「土地の前面道路が私道で、しかも持分がない」。
仲介に出しても売れない、不動産会社に「うちでは扱えない」と断られた、買い手が見つかっても住宅ローンが通らず話が流れた。
私道持分なしの不動産は、この手詰まりに陥りやすい物件です。
しかし、結論から言えば、私道持分なしでも、手放す選択肢は残されています。
売る方法は「持分の取得」「通行掘削承諾書の取得」「買取」の3つが軸です。
とはいえ、実際に売りに出すと「売れない」という壁にぶつかる方が少なくありません。
大切なのは、なぜ売れないのかを切り分け、自分の状況に合った売り方を選ぶことです。
なお、私道に面した土地全般が売れない理由は、次の記事で解説しています。

私道持分なしとは前面道路に権利がない状態
私道持分なしとは、不動産の前面道路である私道の所有権(持分)を一切持っていない状態を指します。
持分の持ち方には共同所有型と相互持合型の2種類があり、自分がそのいずれにも含まれていないか(=持分なしか)は登記事項証明書と公図で確認できます。
私道持分なしとは私道の所有権を1ミリも持たない状態
私道とは、国や自治体ではなく個人や法人が所有している道路を指します。
公道(国・自治体が所有・管理する道路)と違い、私道は所有者の私的な財産です。
自分の土地が私道にしか接していないのに、その私道の所有者に自分が含まれていない場合、「私道持分なし」になります。
この状態だと、道路を通ることや地中の配管工事について、私道の所有者と話をつけなければならない立場になります。
土地や建物そのものは自分の所有物でも、「そこへ出入りするための道」は他人のもの、という状態です。
「持分(もちぶん)」とは、1つのものを複数人で共有するときの各自の所有割合のことです。
私道を10人で均等に共有していれば、1人あたりの持分は10分の1になります。
この持分が「ゼロ」の状態が、私道持分なしです。
私道持分には共同所有型と相互持合型がある
私道持分の持ち方は、大きく共同所有型と相互持合型の2種類に分かれます。
共同所有型とは私道全体を複数人で共有する形、相互持合型とは私道を細かく分筆(土地を複数の筆に分けること)し、各自が自分の区画を単独所有する形のことです。
| 持分の持ち方 | 私道の所有の形 | 持分なしになる例 |
|---|---|---|
| 共同所有型 | 1本の私道全体を、沿道の所有者が持分割合で共有する | 共有者の中に自分の名前がない |
| 相互持合型(分筆型) | 私道を細かく分筆し、各自が自分の区画を単独で所有する | どの区画も自分の名義になっていない |
共同所有型は、1本の私道という「1枚の土地」を、沿道の住民が持分割合に応じて共有している状態です。
たとえば6軒が面する私道を6分の1ずつ持ち合うイメージです。
相互持合型(分筆型とも呼ばれます)は、私道が短冊状やブロック状に分筆され、それぞれの区画を別々の人が単独で所有している状態です。
自分の家の目の前の区画は他人の所有、自分が所有している区画は離れた場所、ということも起こります。
どちらの型でも、私道のどこにも自分の名義がなければ持分なしです。
相互持合型では、自分の区画を持っていても、家の前の区画が他人のものなら、そこを通るために承諾を求められることがあります。
自分が持分なしかは登記事項証明書と公図でわかる
自分が私道持分なしかどうかは、登記事項証明書と公図を取得すれば確認できます。
あいまいなまま売却に進むと、後で「実は持分があった」「思っていた区画と違った」といった食い違いが起きるため、最初に確定させておくことが大切です。
確認の手順は次のとおりです。
法務局で、自分の土地(宅地)と前面私道それぞれの登記事項証明書を取得します。
私道部分の「権利部(甲区)」に記載された所有者に、自分の名前があるかを確認します。
公図(土地の位置関係を示した図面)を取得し、自分の宅地と私道の筆(土地の区画)の位置関係を確かめます。
登記事項証明書は法務局の窓口やオンライン(登記・供託オンライン申請システム)で取得できます。
私道の所有者欄に自分の名前がなければ、持分なしと判断できます。
読み方がわからない場合は、司法書士や、私道・未接道の物件に強い買取業者に見てもらう方法があります。
位置指定道路や2項道路でも持分なしは起こる
私道持分なしは、位置指定道路でも2項道路でも起こり得ます。
「うちは位置指定道路だから大丈夫」と思っていても、その道路の持分を持っていなければ、通行や掘削で同じ問題に直面します。
位置指定道路とは、建築基準法42条1項5号に基づいて特定行政庁(建築行政を担う自治体)がその位置を指定した、幅員4メートル以上の私道のことです。
一方、2項道路は幅員4メートル未満でも建築基準法上の道路とみなされる私道です(同42条2項)。
