筆界未定地は売買できる?解消せずそのまま手放す方法と費用・注意点を解説

相続した土地や長く持っている土地を売ろうとしたら、不動産会社や法務局で「これは筆界未定地です」と言われて、戸惑っていないでしょうか。

筆界未定地でも売買は可能です。

ただし、境界の位置や利用条件が分からないままでは買主が判断できず、一般の仲介では売れにくくなります。

主な選択肢は、境界を明らかにしてから仲介で売る方法と、未定の状態を引き受ける専門の買取業者へ売る方法です。

相続で受け継いだ、遠方にある、隣地が協力してくれないといった事情があっても、まずは現状での売買条件を確認できます。

測量を依頼する前に、解消に必要な費用と期間、そのまま手放す場合の手取りを比べてみましょう。

この記事の監修者

株式会社AlbaLink(アルバリンク)

空き家や共有持分、再建築不可物件、事故物件、ゴミ屋敷など、売れにくい不動産の買取を専門とする不動産会社。

豊富な実務知見をもとに、当記事の監修・作成協力を行っています。

  • 東証グロース上場企業
  • 年間相談件数25,000件超(2025年実績)
  • 全国の不動産に対応
目次

筆界未定地とは地籍調査などで筆界を確認できず処理された土地

筆界未定地とは、地籍調査などで隣り合う土地の筆界を確認できず、未定として処理された土地のことです。

筆界は、土地が登記された際に区画を分けるものとして定められた線で、未定だからもともとの線が存在しないという意味ではありません。

土地の所有権は残りますが、地図上で各筆の区画が確認できないことが、売買や土地利用の支障になります。

単に境界標が見つからない土地と、調査の結果「筆界未定」とされた土地は分けて確認しましょう。

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確認する点筆界が図面で示されている土地筆界未定として処理された土地
区画の表示筆ごとの区画線を確認できる未定部分の区画線が表示されない
地番の見え方区画ごとに地番が記載される複数の地番がまとめて記載されることがある
売買前の確認図面と現地の一致を調べる未定の範囲と、その状態で引き受ける条件を調べる

出典:富士河口湖町「筆界未定とは」
出典:法務省「筆界特定制度」

筆界未定地とは隣地との筆界が確定できない土地のこと

地籍調査で筆界を確認できなかった場合、その部分の地籍図には区画線が描かれず、登記記録の表題部に「国調筆界未定」などと記載されます。

影響は自分の土地だけとは限りません。

境界を確認できない隣地も含めて、複数の土地が筆界未定として処理される場合があります。

ただし、地籍図で一体に見えても、登記上の土地が自動的に合筆されたり、隣地と共有になったりするわけではありません。

売買の対象となる地番と所有者を、登記記録で一筆ずつ確かめることが大切です。

出典:富士河口湖町「筆界未定とは」

筆界は合意だけでは動かせず所有権界とは異なる

「境界」という言葉には、筆界と所有権界という異なる意味があります。

筆界は当事者の合意だけでは動かせませんが、所有権の範囲は土地の一部の譲渡などによって変わることがあります。

昔からブロック塀を境に使っていても、その塀が筆界や所有権界を正しく示しているとは限りません。

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種類示すもの売買で気を付けること
筆界登記された土地の区画の境目隣地との口約束で線を変更しない
所有権界所有権の及ぶ範囲の境目一部譲渡や時効取得などで筆界と異なる場合がある

