未登記建物は売買できる?調べ方や売却方法・費用・注意点まで徹底解説

相続した実家や古い建物を売ろうとしたら、「この建物は登記されていません」と言われて戸惑っていませんか。

固定資産税は毎年払ってきたのに登記がない、増築した部分だけ登記されていないといったケースは、実際の売却相談でも決して珍しくありません。

結論から言えば、未登記建物でも売買はできます。

ただし、登記がないままでは住宅ローンの担保にするための登記ができず、買い手が限られます。

建物を使い続ける買主に売るなら登記を整える方法、手続きや費用の持ち出しを抑えたいなら現況での買取を検討できます。

どちらが合うかは、建物の状態だけでなく、誰が所有しているか、登記や解体にいくらかかるかによって変わります。

売買を急ぐ前に、手元の課税明細書と登記記録を照らし合わせ、費用を差し引いた手取りで比べてみましょう。

この記事の監修者

株式会社AlbaLink(アルバリンク)

空き家や共有持分、再建築不可物件、事故物件、ゴミ屋敷など、売れにくい不動産の買取を専門とする不動産会社。

豊富な実務知見をもとに、当記事の監修・作成協力を行っています。

  • 東証グロース上場企業
  • 年間相談件数25,000件超(2025年実績)
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目次

未登記建物とは法務局に登記の記録がない建物のこと

未登記建物とは、法務局に建物の登記記録がない建物のことです。

ただし、売却相談で「未登記」と言われた場合には、建物全体の登記がないほか、増築した面積が登記に反映されていないケースも含まれます。

売買に向けて必要な手続きを知るには、まず何が登記されていないのかを分けて確認しましょう。

未登記建物は表題部の登記がされていない建物を指す

建物表題登記は、所在・種類・構造・床面積などを最初に記録する手続きです。

この手続きが済んでいなければ、建物の登記記録そのものがありません。

新築した建物や、表題登記のない建物を取得した場合は、原則として所有権を取得した日から1か月以内に表題登記を申請する義務があります。

建物の登記記録には、建物の物理的な状況を示す「表題部」と、所有権や抵当権などを示す「権利部」があります。

表題部だけがあり、権利部に所有権の登記がない状態は、建物全体に登記記録がない状態とは違います。

売買の相談時には、表題登記から必要なのか、所有権保存登記から必要なのかを確認すると、依頼先と費用を把握しやすくなります。

出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」(第44条・第47条・第74条)

全体が未登記の建物と増築部分だけ未登記の建物がある

未登記建物と、登記済みの建物に増築した場合では、必要な申請が違います。

別棟の車庫や倉庫は、母屋の附属建物として扱う場合と、独立した建物として扱う場合もあります。

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現在の状態確認する内容主な手続き
建物全体の記録がない所在・構造・床面積と所有者建物表題登記
登記済みの建物を増築した登記上と現況の面積・構造の違い建物表題変更登記
別棟の車庫・倉庫がある独立した建物か、母屋の附属建物か表題登記または表題変更登記を判断
表題部だけがある表題部所有者と現在の所有者所有権保存登記などを確認

「一部だけだから売買に影響しない」とは限りません。

買主が住宅ローンを使う場合、登記と現況の不一致が融資審査や担保の確認で問題になるため、増築履歴も不動産会社に伝えてください。

出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」(第44条・第47条・第51条・第74条)

未登記が生じる理由は築古・現金購入・増改築・相続放置など

なぜ登記されていない建物が生まれるのでしょうか。

未登記建物が残る背景には、建築当時の手続きの不足や、その後の増改築・相続が関わっていることがあります。

  • 築古の建物である:建築当時の登記がされないまま、長く使われてきた。
  • 現金で建てた・買った:住宅ローンの担保設定の機会がなく、登記の不足に気づかなかった。
  • 後から増改築を行った:本体は登記済みでも、床面積や構造の変更を反映していなかった。
  • 相続した建物である:親や祖父母の代から登記のない建物を引き継ぎ、書類や所有関係の確認をしないままになった。