「建築基準法上の道路として認められているか」と「その私道の持分を持っているか」は、別の問題です。
接道の条件を満たしていても、道路の所有権がなければ、通行や工事のたびに所有者の承諾を求められます。
私道持分なしの不動産が売れない5つの理由
私道持分なしの不動産が売れないのは、通行や掘削で私道所有者の承諾を求められ、住宅ローンも通りにくく、買い手が現金客に絞られるためです。
どれも、買主が「買ったあとに困るかもしれない」と感じて購入をためらう材料で、売れない原因になります。
売れない5つの理由と、買主が受ける影響は次のとおりです。
| 売れない理由 | 買主が受ける影響 | 根底にある権利・制度 |
|---|---|---|
| 通行の承諾がない | 日常の出入りが所有者の意向に左右される | 私道所有者の所有権・通行権 |
| 掘削の承諾がない | 水道・ガスの工事で承諾や承諾料を求められる | 私道所有者の所有権・掘削承諾 |
| 担保評価が低い | 住宅ローン審査が通りにくい | 金融機関の担保評価 |
| 買い手が限られる | 現金購入層しか候補にならず需要が激減 | 住宅ローン不可による市場の縮小 |
| 維持管理でもめる | 補修費や承諾料でトラブルになりやすい | 共有者間の費用負担・承諾料 |
私道の通行承諾がないと買主は安心して家を使えない
私道持分なしの土地を買っても、通行の承諾がなければ、買主はその家に安心して出入りできません。
これが売れない1つ目の理由です。
通行掘削承諾とは、私道を通行し、地中の配管工事のために道路を掘ることを私道所有者が認める取り決めのことです。
持分があれば自分の所有物として当然に通行できますが、持分がない場合は、所有者の承諾を得て通るのが基本です。
公道に出る道がその私道しかない土地(袋地)であれば、民法で周囲の土地を通る権利が認められており、通行そのものを止められることは通常ありません。
ただし、この権利で認められるのは必要な範囲の通行で、車の出入りや工事車両の通行まで当然に含まれるわけではありません。
買主や金融機関が求めるのは「法律上は通れる」ことではなく、争いにならないことを示す承諾書です。
口約束だけだと、所有者が代替わりしたり関係が悪化したりしたときに、「通らせない」と言われるリスクが残ります。
毎日通る道を他人の都合で塞がれるかもしれない家を、買主がわざわざ選ぶ理由はありません。
だからこそ、通行の安定性が担保されていない物件は敬遠され、売れない原因になります。
水道やガスの掘削工事で承諾と承諾料を求められる
私道持分なしの場合、水道やガスの引き込み・交換のために道路を掘る工事では、私道所有者の掘削承諾を求められるのが一般的です。
承諾を得られても、承諾料(掘削料)を求められることがあります。
水道管やガス管は道路の地下を通っているため、老朽化した配管を交換するときや新たに引き込むときには、私道を掘り返す必要があります。
持分がなければ、この工事のたびに所有者への連絡と調整が必要になります。
承諾料は無償のこともあれば、数万円から、工事内容によっては数十万円規模を求められるケースもあり、金額に決まった相場はありません。
買主にとっては、「将来の修繕のたびに、他人とのやり取りとお金が必要になるかもしれない」という負担になります。
リフォームや建て替えを考えている買主ほど、この点を嫌います。
なお、2023年4月施行の改正民法で、水道管やガス管などを他人の土地に設置する権利(設備設置権)が明文化されました。
あらかじめ私道所有者に通知すれば、法律上は承諾がなくても必要な範囲で工事ができ、承諾料を求められても応じる義務はありません。
ただし、所有者に工事を拒まれた場合は裁判で妨害の禁止を求めることになり、買主や金融機関も承諾書を求めるのが通例です。
そのため、承諾書がないと売れない状況は、改正後も大きくは変わっていません。
出典:法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」
担保評価が低く住宅ローンが通りにくい
私道持分なしの不動産は、金融機関の担保評価が低くなりやすく、買主の住宅ローン審査が通りにくいという壁があります。
これが売れない理由の中でも特に大きなものです。
金融機関は、返済が滞ったときに売却して回収できるよう、住宅ローンの対象となる土地・建物を担保に取ります。
しかし持分のない私道に面した土地は、通行や再建築に制約があり、いざというとき売りにくい=担保としての価値が低いと判断されます。
その結果、「融資できない」「融資額を大きく減らす」といった対応になりがちです。
通行掘削承諾書があれば評価が改善し、融資の可能性が上がることもありますが、それでも民間金融機関の審査は厳しめです。
住宅ローンが使えないと、買主は現金で買うしかなくなります。
買い手が現金購入層に限られ候補が激減する