未定の解消では、資料や現地調査からもともとの筆界を明らかにします。

所有権の範囲にも争いがある場合は、筆界だけの手続きで解決できるかを土地家屋調査士や弁護士に確認しましょう。

出典:法務省「筆界特定制度」

地籍調査で筆界を確認できないと未定として処理される

地籍調査は、主に市区町村などが一筆ごとの所有者・地番・地目を調べ、筆界の位置と面積を測量する調査です。

所有者が立会いに応じない、立ち会っても境界の認識が一致しない、隣地の相続人に連絡がつかないといった事情で、確認が進まないことがあります。

本人に落ち度がなくても、隣地の事情が売買の準備に影響する場合があるのです。

ただし、現地に来られないだけで必ず筆界未定になるわけではなく、資料を使って確認する方法などが取られることもあります。

調査が進行中なら、参加できない事情を市区町村の地籍調査担当へ早めに伝えましょう。

出典:国土交通省「地籍調査が進まない要因」
出典:国土交通省「リモートセンシングデータを活用した地籍調査」

相続や代替わりで境界を知る人がいなくなる

相続や代替わりで、昔の境界の経緯を知る人がいなくなることもあります。

地籍調査の時点で所有者が亡くなり、相続人の確認が進んでいなかったり、隣地の所有者が高齢・遠方で立会いを調整しにくかったりするケースです。

訳あり不動産の買取相談を受けているアルバリンクの現場でも、「親から相続した土地を売ろうとしたら筆界未定地だと分かった」という相談は珍しくありません。

相続した本人は、親と隣地との間にどんな取り決めがあったかを把握していないことも多いものです。

相続そのものによって筆界が未定になるのではなく、調査時に確認できない事情が重なる点に注意してください。

古い売買契約書や測量図、隣地と交わした書面が残っていれば、処分せず相談時に持参しましょう。

筆界未定地かどうかは公図と登記記録で確認できる

自分の土地が筆界未定地かどうかを調べるには、法務局の公図と登記記録を照らし合わせます。

区画線の有無だけで決めず、地番の表示と「国調筆界未定」などの記録を確認しましょう。

あわせて地積測量図や過去の境界確認書があるかも調べると、売買に向けて何が不足しているかを把握しやすくなります。

「筆界未定かもしれない」と言われても、最初から高額な測量を申し込む必要はありません。

STEP
地番を確認して資料を集める

納税通知書などで所在地と地番を確認し、公図・登記事項証明書・地積測量図の有無を調べます。

STEP
図面と登記記録を照合する

未定の表示がある範囲と、売買する土地の所有者・面積の記録を確認します。

STEP
分からない箇所を専門家に確認する

土地家屋調査士に資料を見てもらい、現況で売る場合と解消する場合に必要な調査を分けて見積もってもらいます。

公図を法務局で取得して筆界線の有無を確認する

一般に公図と呼ばれる資料には、法務局に備え付けられた地図や地図に準ずる図面があり、地番や土地の位置関係を調べる手掛かりになります。

筆界未定地では区画線がなく、複数の地番が「+」などでまとめて記載されていることがあります。

法務局の窓口で写しを請求できるほか、登記情報提供サービスで地図情報を閲覧する方法もあります。

登記情報提供サービスは閲覧に相当するサービスで、取得情報に証明文や公印は付きません。

売買手続きで提出が必要な書類は、閲覧情報で足りるのか、証明書が必要なのかを司法書士や不動産会社に確認してください。

出典:八王子市「筆界未定」
出典:登記情報提供サービス「サービスとは」

登記事項証明書と地積測量図の有無をあわせて見る

登記事項証明書の表題部には、土地の所在・地番・地目・地積などが記録されています。

公図と同じ地番の記録を取り、未定の記載と、現在の所有名義を確認します。

地積測量図は、土地の面積や筆界点の位置を調べるための資料ですが、すべての土地に備わっているわけではありません。

また、図面があっても、作成年代や測量の範囲によって、現在の境界確認に使える情報は異なります。

地積測量図がないことだけで筆界未定地と決めたり、図面があることだけで売買に問題がないと決めたりしないようにしましょう。

売買の相談時に持参したい資料
  • 公図と登記事項証明書
  • 地積測量図・境界確認書・過去の測量図(手元にあるもの)
  • 固定資産税の納税通知書や課税明細
  • 過去の売買契約書、隣地とのやり取りが分かる書面