いずれも、日常生活では支障が表に出にくく、売買の相談をして初めて気づくことがあります。

現金購入や相続であっても、必要な表題登記をしなくてよいわけではありません。

建築・増築・相続のおおよその時期を家族に聞いておくと、残っている書類を探す手がかりになります。

出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」(第47条・第51条)

未登記かどうかは課税明細書や登記情報で調べられる

課税明細書を手がかりに、法務局の登記記録と照合するのが基本です。

市区町村は登記の有無とは別に家屋を把握して課税するため、登記がなくても「未登記家屋」として載っていることがあるからです。

STEP
課税明細書を用意する

納税通知書に同封された明細で、家屋の所在地・面積・家屋番号・未登記の記載を確認します。

記載方法は自治体によって異なり、家屋番号の空欄や記載漏れだけでは登記の有無を断定できません。

STEP
登記情報と照らし合わせる

登記情報提供サービスや登記事項証明書で、建物の記録と表題部・権利部を確認します。

普段の住所である住居表示と、登記の所在・家屋番号は異なることがあります。

STEP
見つからない建物を照会する

検索結果に出ないときは、地番や家屋番号の指定を見直し、資料を持って管轄の法務局や土地家屋調査士へ相談します。

売買する未登記建物の敷地内に母屋・離れ・車庫があるなら、それぞれの記録を照合してください。

固定資産税を払っていることと、法務局で登記されていることは別です。

出典:登記情報提供サービス「地番や家屋番号が分からない場合」
出典:e-Gov法令検索「地方税法」(第343条)

【結論】未登記建物でも売買できるがリスクと注意点がある

未登記建物でも当事者間で売買をすることは可能ですが、権利の保護や資金調達には注意が必要です。

売買契約書に未登記と書くだけで、登記義務や第三者との権利関係まで解決するわけではありません。

  • 売主が所有者であることを資料で確認できるか。
  • 買主の資金計画と、融資に必要な登記の時期が合うか。
  • 誰がどの手続きを行い、費用を負担するか。
  • 登記が予定どおり進まない場合の扱いを決めたか。

売買契約自体は成立するが登記なしでは第三者に対抗できない

未登記建物の売買契約を結ぶことと、第三者に所有権を主張できる状態にすることは別です。

所有権の移転は当事者の合意によって効力を生じ、登記はその成立要件ではありません。

ただし、売買契約で代金の支払い時に所有権が移ると定めるなど、移転時期は契約内容に左右されます。

第三者に権利を主張するための「対抗要件」となるのが、所有権の登記です。

たとえば同じ建物が別の相手にも売られた場合などに、登記を備えていない買主は権利の主張で不利になるおそれがあります。

表題登記だけで第三者への対抗要件が整うわけではないため、建物を取得する買主は権利部の登記まで含めて確認しましょう。

出典:e-Gov法令検索「民法」(第176条・第177条)

未登記のままでは住宅ローンを利用した売買が難しくなる

未登記建物は、その状態では、建物に抵当権の登記をすることができず、通常の住宅ローンを利用した売買が難しくなります。

住宅ローンでは、金融機関が融資対象の建物や敷地に担保を設定するためです。

たとえばフラット35では、融資対象の住宅と敷地に第1順位の抵当権を設定できることが条件です。

ただし、「現在未登記だから、今後もローンが一切使えない」という意味ではありません。

売買の決済までに必要な登記を整え、物件と買主が金融機関の審査条件を満たせば、融資を検討できる場合があります。

先に登記を済ませても、建物の状態や法令上の問題などによって審査に通らないことはあるため、登記費用をかける前に不動産会社と金融機関へ相談してください。

未登記のまま引き渡す売買では、現金で購入できる人や、対応できる買取業者などに相手が限られやすくなります。

出典:住宅金融支援機構「融資対象住宅・敷地の抵当権」
出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」(第74条)