住宅ローンが通りにくいため、私道持分なしの不動産の買い手は現金で購入できる層に限られ、買主候補が激減します。
自己資金が潤沢で現金一括購入ができる人は、わざわざ通行や再建築に不安のある物件を選ぶ必要がありません。
同じ予算を出すなら、権利関係がすっきりした物件を買うのが自然です。
つまり、「現金で買える人」と「あえて訳あり物件を選ぶ人」はほとんど重なりません。
結果として、一般のマイホーム購入者が集まる仲介市場では買い手がほぼ現れず、長期間売れない状態が続きます。
「売り出しているのに問い合わせすら来ない」「何か月たっても売れない」という状態は、この需要の細さが原因です。
維持管理や承諾料をめぐりトラブルが起きやすい
私道持分なしの物件は、私道の補修費用の負担や承諾料をめぐって、所有者や近隣とトラブルになりやすいという問題もあります。
買主はこうした人間関係のリスクも警戒します。
私道の舗装の補修や排水設備の修繕は、所有者が自分たちの費用で行うため、負担割合でもめることがあります。
持分がない場合、「使っているのに負担しないのか」と言われたり、逆に負担を求められても発言権が弱かったりと、立場が不安定になりがちです。
こうした話は、重要事項説明(宅建業者が契約前に買主へ物件の権利関係を説明する手続き)で買主に必ず伝わります。
隠して売ることはできませんし、隠せば後の契約不適合責任(引き渡した物件が契約内容と異なる場合に売主が負う責任)を問われます。
トラブルの火種を抱えた物件だと分かれば、買主はさらに慎重になり、売れない一因になります。
私道の種類によっても持分なしの売れにくさは変わる
同じ持分なしでも、位置指定道路・2項道路・43条但し書き道路のどれに接しているかで、売りにくさは変わります。
種別によって必要な承諾や再建築の可否が異なるためです。
自分の土地がどの種別かを知ると、売り方の見通しが立てやすくなります。
接道種別ごとの違いを表にまとめます。
| 接道の種類 | 持分なしで起きる問題 | 売りやすさの目安 |
|---|---|---|
| 位置指定道路(42条1項5号) | 通行掘削承諾がないと実質使えない | 承諾書が取れれば比較的売りやすい |
| 2項道路(42条2項) | 承諾に加えセットバックの負担が絡む | 中程度(後退部分の扱いで変動) |
| 43条但し書き道路(43条2項) | 建築のたびに行政の再許可が必要 | 仲介では売れないことが多い(再建築の不確実性) |
位置指定道路の持分なしは承諾書の取得が鍵
位置指定道路に接していて持分なしの場合、通行掘削承諾書を取得できるかどうかが売れるかどうかの分かれ目になります。
位置指定道路は、幅員4メートル以上が確保された建築基準法上の道路です。
接道義務(建築物の敷地は幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接しなければならないという建築基準法43条のルール)を満たしているため、再建築そのものは可能なケースが多いのが特徴です。
問題は持分がないことによる通行・掘削の制約だけなので、所有者から次の買主にも引き継げる通行掘削承諾書を取得できれば、売却のハードルは大きく下がります。
持分なしの中では比較的売りやすい種別と言えます。
2項道路の持分なしはセットバックも絡む
2項道路に接している場合は、通行掘削承諾に加えてセットバックの負担も絡むため、売りにくさが一段増します。
2項道路は幅員4メートル未満の道を建築基準法上の道路とみなしたものです。
この道路に面した土地で建て替えるときは、道路の中心線から2メートル後退した線まで敷地を下げる「セットバック」が必要になります。
後退した部分には建物を建てられず、実質的に使える敷地が狭くなります。
つまり2項道路の持分なしは、「通行・掘削の承諾」という共通の問題に加え、「セットバックで敷地が削られる」という二重の負担を抱えます。
後退する面積が大きいほど建てられる家が小さくなり、価格にも響きます。
43条但し書き道路は再許可が必要で売りにくい
43条但し書き道路(正式には建築基準法43条2項の認定・許可を受けた道)に接する土地は、建築のたびに行政の再許可が必要で、持分なしだと特に売りにくくなります。
このタイプは、本来の接道義務を満たさない敷地について、一定の基準を満たす場合に建築審査会の同意などを得て例外的に建築を認めてもらうものです。
許可は建築計画ごとに判断されるため、「次に建て替えるとき再び許可が下りる保証はない」という不確実性が残ります。
再建築できるかどうかが読めない土地は、買主にとっても金融機関にとっても評価が難しく、現金で割安に買う投資家や専門業者が主な買い手になります。
私道の持分がないことまで重なると、一般の仲介市場では売れない可能性が高くなります。