田舎や山間部では公図と現地が大きくずれることもある

田舎や山間部では、古い図面をもとにした公図と、現在の地形が大きく違う場合があります。

山林や長く管理されていない土地では、杭などの境界標が見つからず、図面を見ただけでは現地のどこか分からないこともあります。

「地方だから公図がない」と一括りにせず、まず法務局で資料の有無と種類を確認してください。

土地家屋調査士には、現地を特定する調査と、隣地との筆界を確認する測量を分けて相談すると、必要な作業を把握しやすくなります。

売買を急いでいても、山林へ単独で入って境界を探したり、推測で杭を動かしたりすることは避けましょう。

出典:国土交通省「地籍調査が進まない要因」

判断に迷うときは土地家屋調査士に確認を依頼する

公図と登記記録を見ても筆界未定地か分からないときは、土地の測量や表示に関する登記を専門とする土地家屋調査士に確認を依頼します。

資料と現地を照らし合わせ、どの筆界が未定なのか、解消にどのような調査が必要かを見立ててもらえます。

売買を前提にするなら、土地家屋調査士と連携する不動産会社に相談し、調査費と売れる見込みを一緒に検討すると進めやすくなります。

所有権移転や相続登記は司法書士、権利の争いは弁護士というように、相談内容で担当する専門家は変わります。

最初の相談では、資料確認だけの費用と、測量・登記まで頼んだ場合の費用を分けて尋ねましょう。

筆界未定地の売買が通常の土地よりも難しくなる5つの理由

筆界未定地の売買が難しくなるのは、買主が利用できる範囲や追加費用を判断しにくいからです。

住宅ローンの担保評価、建て替え、一部を切り分ける分筆などに支障が出ると、購入を検討する人が少なくなります。

ただし、売買が一律に禁止されるわけでも、現金で買う人しか購入できないと決まるわけでもありません。

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売買に影響する点買主が確認したいこと
分筆・合筆必要な登記を行える状態か
住宅ローン金融機関が担保として評価できるか
建築確認敷地の範囲・面積・接道を説明できるか
境界トラブル隣地の主張や越境、将来の調整費用
査定額利用の制約と解消費用を価格へどう織り込むか