登記がないことで権利関係のトラブルを抱えやすくなる

未登記建物では、誰が建て、誰が引き継いだのかを、売買契約書や相続関係の資料から確認する必要があります。

長年放置すると書類が失われたり、相続が重なって関係者が増えたりして、売買の前提となる所有者の確認に時間がかかります。

課税明細書に名前が載っている人が、その建物を単独で売れるとは限りません。

第三者との権利争いを避けるためにも、所有権の根拠を確かめたうえで必要な登記を進めることが大切です。

知らない第三者に簡単に登記されてしまうと決めつける必要はありませんが、「登記すれば争いがすべてなくなる」ともいえません。

所有者や持分に争いがあるときは、売買契約を急がず、弁護士などに相談してください。

出典:e-Gov法令検索「民法」(第177条)
出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」(第74条)

表題登記を怠ると10万円以下の過料の対象になる

未登記建物の表題登記は、売買するかどうかにかかわらず必要な手続きです。

原則として所有権取得から1か月以内に申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。

増築などで床面積や構造が変わった場合にも、原則として変更から1か月以内の変更登記が必要です。

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登記の状態確認する義務混同しやすい点
表題登記がない原則、取得から1か月以内の表題登記相続登記の3年ルールとは別
所有権の登記名義人が亡くなった相続による取得を知った日から3年以内の移転登記など表題部だけ・登記記録なしの建物と区別
登記後に床面積などが変わった原則、変更から1か月以内の変更登記増築工事の建築確認とは別の手続き

2024年4月1日に始まった相続登記の義務化は、所有権の登記名義人が亡くなった場合の所有権移転登記などを対象としています。

建物の記録自体がないケースに、「相続登記を3年以内にすればよい」とそのまま当てはめることはできません。

義務化前に相続による取得を知った登記済み不動産は、原則2027年3月31日までの対応が必要です。

未登記のまま売買する合意をしても、既に生じている登記義務がなくなるわけではありません。

出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」(第47条・第51条・第76条の2・第164条)
出典:法務省「相続登記の申請義務化について」

売買契約書に未登記である旨と登記の負担者を明記する

売買契約書には、対象の建物と、登記の担当者・費用負担・期限を具体的に記載します。

未登記建物であることだけでなく、所在・種類・構造・面積などで対象を特定し、課税明細書や図面との対応も確認します。

増築部分や別棟の車庫を含めるかが曖昧だと、引き渡し後の売買トラブルにつながります。

売買契約前に確認すること
  • 表題登記・所有権保存登記などを、誰がいつまでに行うか。
  • 登記費用、書類取得費、測量費や解体費を誰が負担するか。
  • 売主が渡す書類と、追加資料が必要になった場合の協力範囲。
  • 融資や登記が予定どおり進まない場合の、決済延期・解除などの扱い。
  • 建物の不具合の告知と、契約不適合責任を負う範囲。

個人どうしの売買では見落としやすいため、不動産会社や司法書士と契約・登記の段取りを確認しましょう。

買取業者が買主になる場合は、手続きの調整や免責の特約を相談でき、売主の負担を抑えられることがあります。

契約不適合責任を免責とする特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実などは免責されません。

出典:e-Gov法令検索「民法」(第572条)

未登記建物を売買する現実的な4つの方法

未登記建物の売り方は、登記してから売る、買主が登記を引き受ける、解体して土地として売る、専門業者に買い取ってもらう、の4つです。

買取は「買主が手続きを引き受ける売買」の一種ですが、相談先や売主の負担が異なるため分けて比較します。

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方法向いている条件費用・契約上の確認
売主が登記して売る建物を使う一般の買主を探したい登記費用を先に用意し、融資条件も確認
買主が登記を引き受ける対応できる買主と合意できる必要書類・期限・費用を売買契約に明記
解体して土地を売る土地需要があり、解体後の利用に支障がない解体費・税負担を差し引いて比較
専門業者に買い取ってもらう手続きや費用の持ち出しを抑えたい買取価格と業者が負担する範囲を確認