接道種別は役所の道路種別図で確認できる
自分の土地の接道種別は、役所(市区町村の建築指導課など)で道路種別を調べれば確認できます。
「昔から通っている道だから大丈夫」といった思い込みで判断せず、役所の図面で確かめましょう。
確認の手順は次のとおりです。
物件のある市区町村の建築指導課(または道路管理課)に問い合わせます。
「指定道路図」「道路種別図」で前面道路の種別(42条1項◯号・42条2項・43条2項など)を確認します。
自治体によっては、これらの図面をWeb上の地図システムで公開しています。
種別が分かれば、前述の表のどこに自分が当てはまるかが見え、売り方の方針を立てられます。
調べ方が分からないときは、私道や未接道の物件を扱い慣れた買取業者に依頼すると、役所調査もまとめて行ってもらえます。
私道持分なしの不動産を売却する3つの方法
私道持分なしの不動産を売る方法は、①私道所有者から持分を取得する②通行掘削承諾書を取得する③訳あり物件に強い買取業者へ現状のまま売る、の3つが軸です。
手間と時間をかけられるか、すぐに手放したいかで、選び方が分かれます。
3つの方法を比較表にまとめます。
| 売却方法 | 期間の目安 | 価格の傾向 | 手間 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| 持分を取得して売る | 数か月~年単位 | 高くなりやすい | 大(交渉・登記) | 所有者と良好で時間をかけられる人 |
| 通行掘削承諾書を取得して売る | 数週間~数か月 | 中~やや高 | 中(交渉・書面化) | 承諾が得られる関係がある人 |
| 買取業者へ現状のまま売る | 最短数日~数週間 | 仲介より下がる | 小(そのまま売却) | 早く確実に手放したい人 |
- 私道所有者と交渉でき、時間をかけて高く売りたい:持分を取得してから売る
- 持分までは難しいが、承諾なら得られそう:通行掘削承諾書を取得してから売る
- 所有者と交渉できない、仲介では売れない:買取業者へ現状のまま売る
私道所有者から持分を取得してから売る
1つ目の方法は、私道所有者から持分を買い取って「持分あり」の状態にしてから売ることです。
権利関係がすっきりするため、最も高く売れる可能性があります。
持分を取得できれば、通行も掘削も自分の権利として行えるようになり、住宅ローンも通りやすくなります。
買主にとって不安材料が消えるため、一般の仲介市場でも売りやすくなります。
ただし、この方法は所有者との交渉と持分移転の登記が必要です。
持分の代金と登記費用がかかり、交渉がまとまるまでの期間も読めません。
所有者が売ってくれるとは限らず、相手が複数いればそれぞれと交渉しなければなりません。
関係が良好で、時間をかけてでも高く売りたい人に向いた方法です。
通行掘削承諾書を取得してから売る
2つ目の方法は、持分は取得せず、通行掘削承諾書だけを取得してから売ることです。
持分取得より負担が軽く、買主の不安をかなり解消できます。
通行掘削承諾書とは、私道の通行と掘削を所有者が認めたことを書面化し、買主や次の所有者にも引き継げるようにした承諾書のことです。
口約束と違い、書面に「承継条項(権利が次の所有者に引き継がれる旨)」を入れておけば、所有者が代わったときにも引き継ぎを求めやすくなります。
私道の所有者が複数いる場合は、全員分をそろえるのが基本です。
この書面があると、買主は通行・掘削の心配が減り、金融機関の担保評価も改善する余地が生まれます。
注意点は、所有者が承諾してくれるかどうかと、承諾料を求められる場合があることです。
所有者と話ができる関係があるなら、持分を買い取るより少ない負担で進められる方法です。
承諾書に盛り込む項目と取得の手順は、次の記事で解説しています。

訳あり物件に強い不動産買取業者へ現状のまま売る
3つ目の方法は、私道がらみの物件を扱い慣れた買取業者へ、現状のまま売ることです。
承諾の取得や交渉を自分でできない場合でも、手放せる現実的な選択肢になります。
買取とは、不動産買取会社が自ら買主となって物件を直接買い取る方法です。
一般の買い手を探す仲介と違い、業者が直接買うため、通行掘削承諾がそろっていなくても取引が成立する場合があります。
承諾交渉や持分取得を業者側で引き受けてくれるケースもあり、その場合、売主は私道所有者との交渉をせずに済みます。
メリットは、最短数日から数週間で現金化でき、権利関係が整っていなくても売れることです。
一方で、価格は仲介で売る場合より下がるのが一般的です。
「時間と手間をかけてでも高く」なら持分取得や承諾書取得、「多少安くてもすぐ確実に手放したい」なら買取、という選び分けになります。
なお、業者選びでは複数社に査定を出して価格を競わせるより、私道・未接道のような難しい物件の実績が確かな一社を見極めることが大切です。