出典:安中市「筆界未定とは」
出典:宮崎市「地籍調査により筆界未定になっている土地を売買したい」

分筆や合筆に支障があるため一部だけの売買が難しいから

筆界未定地では、原則として分筆や合筆などの登記に支障があります。

たとえば「広い土地の道路側だけを切り分けて売買したい」と考えても、分筆に必要な筆界を確認できなければ、その計画は進められません。

一方、一筆全体を売ることと、一部を分筆して売ることは別の手続きです。

売買できる範囲を判断するときは、希望する登記が未定部分にどう関係するかを土地家屋調査士と法務局に確認してください。

共有持分を売る場合も、特定の場所を切り分けて売ることとは意味が違います。

出典:富士河口湖町「筆界未定とは」

住宅ローンの審査に通りにくく買主が限られやすいから

住宅ローンを使う買主が多い宅地では、担保の評価が難しいことが売買の障害になります。

金融機関は、土地の範囲や利用条件を確認したうえで融資を審査するため、筆界未定地には慎重になりやすいからです。

ただし、融資の可否は金融機関や担保条件などによって異なり、一律に否決されるとは限りません。

自己資金で購入できる人でも、境界確認の負担に見合う立地や用途がなければ、購入をためらうでしょう。

買主がローンを予定している場合は、売買契約を急ぐ前に未定の状況を金融機関へ伝え、必要資料と融資条件を確認してもらいます。

融資が認められない場合の売買契約の解除条件も、不動産会社と確認しておきましょう。

出典:安中市「筆界未定とは」

建築確認や建て替えに支障が出ることがあるから

家の新築や建て替えには、建築計画の敷地範囲や面積、道路との関係を明らかにする必要があります。

そのため、筆界が未定で必要な資料をそろえられないと、建築確認に支障が出る場合があります。

ただし、筆界未定であることと、接道義務などによる再建築不可は同じ意味ではありません。

宅地として売買するなら、「今ある建物が使えるか」と「買主の希望する建て替えができるか」を分けて調べましょう。

敷地のどの範囲を使う計画なのかを建築士に伝え、必要に応じて自治体の建築担当や確認検査機関にも確認します。

出典:安中市「筆界未定とは」

隣地との境界トラブルに発展するおそれがあるから

筆界未定地で境界の認識が食い違うと、売買後に隣地から異なる境界線を主張されたり、塀や建物の越境が問題になったりするおそれがあります。

買主は、想定した広さで使えないことや、調査・調整のための追加費用を心配します。

売主が知っている争いの経緯を伝えずに売れば、売主と買主の間のトラブルにもつながりかねません。

隣地から何を言われているか、どの場所でもめているかを、図面や書面と一緒に伝えましょう。

売買前の説明では、確認できた事実と、昔からそう聞いていたという伝聞を区別すると、買主がリスクを判断しやすくなります。

査定額が下がり資産価値として低く見られやすいから

利用の制約と境界確認の負担を買主が引き受けるため、査定額は通常の土地より下がりやすくなります。

ただし、筆界未定地だから一律に何割下がるという基準はありません。

都市部で立地がよく、取得後の用途が見込める土地と、地方で需要が乏しい土地では、売買できる価格も変わります。

価格を下げれば必ず売買が成立するとは限らないため、複数の査定を比べる際は、想定する用途と境界確認の費用がどう評価されたかも尋ねてください。

査定額だけでなく、売主に測量や片付けを求める条件かどうかも、手取りを左右します。

筆界未定地の売買は解消して仲介と未定のまま買取が主な方法

筆界未定地の売買では、解消して仲介で売る方法と、未定のまま専門業者へ売る方法が主な選択肢になります。

前者は購入を検討できる人を増やす方法、後者は境界確認の負担を引き受ける買主を探す方法です。

これは代表的な進め方であり、事情を理解した隣地所有者などへの売買まで排除するものではありません。

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比較する点解消して仲介未定のまま買取
境界の対応売る前に確認・必要な登記を進める買主が引き受ける範囲を売買契約で決める
費用の出し方測量等の先払いが必要になる場合がある売主負担を省く条件もあるが査定額に反映
期間解消手続きと買主募集の時間が必要境界確定を待たずに売買契約を結べる場合がある
向く状況協力が得られ、解消後の需要が見込める調整や現地対応の負担を減らしたい

どちらも売買成立や価格を保証する方法ではありません。

解消前に、必要な支出と買主の見込みを確認しましょう。

出典:宮崎市「地籍調査により筆界未定になっている土地を売買したい」

境界を確定してから仲介で売る方法がある

筆界未定地の境界を明らかにして必要な登記を整えたうえで、不動産会社の仲介により買主を探す方法です。

買主に示せる資料が増え、住宅ローンや建築計画の検討を進めやすくなるため、売買できる相手が広がる可能性があります。

一方で、測量や隣地との立会い、地図訂正などの費用と時間が必要です。

解消後の売買価格から測量費や仲介手数料などを差し引いても、手取りが増えるかを確認しましょう。

隣地の協力が見込め、待てる期間にも余裕がある方に向きます。

境界の問題を解決しても、立地や建築制限など別の理由で売れにくい場合はあります。

未定のまま訳あり土地に強い買取業者へ売る

筆界未定地の状況を理解し、取得後の調査や隣地との調整を引き受ける専門の買取業者へ、直接売る方法です。

売主が境界確定を行わない条件で合意できれば、測量や立会いを終える前の売買を検討できます。

相続した土地が遠方にある、隣地と話が進まないなど、自分で調整する負担が大きい方にとって選択肢になります。

ただし、業者ごとに対応できる土地は異なり、購入後の費用やリスクは査定額に織り込まれます。

査定を頼むときは、現状での売買を希望することを伝え、測量を売主の条件として求められないか確認してください。

相続争いがある場合も、売買の権限や持分を確認せずに土地全体を売れるわけではありません。

どちらが向くかは費用と期間と隣地の関係で決まる

「解消の費用を先に出せるか」「必要な期間を待てるか」「隣地の協力が見込めるか」が選ぶ際の出発点です。

ただ、費用を出せるからといって、解消してから売る方が常に有利とは限りません。

解消後に期待できる売買代金と、現状の買取価格を、費用を差し引いた同じ条件で比べましょう。

先払いする測量費が用意できない場合は、売買代金で回収する見込みがあっても、その間の資金が必要になります。

2つの見積もりでそろえる条件
  • 解消して売る場合の想定価格・測量費・登記費用・仲介手数料
  • 現状の買取価格と、別途売主が支払う費用
  • 売買契約までの見込みと、代金を受け取る予定日
  • 解消できない場合の支出と、売買を進められない場合の扱い