売買価格だけで決めず、売主が負担する登記費用や解体費を引いた手取りを比べましょう。

売主が登記してから売る方法は買い手の候補が広がる

建物に一定の利用価値があり、一般の買主も含めて売買の相手を探すなら、売主が登記を整える方法が候補になります。

表題登記と所有権保存登記を済ませることで、買主への所有権移転登記や住宅ローンの担保設定を進める準備ができます。

買主にとっても建物と権利関係を確認しやすくなるため、未登記のままの売買より検討の対象が広がりやすくなります。

ただし、登記をするだけで高く売れることや、ローン審査の通過が保証されるわけではありません。

売買前の登記費用と準備期間は売主側に生じるため、工事や登記を依頼する前に、現況の査定と登記後の見込価格を不動産会社に確認しましょう。

売買の決済時には、売主の保存登記で終わらず、買主への所有権移転登記も必要になる点を忘れないでください。

出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」(第74条)
出典:住宅金融支援機構「融資対象住宅・敷地の抵当権」

未登記のまま売り買主に登記してもらう方法は特約が前提になる

未登記建物をそのまま売買し、買主が登記の手間や費用を引き受ける方法もあります。

ただし、買主が了承すれば書類なしで進められるわけではありません。

売主が所有している根拠や売買の経緯を確認できる資料が必要で、既に表題部だけある場合も含め、誰の名義でどの登記をするかを事前に詰めておきます。

建物の記録がまったくない場合と、表題部所有者が記録されている場合では、買主名義にするための手順が異なることがあるからです。

売買契約には費用負担だけでなく、申請の時期、売主の書類提供、売買後の自治体への届出も盛り込みましょう。

未登記家屋の所有者が変わったときは、所在地の自治体で所有者変更届などの提出が必要になります。

この届出は課税上の名義を変更するもので、法務局の所有権の登記に代わるものではありません。

「買主が後で登記する」という特約だけで進めず、売買前に土地家屋調査士・司法書士へ実行可能な手順を確認してください。

出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」(第47条・第74条)
出典:八尾市「未登記家屋に関する届出」

解体して更地として売る方法は売れる見込みがあるなら有効

未登記建物の老朽化が進み、建物を使う需要が乏しい場合は、解体して土地として売買する方法もあります。

ただし、先に解体すると元に戻せないため、土地として売買できる見込みがあるか、建て替えできるかを不動産会社や自治体へ確認してから判断します。

木造住宅・延床30坪の解体費の概算目安は、90万~150万円程度です。

現場条件によって金額は変わり、外構撤去、残置物処分、アスベスト対応などを含む最終総額は、現地調査後の見積もりで確認してください。

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解体する建物解体後の主な手続き相談先
登記記録がない建物家屋滅失届などの提出所在地の自治体の資産税担当
表題部だけを含む登記済み建物原則1か月以内の建物滅失登記法務局・土地家屋調査士

住宅を取り壊すと、土地の住宅用地特例の適用が外れ、翌年度以降の固定資産税などが増えることもあります。

土地の売買代金から解体費や諸費用を差し引き、建物付きで売る場合の手取りと比べてください。

建物全体が未登記なら、消す登記記録がないため、建物滅失登記をするという説明は当てはまりません。

出典:八尾市「未登記家屋に関する届出」
出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」(第57条)
出典:e-Gov法令検索「地方税法」(第349条の3の2・第359条)

買取業者への売却は条件次第で登記や解体まで任せられる

遠方で手続きに動けない、登記や解体の費用を先に出せない場合は、訳あり物件に対応する買取業者への売買を検討できます。

業者が買主となり、取得後の登記や解体を引き受ける条件なら、売主が先に工事や登記を発注する負担を抑えられます。

ただし、全ての業者が、どの未登記建物でも対応できるわけではありません。

所有者や相続人の確認、本人確認、必要書類への署名など、売主側で協力することは残ります。

また、業者が負担する登記費用や解体費は買取価格に織り込まれる場合があるため、費用が別途請求されないことと、経済的な負担がないことは同じではありません。

査定額・売買時の売主の支払額・手続きの担当・引き渡し時期を一組で確認すると、通常の仲介による売買と比較しやすくなります。

【状況別】未登記建物の最適な売却方法は?