訳あり物件は会社によって扱えるかどうかの差が大きく、価格だけで選ぶと「契約直前で減額された」といったトラブルにつながることもあるためです。

一般的な売却テクニックは私道持分なしの物件では効果が薄い
「建物を解体して更地にする」「建築プランを提示する」といった一般的な売却テクニックは、私道持分なしの物件では効果が薄いことに注意が必要です。
一般の土地なら、古家を解体して更地にすれば買い手の幅が広がることがあります。
しかし私道の持分がない場合、更地にしても通行・掘削・再建築の制約は何も解決しません。
むしろ解体費が持ち出しになるうえ、建物があるうちは使えた住宅用地の税の軽減が外れ、固定資産税が上がることもあります。
同様に、更地に魅力的な建築プランを描いて見せても、そもそも通行や再建築の権利が不安定なままでは、買主も金融機関も動けません。
先に手をつけるべきは、解体やプランづくりではなく、通行・掘削の権利の整理です。
権利整理を自分で進めるのが難しい場合は、整理ごと引き受けられる買取業者へ現状のまま相談する方が、解体費などをかけずに手放せることもあります。
この優先順位を間違えると、費用だけかさんで売れない、という事態になりかねません。
専門の買取業者が私道持分なしの不動産でも買い取れる理由
買取業者が持分なしでも買い取れるのは、再販の出口を複数持ち、承諾交渉や持分取得を自ら引き受けられるからです。
価格は下がりますが、売主は承諾集めや契約不適合責任の負担を外して早く現金化できます。
再販の出口を複数持つため持分なしでも値がつく
買取業者が持分なしの物件に値をつけられるのは、買い取った後の「出口」を複数持っているからです。
出口とは、仕入れた物件を最終的に誰へどう販売するかという再販ルートのことです。
一般の売主が仲介で売るとき、買い手はほぼ「自分で住むマイホーム購入者」に限られます。
だから住宅ローンが通りにくい物件は、仲介では売れないのです。
一方、買取業者は、権利を整えて再販する、投資家に収益物件として売る、隣地所有者に売る、といった複数の出口を使い分けられます。
出口が複数あるぶん、一般市場では売れない物件にも買取価格を提示できるのです。
買取価格は「出口でいくらで売れるか」から逆算して決まります。
査定のときに「どの出口を想定しているか」を尋ねると、提示額の根拠を確かめられます。
承諾交渉や持分取得を業者が肩代わりできる
買取業者は、売主が自分では進めにくい通行掘削承諾の交渉や持分の取得を、買い取った後に自ら肩代わりできます。
これが、持分がなくても取引が成立する大きな理由です。
私道の所有者との交渉は、個人にとって心理的にもハードルが高いものです。
関係がこじれている、相手が多人数、どう切り出せばいいか分からない——こうした事情で前に進めない売主は少なくありません。
買取業者は、こうした交渉や権利調整を実務として数多く手がけており、売主に代わって承諾の取得や持分の買い増しを進められます。
つまり売主は、「承諾が取れないから売れない」状態のまま物件を手放し、面倒な交渉は業者に委ねることができます。
本記事を監修するアルバリンクでも、同様のケースでは権利が未整理のまま相談に来られることが大半で、整理そのものを引き受ける前提で買取を検討しています。
契約不適合責任の免責で売主の後の負担を外せる
買取では、契約不適合責任を免責(売主が後から責任を問われないようにすること)とする契約にできる場合があり、売主は売った後の負担やリスクを外せます。
個人間の仲介売買では、引き渡した後に私道がらみの問題(通行トラブル、掘削承諾の不備など)が表面化すると、売主が契約不適合責任を追及され、補修費や損害賠償を求められることがあります。
権利関係が複雑な物件では、このリスクが特に気がかりです。
買取業者が買主となり、契約不適合責任を免責とする取り決めができれば、売主は「売った後に蒸し返される」心配から解放されます。
物件の事情を理解したうえで業者が引き受けるため、こうした免責が可能になります。
ただし、売主が知っていて伝えなかった事情は、免責の特約があっても責任を免れません。
売却後も不安を抱え続けなくてよいことは、金銭面だけでなく精神面でも大きなメリットです。
買取は価格が下がる代わりにすぐ現金化できる
買取の最大のトレードオフは、価格が仲介より下がる代わりに、すぐ現金化できることです。
買取価格が下がるのは、業者が権利の整理・再販までのコストとリスク、そして利益を見込んで価格を決めるためです。
どの程度下がるかは、立地・再建築の可否・承諾取得の難易度によって大きく変わり、一律の割合では言えません。
再建築ができて承諾も取りやすい物件なら下げ幅は小さく、再建築が難しく承諾も見込めない物件なら下げ幅は大きくなります。