筆界未定地を解消する3つの方法を費用と期間で比較

筆界を明らかにする代表的な方法には、隣地と立ち会う筆界確認、法務局の筆界特定制度、裁判所での境界確定訴訟があります。

筆界未定地でも話し合いで確認できるなら筆界確認が基本ですが、必ずこの順番で全ての手続きを踏む必要はありません。

隣地の協力が得られない場合も、筆界特定制度などを使えるか検討できます。

筆界未定地の売買のために解消する場合は、筆界を確認した後の地図訂正や地積更正登記まで含め、どこまで依頼するかを決めておきましょう。

出典:広島法務局「筆界未定地となった場合」

隣地所有者が立ち会う筆界確認が最も基本の方法になる

隣り合う土地の所有者が立ち会い、資料と現地の状況から筆界を確認して書面に残すのが「筆界確認(民民査定)」です。

土地家屋調査士に調査・測量を依頼し、隣地の所有者と確認した内容を筆界確認書などにまとめます。

話し合いは線を自由に引き直すためではなく、もともとの筆界を確認するために行います。

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測量の条件費用の目安
隣地が個人の土地のみ約30万~50万円
道路などの官民境界を含む約60万~80万円
調整や測量の条件が複雑100万円程度になる場合もある

これらは実務上の目安で、全国一律の料金ではありません。

期間も、隣地との調整がスムーズな場合で数か月程度が目安です。

売買の対象が広い、隣地の数が多い、道路管理者との確認が必要といった事情で変わるため、現地の条件を伝えて見積もりを取りましょう。

筆界確認書を交わしただけで、法務局の地図や登記記録が自動的に直るわけではありません。

必要な地図訂正・地積更正登記と、その費用が見積もりに含まれるかも確認してください。

出典:安中市「筆界未定とは」
出典:法務省「筆界特定制度」

隣地所有者との話し合いが難しいときは筆界特定制度を利用する

筆界未定地について隣地との話し合いで筆界を確認できない場合は、法務局の筆界特定制度を利用する方法があります。

筆界特定登記官が専門家の意見や調査結果を踏まえ、もともとの筆界の位置を明らかにする制度です。

土地の所有者として登記されている人や相続人などが申請でき、隣地との合意がまとまっていない場合にも利用を検討できます。

所有権の範囲を決める制度ではないため、所有権界の争いが別に残る場合があります。

申請手数料は土地の価格に応じて計算され、対象の2筆の価格の合計が4,000万円の場合は8,000円です。

これに加え、手続きの中で測量が必要になれば、その費用を負担することがあります。

測量費が数十万円単位になることもあるため、申請手数料だけで売買準備が済むとは考えないようにしましょう。

名古屋法務局の標準処理期間は9か月ですが、関係者の人数や事案の複雑さで超える場合があり、他の法務局にも同じ期間が当てはまるとは限りません。

申請先に期間を確認し、結果を得た後の登記手続きも含めて売買の日程を検討してください。

筆界特定の結果に納得できない場合は、後から裁判で争うこともできます。

筆界特定と確定判決は、同じ効力ではありません。

出典:法務省「筆界特定制度」
出典:名古屋法務局「筆界特定制度」
出典:東京法務局「筆界特定制度に関するよくある質問」

境界確定訴訟は1年以上かかることもあるため注意が必要

筆界特定の結果に納得できない場合や、裁判所の判断で筆界を確定させたい場合は、境界確定訴訟(筆界確定訴訟)が選択肢になります。

筆界特定を経ずに訴訟を起こすこともできるため、必ず最後の段階でしか利用できないわけではありません。

争点や必要な測量・鑑定を踏まえて、弁護士へ相談して進め方を検討します。

実務上の目安では、弁護士費用と測量費を合わせて総額100万円前後になる場合があり、期間も1年以上に及ぶことがあります。

これは料金の上限や終結までの保証ではなく、鑑定費用などで負担が増える場合もあります。

売買代金より解決費用の方が大きくなりそうなら、現状で買い取る業者の査定も並行して取り、費用をかける範囲を検討しましょう。

出典:東京法務局「筆界特定制度に関するよくある質問」

解消する場合は3つの方法の費用と期間を比較して選ぼう

費用だけでなく、誰が筆界を判断するのか、どの程度待てるかをそろえて比較しましょう。

民間の測量や訴訟の金額・期間は実務上の目安で、法務局の手数料例や標準処理期間とは性質が異なります。

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方法主な費用期間の目安検討する状況
筆界確認民民約30万~50万円/官民約60万~80万円、条件により100万円程度調整が順調なら数か月隣地と確認を進められる
筆界特定制度申請手数料+必要な測量費等名古屋法務局は標準9か月合意できず公的な判断を求める
境界確定訴訟弁護士費用・測量費で総額100万円前後になる場合も1年以上になる場合も裁判所の判断で確定させたい