相続・増改築・築古・共有という事情に加え、建物の利用価値と、売買前に手元で用意できる費用を確認します。

複数の事情が重なることもあるため、自分の建物に当てはまる条件を確認してください。

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状況先に確認すること売買に向けた進め方
相続した所有者・相続人・登記の有無取得者を確認し、表題・保存または相続登記を判断
増築している本体・別棟の記録と現況土地家屋調査士に変更登記などを相談
古く利用価値が乏しい土地需要・再建築の可否現況での売買と解体後の手取りを比較
共有している持分と共有者の意向全体売却への合意、または自己持分の処分を検討

相続で取得した未登記建物は取得者と登記状況を確認する

相続した場合は、誰が建物を引き継いだのかを確認し、登記の有無に合った手続きを選ぶことが先決です。

建物全体が未登記なら、通常は表題登記を行い、相続した人の名義で所有権保存登記をする流れになります。

亡くなった人の所有権登記が既にある建物を、相続登記で引き継ぐ場合とは区別してください。

遺言の有無や相続人を戸籍などで確認し、遺産分割をする場合には対象の建物と取得者を協議書に記載します。

相続人が複数いても、遺言による取得や法定相続分での共有など、必ず遺産分割協議をするとは限りません。

未登記の場合は登記上の名義自体がないため、課税台帳の名義や相続資料も使って経緯を確かめる必要があります。

売買の相談や査定を先に始めることはできますが、所有者の確認を曖昧にしたまま売買契約・引き渡しを急がないでください。

出典:東京法務局掲載資料「相続した建物が未登記であった場合の相談例」
出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」(第74条)

増築部分だけが未登記なら建物表題変更登記で面積を合わせる

登記済みの建物を増築し、床面積などが変わっている場合は、建物表題変更登記で現況に合わせます。

売買契約の直前に面積の不一致が分かると、買主の住宅ローン審査や決済日程を見直すことになりかねません。

増築した心当たりがあれば、登記事項証明書と建築時・増築時の資料を早めに土地家屋調査士へ渡しましょう。

別棟の建物であれば新たな表題登記が必要な場合もあるため、「増築未登記」という呼び方だけで申請を決めないことが大切です。

登記を現況に合わせても、建築基準法上の違反が解消するわけではありません。

出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」(第44条・第47条・第51条)

築古の建物で最初から未登記なら解体か買取が現実的になる

築年数がかなり古い建物では、未登記建物を登記する費用をかけるより、現況での買取や解体後の土地売買が合理的な場合があります。

ただし、古いという理由だけで建物の価値をゼロと決めず、利用希望があるかも不動産会社に確認してください。

建物の需要が乏しければ、表題登記や保存登記にかけた費用を売買価格で回収できないことがあります。

一方、解体しても土地の買い手が見つからなければ、解体費と保有中の負担が残ります。

「登記して建物付きで売買する」「解体して土地を売る」「未登記のまま買い取ってもらう」の見込価格と売主負担を並べ、売買後に手元に残る金額で判断しましょう。

共有名義の未登記建物は全員の合意か持分整理が要る

複数人で共有する未登記建物を、全体として任意に売買するには、原則として共有者全員の合意が必要です。

誰か1人だけの判断で、他の共有者の持分まで売ることはできません。

登記がなくても共有関係がなくなるわけではなく、相続資料などから共有者と持分を確認する必要があります。

話し合いがまとまらない場合、自分の持分だけを共有持分に対応する買取業者へ売る選択肢もあります。

ただし、買主は建物全体を自由に使えるわけではないため、持分だけの売買は相手や価格が限られやすくなります。

未登記の状態で持分をどう登記するかも含め、司法書士や、争いがある場合は弁護士に確認してから進めましょう。

出典:e-Gov法令検索「民法」(第206条・第249条・第251条)