その代わり、何か月・何年も買い手を待つ必要がなく、最短数日から数週間で現金化できます。
「売れないまま固定資産税と管理の負担が出ていき続ける」状態を早く止められることは、金額差を補って余りある価値になることもあります。
どちらが得かは、物件の需要と、売主がどれだけ早く確実に手放したいかで変わります。
【状況別】私道持分なしで売却に特に困るケース
相続で名義が古いまま・私道所有者が所在不明・共有者多数・長期売れ残り——私道持分なしで特に詰まるのはこの4ケースです。
いずれも「誰の承諾が足りなくて売れないのか」を切り分けると、次の一歩が見えてきます。
自分の状況に近いものを探してみてください。
| 困っている状況 | 足りないもの | 最初にすること |
|---|---|---|
| 相続した実家で名義が古いまま | 相続人名義の登記 | 相続登記を済ませる |
| 私道所有者が所在不明 | 承諾をもらう相手 | 所在の調査を専門家や業者に依頼する |
| 共有者が多数 | 全員分の承諾 | 誰の承諾が足りないかを切り分ける |
| 仲介で長期間売れない | 買い手 | 買取への切り替えを検討する |
相続した実家が持分なしで名義も古いままの場合
相続した実家が私道持分なしで、しかも登記の名義が親や祖父母のまま古く残っている——このケースは、売却の前に名義を整える必要があります。
名義が古いままだと、売買契約を結んでも、買主へ名義を移す登記ができません。
2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければ、正当な理由なく怠った場合に10万円以下の過料の対象となります。
まずは相続登記を済ませ、自分(相続人)の名義にすることが出発点です。
そのうえで、私道の持分がない状態をどう解消するかを考えます。
相続直後は、私道の所有者との関係も分からないことが多いため、権利の整理ごと引き受けてくれる買取業者に相談すると、名義の問題と私道の問題をまとめて進めやすくなります。

私道所有者が所在不明で承諾を集められない場合
私道の所有者が所在不明で連絡が取れず、通行掘削承諾を集められない——これは持分なしの中でも特に厄介なケースです。
私道の所有者がすでに亡くなって相続登記もされていない、遠方に転居して連絡先が分からない、といった事情で、承諾のもらいようがないことがあります。
こうした所有者不明土地については、所有者不明土地管理制度(裁判所が選任した管理人が所有者不明の土地や共有持分を管理・処分できる仕組みで、2023年4月施行の改正民法で創設)といった制度面の対応も進んでいますが、個人が自力で使いこなすのは容易ではありません。
現実的な対処は、所在の調査や裁判所への申立てに慣れた司法書士・弁護士や、買取業者の力を借りることです。
買取業者の中には、こうした所在不明者が絡む権利関係を調査・整理したうえで買い取れるところもあります。
「承諾を取る相手がそもそも見つからない」ために売れないなら、個人で抱え込まず、調査から引き受けられる相手に相談するのが近道です。
共有者が多数で通行掘削承諾がまとまらない場合
私道の共有者が多数いて、全員から通行掘削承諾をまとめられない——これも売却が止まりやすいケースです。
私道の共有者が十数人、数十人に及ぶことは珍しくありません。
全員の承諾を取ろうとすると、1人でも反対したり連絡が取れなかったりすると前に進めず、売れない状態が続きます。
中には承諾料を強く求める人がいて、話がまとまらないこともあります。
このケースで大切なのは、「誰の承諾が足りていて、誰が足りないのか」を切り分けることです。
私道の登記事項証明書で共有者を一覧にし、承諾済み・未回答・反対・連絡先不明に分けると、残りの人数と相手がはっきりします。
そのうえで、多人数との交渉を実務として引き受けられる業者に委ねる選択肢があります。
仲介に出したが長期間売れ残っている場合
仲介に出したものの、半年・1年と売れない——このケースは、売り方そのものを見直すサインです。
前述のとおり、一般のマイホーム購入者が集まる仲介市場ではほとんど売れないのが実情です。
売れない間も、固定資産税や維持管理の負担は出ていき続けます。
「もう少し待てば売れるかも」と期待して長期戦に入っても、需要がなければ何年待っても売れないこともあるのが現実です。
長く売れないなら、価格を下げ続けるより、買取という別の出口に切り替える方が合理的な場面があります。
仲介向きか買取向きかは、需要の有無・保有コスト・手放したい時期の3点で切り分けられます。
私道持分なしの不動産を売るときの注意点
売る前に権利関係の書類を整え、相続登記を済ませ、私道のリスクを買主へ正直に告知することが、損やトラブルを防ぎます。
承諾料の相場観を持ち、長期保有の固定資産税・管理負担も織り込んでおきましょう。
登記簿や公図など権利関係の書類を先に整える