筆界未定地を解消してからの売買を考える場合は、この表の期間に買主募集や決済の時間も加わります。

見積もりには、追加調査・登記・鑑定などが含まれるかを確認し、想定を超えたときに続けるかどうかも考えておきましょう。

出典:名古屋法務局「筆界特定制度」

【状況別】筆界未定地の解消と買取のどちらを選ぶべきか

筆界未定地の解消と買取のどちらが自分に向くのか、隣地の状況と自分が引き受けられる負担を照らし合わせてみましょう。

解消できる見込みと、解消した後に売買できる見込みは別々に確認する必要があります。

STEP
隣地との確認が進むかを調べる

連絡先や相続の状況を調べ、協力が見込めるなら土地家屋調査士に解消の見積もりを依頼します。

STEP
先に出す費用と待てる期間を決める

測量費を用意できるか、売買代金が入るまで管理や税金の負担を続けられるかを考えます。

STEP
手取りと残る作業を比較する

解消後の仲介と現況買取の査定を比べ、現地対応や売買契約後の協力まで含めて選びます。

隣地との関係が良好で費用も出せるなら解消して仲介が向いている

隣地との関係が良好で、筆界の認識にも大きなずれがなく、費用と時間をかけられるなら、解消して仲介で売る方法が向いています。

特に都市部などで解消後の需要が見込める土地は、売買価格の上昇で費用を回収できる可能性があります。

ただし、関係が良好でも、過去の資料不足や官民境界の確認に時間がかかる場合があります。

測量費の支払いを決める前に、不動産会社へ解消後の想定売買価格と買主の見込みを確認しましょう。

金融機関の審査や建築条件が整うことまで保証されるわけではないので、残る制約も査定に反映してもらいます。

隣地が非協力的・所在不明なら現状のまま買取が現実的な選択肢

隣地が立会いに応じない、所有者が亡くなって相続人が分からない、連絡先が見つからないといった場合は、話し合いによる確認に時間がかかります。

筆界特定制度などで進められる可能性はありますが、売買を急ぐ方には調査や手続きの負担が重いこともあります。

筆界未定地を引き受ける買取業者が見つかれば、境界確認を終える前に手放す方法を検討できます。

相談時には「隣地が非協力」という一言だけでなく、連絡が取れないのか、別の線を主張しているのかを伝えてください。

住宅ローンや利用条件に制約がある点は、再建築不可物件の売買でも問題になるため、両方の事情がある土地はまとめて相談するとよいでしょう。

相続した土地で筆界未定地が遠方にあるなら買取が向いている

相続した筆界未定地が遠方にある場合や、高齢で現地へ通うのが難しい場合は、立会いのための交通費や日程調整も負担になります。

当時の取り決めを知る人がいなければ、親族への聞き取りや資料探しも必要になるでしょう。

未定のままの買取は、売買の前に自分で行う作業を減らしたい方に向いた方法です。

ただし、代理人による対応などで解消を進められる場合もあるので、現地へ行けないだけで仲介を諦める必要はありません。

買取を選ぶ場合も、本人確認や署名、資料の受け渡しをどのように行うか、売買後の立会い協力が必要かを確認しておきましょう。

早く現金化し管理の負担を減らしたいなら買取を検討する

固定資産税や草刈りなどの管理負担が続く土地は、早く手放したいと考える方も多いでしょう。

解消して仲介で売る場合は、境界確認に数か月から1年以上かかるケースもあり、その後の買主募集にも時間が必要です。

境界確定を売主が行わない条件の買取なら、解消を待たずに売買を進められる場合があります。

ただし、売買契約を結ぶ日と、代金を受け取り所有権移転を行う決済日は同じとは限りません。

いつまでに現金が必要なのかを伝え、相続登記や抵当権抹消などが決済までに間に合うかも確認してください。

売買後の隣地対応や追加費用をどこまで引き受けてもらうかを契約で確認してこそ、手放した後の負担を見通せます。

筆界未定地をそのまま買取で売るときのポイントと注意点

筆界未定地をそのまま買取に出す場合は、価格に加えて、売主がしなくてよい作業と、残る作業を確認します。

売買に伴う測量・境界明示・残置物の処分・契約不適合責任は、それぞれ別の条件として合意することが大切です。

「現状のまま買い取る」という言葉だけでは、すべての費用や責任を買主が負うとまでは分かりません。

売買契約書で確かめたい条件
  • 対象の地番・持分と、筆界が未定である旨
  • 境界明示や測量を誰が行い、費用を誰が負担するか
  • 登記面積を基準に代金を決めるか、後の面積差で精算するか
  • 既知の越境や紛争の説明と、契約不適合責任の扱い
  • 残置物・古家の引渡し条件、決済日、売買後の協力事項