未登記建物を登記する方法や必要書類を確認しておこう

未登記建物を登記する場合は、表題登記で建物の情報を記録し、所有権保存登記で権利部に所有者を記録する順に進めます。

売買の相手が決まっている場合は、買主への所有権移転や融資の日程までつなげて調整します。

STEP
現況と所有者を確認する

課税明細書、登記情報、建築や相続の資料を確認し、誰の名義で申請するかを決めます。

STEP
表題登記を申請する

土地家屋調査士に調査・測量・図面作成と申請を依頼します。

建物の登記記録が既にあるなら、変更登記が必要かを判断します。

STEP
権利の登記と売買の決済を調整する

司法書士に所有権保存登記などを依頼し、買主への移転登記と必要な抵当権設定の順序を確認します。

出典:法務省「相続登記の申請義務化特設ページ・相談先」
出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」(第47条・第74条)

建物表題登記は土地家屋調査士に依頼する

未登記建物の表題登記を専門家に依頼する場合は、土地家屋調査士が相談先です。

現地を調べ、所在・種類・構造・床面積を確認して、建物図面や各階平面図などを作成します。

売買の予定時期、増築や相続の有無、手元に残っている書類を相談時に伝えると、必要な調査と費用を見積もってもらいやすくなります。

建物と敷地の所有者が異なる場合は、土地を使う権利も売買の判断に関わるため、不動産会社にも伝えておきましょう。

出典:法務省「相続登記の申請義務化特設ページ・相談先」

所有権保存登記と相続登記は司法書士に依頼する

所有権保存登記は、権利部に最初の所有権の登記を入れる手続きです。

必ず建築当時の所有者の名義で保存登記をするという意味ではなく、表題部所有者の相続人が申請できる場合もあります。

既に亡くなった人の所有権の登記がある場合は、相続による所有権移転登記を検討します。

こうした権利に関する登記は、司法書士などに依頼できます。

未登記建物の売買で買主名義へ移す方法は、売買前の登記記録と所有権を取得した経緯で変わるため、表題登記を依頼する土地家屋調査士と連携してもらいましょう。

出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」(第74条)
出典:法務省「相続登記の申請義務化特設ページ・相談先」

増築未登記は建物表題変更登記で現況に合わせる

登記済みの本体に増築した場合は、建物表題変更登記で床面積などの変更を反映します。

売買に向けてこの変更登記を進める場合も、調査や図面作成は土地家屋調査士に依頼できます。

建築当初の図面だけでなく、増築工事の契約書や図面、工事時期が分かる資料も用意してください。

売買の日程を決める前に、建物調査や追加書類にどれくらい時間がかかるかを確かめておきましょう。

出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」(第51条)
出典:法務省「相続登記の申請義務化特設ページ・相談先」

登記には所有権を証明する書類と図面が要る

登記の申請には、建物を所有している根拠となる書類と、建物の状況を示す図面などが必要です。

どれか1点があれば必ず申請できるわけではなく、残っている資料を合わせて確認します。

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資料の役割主な書類の例準備するときの注意
建築と所有の経緯建築確認済証・検査済証、請負売買契約書、領収書、工事完了引渡証明書氏名や建物の表示が現在の状態と合うか確認
課税と現況の確認課税明細書、固定資産税の評価証明書など課税資料だけで所有権の判断を終えない
相続関係の確認戸籍、遺言書、遺産分割協議書など相続の方法によって必要書類が変わる
建物の形状・面積建物図面、各階平面図現況に合う図面を用意する

古い建物では、建築当時の書類が残っていないことも珍しくありません。

書類がないから売買できないと諦めず、手元の資料を専門家に見てもらい、追加で取得できる資料や証明方法を相談してください。

建物図面・各階平面図は土地家屋調査士に、所有権保存登記に必要な資料は司法書士に確認しておきましょう。

役所での書類取得を代理人に頼む場合は、委任状などが必要になることもあります。

資料不足は売買の準備期間にも影響するため、売買契約日を先に決める前に確認しておくと安心です。

出典:日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士報酬ガイド(令和4年度版)」(書類・図面と調査業務の例)
出典:東京法務局掲載資料「相続した建物が未登記であった場合の相談例」