売却を始める前に、登記事項証明書・公図・測量図など、私道と自分の土地の権利関係がわかる書類を先に整えておきましょう。
これらの書類がそろっていると、買主や不動産会社が権利関係を正確に把握でき、話がスムーズに進みます。
逆に書類が不足していると、「どこまでが誰の所有か分からない」状態になり、査定も契約も止まってしまいます。
私道の持分の有無、接道の種別、通行承諾の履歴などを示せる資料を手元にまとめておくことが、売却の第一歩です。
測量が済んでいない、境界が不明確といった場合は費用がかかりますが、こうした測量費用や書類整備を買取業者が負担してくれるケースもあります。
書類がそろっていない段階でも、手元にある資料だけで相談を始められます。
2024年施行の相続登記義務化に対応する
相続で取得した私道持分なしの不動産は、2024年施行の相続登記義務化への対応が必須です。
名義を整えないまま放置すると、売れないだけでなく過料のリスクもあります。
2024年4月より前に相続していてまだ登記していない場合も、2027年3月31日までに申請する必要があります。
売却を考えているなら、どのみち名義を自分に移す必要があります。
早めに相続登記を済ませておけば、義務も果たせ、売却もすぐに動けます。
手続きが複雑な場合は司法書士に依頼するのが確実です。
私道のリスクを買主へ隠さず告知する
売却時には、私道持分なしであることや通行・掘削の制約を、買主へ隠さず正直に告知することが必要です。
隠して売ると、後で大きなトラブルになります。
不動産の売買では、売主に物件の不利な情報を伝える義務があります。
宅建業者が仲介する場合は重要事項説明で買主に説明されますし、個人間でも告知を怠れば契約不適合責任を問われます。
「言わなければ分からない」と隠して売っても、引き渡し後に通行や掘削でもめれば、売主が補修費や損害賠償を求められる可能性があります。
注意したいのは、「開示すれば必ず安心」とも言い切れないことです。
伝え方が不十分だったり、買主が制約の重大さを正しく理解していなかったりすると、後から「聞いていた話と違う」とトラブルになることもあります。
持分がないこと、承諾書の有無、過去の承諾料やトラブルの経緯を、書面にして渡しておくと行き違いを防げます。
契約不適合責任を免責にできる買取なら、この告知をめぐる後々のリスク自体を避けられます。
承諾料の相場を知り法外な要求に備える
通行掘削承諾を得る際には、承諾料の考え方を知っておき、法外な要求に備えることが大切です。
相場感がないと、不当に高い金額を払わされるおそれがあります。
承諾料には法律で定められた金額はなく、無償のケースから、数万円、工事内容によっては数十万円規模まで幅があります。
所有者との関係や私道の利用状況によって変わるため、「いくらが適正か」は一概に言えません。
だからこそ、相手の言い値をうのみにせず、金額の根拠を尋ねたうえで、司法書士や不動産会社の意見も聞いて判断しましょう。
掘削については、前述のとおり、承諾料を求められても法律上は応じる義務がありません。
中には、足元を見て法外な承諾料を求めてくる所有者もいます。
そうした交渉で消耗するより、承諾の取得や交渉を業者に任せて買取で手放す、という判断もあります。
承諾料でこじれて売れないまま時間が過ぎるくらいなら、別の出口を検討する価値があります。
長期保有は固定資産税と管理負担が増え続ける
私道持分なしの不動産を「売れないから」と長期保有し続けると、固定資産税と管理の負担が出ていき続けます。
土地・建物を所有している限り、毎年の固定資産税・都市計画税がかかります。
固定資産税の標準税率は1.4パーセント、都市計画税は上限0.3パーセントです。
たとえば、固定資産税評価額が土地1,000万円・建物300万円の住宅を考えてみましょう。
小規模住宅用地の特例(200平方メートルまで固定資産税の課税標準が6分の1になる軽減)が効いても、固定資産税と都市計画税を合わせて年8万円ほどの負担が続く計算になります(税率を1.4パーセントと0.3パーセントで計算した概算で、評価額や自治体により異なります)。
なお、私道部分が「公衆用道路」として不特定多数の通行に使われていると認められれば、その私道の固定資産税は地方税法により非課税になる場合があります。
ただし適用には自治体への申請が必要なことが多く、宅地部分の税負担がなくなるわけではありません。
売れない物件を持ち続けるほど、こうした負担とともに「いつ手放せるか分からない」不安も積み重なります。
早めに出口を決めることが、金銭面でも精神面でも負担を軽くします。
出典:総務省「固定資産税の概要」
出典:e-Gov法令検索「地方税法」
私道の持分なしの不動産についてよくある質問(FAQ)
- 私道の持分がない場合どうすればいいですか?