買取業者が購入後に境界確定を進める仕組み

訳あり土地に対応する買取業者は、取得後の調査・利用・再販を見込んで購入を判断します。

買主が測量や隣地との調整を負担する条件なら、売主が数十万円の測量費を先払いし、数か月の境界確認を終えてから売る必要はありません。

ただし、そのコストが消えるわけではなく、買取価格に織り込まれることが一般的です。

業者が必ず解消できるとは限らず、状態や需要によっては買取を断られる場合もあります。

売買契約では、購入後の調査で費用が増えたときに売主へ請求する条項がないか、売買後も過去の経緯の説明や立会いを求められるかも確認しましょう。

売主が調整する負担をどこまで減らせるかが、現況買取を選ぶ際の具体的な判断材料になります。

契約不適合責任を免責にして売れる場合がある

契約不適合責任は、引き渡した土地が種類・品質・数量などの点で売買契約の内容に合わない場合に問題になる責任です。

条件に応じて、買主から追完や代金減額、損害賠償、契約解除を求められることがあります。

筆界が未定であることを説明し、売買契約に織り込むことと、契約不適合責任を免除する特約を売買契約に設けることは分けて考えます。

個人の売主が専門業者へ売る場合、契約不適合責任を免責にする合意ができることがあります。

境界の問題だけが対象なのか、古家や残置物も対象なのかを、売買契約書の文言で確認しましょう。

事故物件の売買でも現状の説明と免責の範囲が重要になりますが、物件の事情に合わせた告知が必要です。

免責の特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実などについては、責任を免れません。

隣地との紛争や越境など、知っている事情を売買前に書面で伝えておきましょう。

出典:e-Gov法令検索「民法」第562条~第564条・第572条

残置物や古家が残っていてもそのまま売れる場合がある

土地に古家や物置があり、家財・荷物が残っていても、その状態での買取に対応する業者があります。

仲介では買主から片付けや解体を求められることがありますが、買取で処分を引き受ける条件なら、売主が先に作業を済ませずに売買できます。

古家の解体費用は、実務上の目安では数十万円から百万円以上かかる場合があります。

建物の大きさや構造、搬出経路で費用は変わり、残置物の処分費も別に考える必要があります。

売買契約では、残してよい物と撤去する物、処分費の負担者を明確にしましょう。

手元に残したい家財や重要書類は先に取り出し、他人の所有物は自分の判断だけで処分を任せないようにしてください。

共有名義でも自分の持分だけ売れることがある

相続した土地が兄弟や親族との共有名義になっている場合、通常、土地全体の売買には共有者全員の同意が必要です。

一方で、自分の共有持分だけであれば、原則として他の共有者の同意なく売却できます。

ただし、持分は土地全体に対する割合であり、「道路側の半分」など特定の場所を売ることではありません。

専門業者のなかには、筆界未定地でも共有持分の買取を検討するところがあります。

土地全体の価格に持分割合を掛けた金額で売れるとは限らず、利用や権利調整の負担も査定に影響します。

売買前には、自分の持分が登記記録で確認できるか、相続手続きが必要かを司法書士に確かめましょう。

出典:国税庁「第73条関係」共有持分の譲渡に関する注記
出典:e-Gov法令検索「民法」第206条・第249条・第251条

買取価格は相場より下がる点を理解しておく

買取では、取得後の境界確認や再販の費用・リスクが考慮されるため、解消済みの土地を仲介で売る場合より価格が低くなる傾向があります。

ただし、売買代金だけが高くても、測量費や解体費などを多く支払えば、手取りが逆転する場合があります。

比較したいのは、売買代金から自分が負担する費用を差し引いた金額です。

見積もりの段階では、税込みかどうか、登記費用や仲介手数料が別に必要かもそろえて確認してください。

不動産会社が買主として直接購入する場合と、別の買主を仲介する場合では、仲介手数料の扱いも異なります。

譲渡所得にかかる税金などは別途確認が必要なので、費用差引後の金額をそのまま最終的な手残りと考えないようにしましょう。

