のまま引き渡せるかを確認してください。