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まずは「私道所有者から持分を取得する」「通行掘削承諾書を取得する」「買取業者に現状のまま売る」の3つを検討します。
所有者と良好な関係があり時間をかけられるなら持分取得や承諾書取得を、承諾が集まらない・早く手放したいなら買取を選ぶのが現実的です。
- 私道持分のない家のデメリットは?
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通行や掘削のたびに私道所有者の承諾を求められ、承諾料がかかることがあります。
住宅ローンの担保評価が低く買主の融資が通りにくいため買い手が現金客に限られ、維持管理費や承諾料をめぐるトラブルも起きやすくなります。
結果として売れにくく、資産価値も下がりやすいのがデメリットです。
- 持分なしの私道でも住宅ローンは組めますか?
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担保評価が低いため、民間金融機関の住宅ローンは通りにくいのが実情です。
次の所有者にも引き継げる通行掘削承諾書があれば評価が改善し融資の可能性は上がりますが、それでも審査は厳しめで、買い手は現金購入層が中心になりやすい点は理解しておきましょう。
- 通行掘削承諾書がなくても売却できますか?
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一般の買い手を探す仲介では極めて難しくなります。
ただし、承諾の取得や所有者との交渉を自ら引き受けられる買取業者であれば、承諾書がそろっていない現状のままでも売却できる場合があります。
承諾が取れずに売れないなら、買取が現実的な選択肢です。
- 私道持分だけ買い取ってもらえますか?
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訳あり物件に強い専門業者であれば、私道の持分だけ、あるいは共有持分だけの買取に対応できる場合があります。
相続や共有が絡んで物件全体をすぐに売れないケースの出口になります。
詳しくは「共有持分の買取相場と業者の選び方」も参考にしてください。
- 私道持分なしの土地は再建築できますか?
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前面の私道が建築基準法上の道路で、敷地が2メートル以上接していれば、持分がなくても再建築はできます。
再建築できるかどうかは接道で決まり、持分の有無とは別の問題です。
ただし、建て替えでは掘削や工事車両の通行が伴うため、通行掘削承諾書がないと買い手がつかず、売れない原因になります。
- 私道持分なしだと、通行を止められることはありますか?
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公道に出る道がその私道しかない土地であれば、民法で通行する権利が認められているため、通行そのものを止められることは通常ありません。
ただし、車での通行や工事車両の出入りは争いになることがあり、買主や金融機関は承諾書を求めます。
「通れるかどうか」と「売れるかどうか」は、分けて考える必要があります。
まとめ|私道持分なしでも手放す選択肢はある
私道持分なしの不動産は、通行・掘削で承諾を求められ、住宅ローンも通りにくく、一般の仲介市場ではほとんど売れないのが実情です。
しかし、売れないまま諦める必要はありません。
売る方法は、①私道所有者から持分を取得する②次の所有者にも引き継げる通行掘削承諾書を取得する③訳あり物件に強い買取業者へ現状のまま売る、の3つが軸です。
時間と手間をかけて高く売りたいなら持分取得や承諾書取得を、承諾が集まらない・早く確実に手放したいなら買取を、と自分の状況で選び分けられます。
相続で名義が古い、私道所有者が所在不明、共有者が多数、長く売れない。こうした詰まりも、「誰の承諾が足りないのか」を切り分ければ次の一歩が見えます。
買取業者は再販の出口を複数持ち、承諾交渉や持分取得を肩代わりし、契約不適合責任の免責で売却後の不安まで外せるため、持分がなくても手放す受け皿になります。
固定資産税と管理の負担を抱えたまま売れない状態を続けるより、早めに自分の物件に合う出口を見極めることが、金銭面でも精神面でも負担を軽くする近道です。
まずは登記事項証明書と公図で持分の有無を確かめ、私道・未接道の物件を扱い慣れた相手に現状を相談してみてください。