買取は、売買価格と引き換えにどの作業・費用・責任を引き受けてもらえるかを確かめて選ぶ方法です。

相続登記が未了なら売買の決済に向けて名義を整える

相続した土地を売買して買主へ所有権移転登記をするには、原則として、その前提となる相続登記が必要です。

亡くなった方の名義でも相談や契約の検討を進めることはできますが、売買の権限と必要書類を確認し、決済までの手続きを司法書士と調整します。

相続登記は2024年4月1日から義務化されました。

相続の開始と、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請するのが基本で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になる可能性があります。

2024年4月1日より前に相続と取得を知っていた不動産も対象で、原則として2027年3月31日までの申請が必要です。

遺産分割で取得者が決まった場合には、その成立日から3年以内の登記申請義務もあります。

相続人申告登記だけでは売買による所有権移転の準備は完了しないため、別途必要な相続登記を確認してください。

相続人が多い、遺産分割がまとまらないといった事情があるなら、買取の相談時にも伝え、土地全体を売るのか持分を売るのかを整理しましょう。

出典:法務省「相続登記の申請義務化について」

筆界未定地の売買に関してよくある質問(FAQ)

筆界未定地でも売買はできますか?

できます。

解消してから仲介で売る方法と、未定の状態を引き受ける専門業者へ売る方法が主な選択肢です。

現状の売買でも、対象地や未定の範囲を買主へ説明し、測量・費用・責任の分担に合意する必要があります。

隣地との関係、先に出せる費用、待てる期間と手取りを比較して選びましょう。

筆界未定地でも固定資産税はかかりますか?

筆界未定地であることだけを理由に、固定資産税がかからなくなるわけではありません。

ただし、免税点や非課税の扱いなどによって課税されない場合もあります。

地籍図で隣地と一体に見えても、所有権や課税が自動的に一体になるわけではないので、納税通知書と登記記録を持って土地のある市区町村へ確認してください。

筆界未定地の解消にはいくらかかりますか?

実務上の目安では、民民の測量で約30万~50万円、官民境界を含む場合は約60万~80万円、条件によっては100万円程度になることがあります。

筆界特定や訴訟では、申請手数料・必要な測量費・弁護士費用なども検討します。

地図訂正や登記まで含めて見積もりを取り、解消後の売買で費用を回収できそうかを確認しましょう。

隣の人が境界確認に協力してくれない場合はどうすればよいですか?

法務局の筆界特定制度や、裁判所の境界確定訴訟を検討できます。

隣地が協力しないことだけで、必ず解消できないと決まるわけではありません。

自分で調整する負担を減らしたい場合は、現状での買取査定も受け、売買契約で境界確認を誰が引き受けるか確認しましょう。

出典:宮崎市「地籍調査により筆界未定になっている土地を売買したい」
出典:大阪市「固定資産税」
出典:法務省「筆界特定制度」

まとめ|筆界未定地は解消せずとも手放す道がある

筆界未定地でも売買は可能ですが、土地の範囲や利用条件を判断しにくいため、通常の土地より買主を探しにくくなります。

隣地の協力と費用・期間の余裕があり、解消後の需要が見込めるなら、境界を明らかにして仲介で売る方法が候補になります。

一方で、相続した土地が遠方にある、隣地との調整が難しい、先に測量費を出すのが難しい場合は、現状での買取を検討できます。

「解消できないから売れない」とあきらめる前に、そのままの状態でどのような条件なら売買できるかを確かめてみましょう。

自分ではどちらが向くか迷うときは、公図や登記記録、隣地とのやり取りが分かる資料を用意し、訳あり土地の取引に強い会社へ相談してみてください。

希望する時期と、引き受けてもらいたい作業を伝えると、売買価格だけでは分からない負担の違いを比べやすくなります。

この記事を書いた人

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