未登記建物を登記する場合の費用と期間の目安

売買に向けた登記費用は、土地家屋調査士・司法書士の報酬、証明書などの実費、登録免許税に分けて見積もります。

下表の報酬幅と期間は、依頼前に予算と予定を考えるための目安です。

全国一律の料金や法務局の処理期限を示すものではなく、資料の有無、建物の規模、地域、依頼先で変わります。

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登記の種類主な費用期間の目安
建物表題登記/土地家屋調査士報酬約8万~16万円+実費など約1~2週間
所有権保存登記/司法書士原則、評価額×0.4%の登録免許税+報酬・実費数日~1週間
建物表題変更登記/土地家屋調査士報酬約8万~16万円+実費など約1~2週間
相続登記/司法書士原則、評価額×0.4%の登録免許税+報酬・実費相続書類の状況により変動

建物全体が未登記の場合と、既に所有権登記がある場合で、必要な登記は異なります。

表の4種類の費用を全て足すわけではありません。

売買に伴う所有権移転登記や抵当権設定登記などが必要なら、その費用も別に確認します。

報酬の消費税や実費の扱い、期間に資料収集・現地調査を含むかを、見積もり時に確認してください。

出典:国税庁「No.7191登録免許税の税額表」

建物表題登記の費用は土地家屋調査士への報酬が中心

建物表題登記では登録免許税はかからず、土地家屋調査士による調査・測量・図面作成などの報酬が中心です。

日本土地家屋調査士会連合会の令和4年度調査では、所定条件の新築木造2階建て居宅の表題登記で、平均報酬額は85,174円、約8.5万円でした。

同じ資料の共同住宅・事務所・店舗からなる8階建ての例は160,478円、約16万円で、いずれも税抜の値です。

この2つは建物の規模や条件が異なり、「一般の戸建ては8万~16万円」とする範囲を直接示した統計ではありません。

8万~16万円の目安は、売買前に予算を考えるための参考幅として扱ってください。

未登記建物の売買では、古い書類の調査や相続関係の確認が必要になり、新築時の想定事例より費用が増えることもあります。

報酬、証明書の取得費、交通費などの実費を分けた見積もりで確認すると、追加費用の条件も把握しやすくなります。

出典:日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士報酬ガイド(令和4年度版)」(10~13ページ。令和4年度調査・所定条件・税抜)

所有権保存登記は登録免許税と司法書士報酬がかかる

所有権保存登記には、原則として建物の価額の0.4%の登録免許税と、依頼する司法書士の報酬・実費がかかります。

課税台帳に登録された価格がある場合は原則その価格を使い、価格がない場合は登記官が認定する価額を使います。

評価額が500万円で本則の0.4%を適用するなら、登録免許税は2万円です。

売買の予算には、この2万円と別に司法書士の報酬や書類取得費も見込みます。

相続による建物の所有権移転登記も本則は0.4%ですが、売買による建物の所有権移転登記は本則2%で、同じ税率ではありません。

住宅用家屋の軽減措置には取得方法・用途・床面積・登記時期などの要件があり、未登記だった古い住宅に一律で適用されるわけではありません。

売買前に、土地と建物それぞれの登記種類、適用税率、費用の負担者を司法書士と確認しましょう。

出典:国税庁「No.7191登録免許税の税額表」

登記完了までの期間は書類の揃い方によって変わる

登記の期間は、法務局での審査だけでなく、現地調査や必要書類が揃うまでの時間にも左右されます。

書類が手元に揃い、調査や申請が順調に進めば、表題登記から所有権保存登記まで数週間で完了することもあります。

一方、相続人の戸籍収集や遺産分割協議が必要な場合には、準備だけで数か月単位になることもあります。

売買の決済日は、登記申請を出す予定日だけで決めず、補正や追加資料が必要になった場合の余裕もみて調整してください。

「売りたいときにすぐ売れると思っていたのに、書類が揃わない」という事態を避けるためにも、売買に備えて相続人の連絡先と手元の資料を早めに整理しましょう。

登記費用の持ち出しを抑えて手放す方法もある

登記や解体の費用を先に出しにくい場合は、買主側が負担する条件の売買を相談できます。

訳あり物件に強い買取業者が、登記・測量・解体などを取得後に引き受けるケースもあります。

手元の資金の持ち出しを抑えたい方には、検討する価値がある方法です。

ただし、費用負担を業者に任せる場合も、売買代金にどう反映されるか、売主が別途払う費用がないかを確認してください。

買取条件を比べるときの確認項目
  • 売買代金から差し引かれる費用と、別途支払う費用。
  • 登記・測量・解体のうち、業者が引き受ける範囲。
  • 売主が用意する書類と、相続人・共有者の協力が必要な事項。
  • 売買契約の免責範囲と、代金を受け取る時期。

課税明細書と手元の登記・相続資料を用意して、現況のまま売買できるか、登記してから売る場合と手取りがどう違うかを相談してみましょう。

未登記建物の売買に関してよくある質問

未登記建物でも固定資産税はかかりますか?

原則として課税対象になります。

固定資産税は、登記がなくても家屋補充課税台帳に登録された所有者に課される仕組みです。

ただし、免税点や非課税などの制度もあるため、全ての建物に必ず税額が発生するという意味ではありません。

売買後もその年度の納税義務者が直ちに買主へ切り替わるわけではなく、税の精算方法は契約で確認します。

未登記建物の固定資産税に時効はありますか?

課税を決定できる期間と、決まった税を徴収する権利の時効は分けて考えます。

固定資産税の賦課決定は原則として法定納期限の翌日から5年以内、徴収権は原則として法定納期限の翌日から5年間行使しないと時効で消滅します。

ただし、不正がある場合の例外や、督促・差押えなどによる時効の更新等があるため、単に5年待てば払わなくてよいとは判断できません。

未登記という理由で将来の課税まで免れることはなく、過去分の扱いは所在地の自治体に確認してください。

未登記の建物は火災保険に加入できますか?

加入できる場合はありますが、未登記という情報だけでは判断できません。

所有者、構造、床面積、建築時期、居住中か空き家かなどを伝えて、保険会社や代理店に引受条件と確認書類を問い合わせてください。

売買を予定している場合は、引き渡しまでの補償と、引き渡し後の契約の扱いも確認しましょう。

未登記建物の登記は自分でも申請できますか?

制度上は所有者本人でも申請できます。

ただし、建物図面・各階平面図の作成や、所有権の根拠となる書類の準備が必要です。

売買の日程が決まっている、相続が重なっている、書類が少ない場合は、土地家屋調査士などに相談すると必要な作業を把握しやすくなります。

未登記建物を親族に贈与することはできますか?

贈与の合意によって所有権を移すこと自体は可能です。

ただし、売買と同様に、表題登記の義務や、第三者に権利を主張するための登記は別に考える必要があります。

贈与税がかかる場合もあり、暦年課税ではその年に受けた贈与の合計額などから判断するため、この建物の評価額だけで納税の要否を決めないでください。

親族間であっても、対象の建物と取得の経緯を記録し、登記と税の手続きを確認しましょう。

出典:e-Gov法令検索「地方税法」(第17条の5・第18条・第18条の2・第343条・第351条・第359条)
出典:e-Gov法令検索「民法」(第176条・第177条)
出典:国税庁「No.4402贈与税がかかる場合」
出典:e-Gov法令検索「不動産登記法」(第47条)
出典:ソニー損保「建物の所有名義はどのように確認すればよいですか」

まとめ|未登記建物は登記して売却かそのまま買取で手放せる

未登記建物でも売買は可能ですが、所有者・登記の状態・買主の資金計画を確認して進めることが大切です。

まずは課税明細書と登記記録を照合し、建物全体に記録がないのか、増築部分だけが反映されていないのかを確かめましょう。

相続が関わる場合は取得者の確認から始め、記録のない建物の表題・保存登記と、登記済みの建物の相続登記を分けて考えます。

そのうえで、登記して売る場合、解体して土地を売る場合、現況で買い取ってもらう場合の手取りと期間を比較してください。

登記や解体の負担を抱え込みたくない方は、現況での売買に対応する買取業者へ、手元の資料と希望する時期を伝えて相談できます。

買い手が見つからず止まっているなら、売買にどの手続きが必要で、誰が費用を負担する条件なら進められるのかを具体的に確認してみましょう。

この記事を書いた人

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