共有名義の不動産を売りたいと考えたとき、多くの方が最初につまずくのが「全員の同意を取れるのか」という問題です。
結論からお伝えします。共有名義の不動産は、共有者全員が同意すれば全体を売却できます。
同意が得られない場合でも、自分の持分だけなら単独で売却できます。「共有名義だから売れない」わけではありません。
ただし、共有名義のまま放置するのは危険です。相続が繰り返されるたびに共有者が増え、話し合いはどんどん難しくなります。売却や整理を考え始めた今が、最も動きやすいタイミングです。
この記事では、共有名義の不動産を売却する4つの方法と、相続・離婚など状況別の最適な進め方を解説します。

株式会社AlbaLink(アルバリンク)
空き家や共有持分、再建築不可物件など、売れにくい不動産の買取を専門とする不動産会社。
空き家に関する豊富なノウハウをもとに、当記事の監修・作成協力を行っています。
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共有名義の不動産は売却できる?結論と持分の基礎知識
共有名義の不動産は、共有者全員が同意すれば全体を売却できます。
同意が得られない場合でも、自分の共有持分だけなら単独で売却可能です。
まずはこの2つの原則と、自分の持分割合の確認から始めましょう。
不動産全体の売却は共有者全員の同意がないとできない(民法251条)
共有名義の不動産の「全体」を売る行為は、民法上の「変更(処分)」にあたります。変更行為には共有者全員の同意が必要と定められています(民法251条)。
つまり、共有者が3人いれば3人全員の同意が必要です。持分の大小は関係ありません。たとえ自分が持分の9割を持っていても、残り1割の共有者が反対すれば全体は売却できません。
共有名義の不動産について、共有者が単独でできることには次のような区分があります。
| 行為の区分 | 必要な同意 | 具体例 |
|---|---|---|
| 保存行為 | 単独でできる | 雨漏りの修繕、不法占拠者への明け渡し請求 |
| 管理行為 | 持分の過半数 | 短期の賃貸借、賃料の変更、軽微な変更 |
| 変更・処分行為 | 全員の同意 | 不動産全体の売却、建物の取り壊し、大規模な改築 |
このうち「全体の売却」だけが全員同意のハードルを越える必要がある、と押さえておけば十分です。
自分の共有持分だけなら他の共有者の同意なしで自由に売却できる
一方、自分の共有持分はあなた自身の財産です。
処分するかどうかは所有者の自由であり(民法206条)、他の共有者の同意も報告も法律上は必要ありません。
「兄が反対しているから何もできない」と諦めている方は多いのですが、実際には持分だけを売却して共有関係から抜ける、という出口が常に残されています。
ただし、持分だけの売却は価格が下がりやすいなどの注意点もあります。詳しくは後半の「共有持分だけを売却するときの相場と注意点」で解説します。
共有持分とは不動産の所有権を割合で持つ権利のこと
共有名義とは、1つの不動産を複数人が共同で所有し、登記簿に全員の名前が記載されている状態のことです。
そして共有持分とは、各共有者が不動産に対して持つ所有権の割合を指します。
たとえば夫婦が半分ずつお金を出して家を買えば、持分は2分の1ずつになります。親の家を兄弟3人で相続し、法定相続分どおりに登記すれば3分の1ずつです。
注意したいのは、持分が「面積」ではなく「割合」だという点です。
持分3分の1でも「この部屋は自分のもの」とは言えず、不動産全体に3分の1の権利が及んでいるイメージになります。だからこそ、全体を動かすには全員の足並みが必要になるのです。
自分の持分割合は法務局の登記事項証明書で確認できる
自分や他の共有者の持分割合は、法務局で取得できる登記事項証明書(登記簿謄本)で確認できます。「権利部(甲区)」に、共有者全員の氏名・住所と持分割合が記載されています。
登記事項証明書は、法務局の窓口や郵送のほか、オンライン(登記・供託オンライン申請システム)でも請求できます。
内容の確認だけであれば、証明書ではありませんが「登記情報提供サービス」の閲覧でも足ります。売却の話し合いを始める前に、まず現在の名義と持分を正確に把握しておきましょう。
「共有者だと思っていた人がすでに亡くなっていて、実際の共有者はその子どもたちだった」というケースは珍しくありません。登記の確認は、すべての出発点になります。
取得手数料は1通600円(書面請求の場合)です。誰でも取得できるため、他の共有者の協力がなくても確認を始められます。
あわせて固定資産税の納税通知書があれば、評価額のおおまかな把握にも役立ちます。

アルバリンクは、空き家・共有持分・再建築不可物件など、 一般的な不動産会社では扱いが難しい不動産に特化した買取業者です。
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共有名義の不動産を売却する4つの方法
共有名義の不動産の売却方法は「全員で全体売却」「共有者への持分売却」「分筆して売却」「買取業者への持分売却」の4つです。
最も高く売れるのは全員同意による全体売却です。同意が取れない場合は、持分のみの売却を検討します。
【最も高く売れる】共有者全員の同意を得て不動産全体を売却する
全員の同意を得て不動産全体を売却する方法は、市場価格で売れるため手取り額が最も大きくなります。
売却代金は持分割合に応じて分配するので、公平性も保ちやすい方法です。
進め方は通常の不動産売却とほぼ同じですが、契約書への署名・押印や必要書類の準備を「全員分」そろえる点が異なります。
共有者の人数が多いほど日程調整や意思統一に時間がかかるため、早めに代表者を決めて動くのがコツです。
期間の目安は、査定から引き渡しまで3〜6か月です。共有者が遠方に住んでいる場合は、書類を郵送でやり取りする「持ち回り契約」という方法もあります。
全員が一堂に会するのが難しくても、売却を諦める理由にはなりません。
他の3つの方法はいずれも価格面・手間の面で妥協を伴います。まずは「全員同意での全体売却ができないか」から検討するのが原則です。
自分の持分を他の共有者に買い取ってもらえば共有関係も解消できる
「自分は手放したい、相手は住み続けたい」という場合は、他の共有者への持分売却が向いています。
買う側は不動産を単独名義にでき、売る側は現金化して共有関係から抜けられるため、双方にメリットがあります。
親子間・兄弟間の売買では、価格設定に注意が必要です。相場より大幅に安く売ると、差額が贈与とみなされて買主に贈与税がかかる場合があります(みなし贈与)。
親族間でも不動産会社の査定などで適正価格を確認してから取引しましょう。
土地なら分筆して自分の単独名義にしてから売却できる
分筆とは、1つの土地を登記上いくつかに分割することです。共有の土地を持分割合に応じて分筆し、それぞれの単独名義にすれば、自分の土地として自由に売却できます。
ただし、分筆には共有者間の合意が必要なうえ、土地家屋調査士による測量・登記費用もかかります。また、分け方によって土地の価値が変わる点にも注意が必要です。
道路に接しない土地や極端に狭い土地は売りにくくなるため、「面積で半分」が「価値で半分」とは限りません。
建物は物理的に分けられないため、この方法が使えるのは土地のみです。
共有名義のマンションも分筆はできないため、全体売却・共有者への売却・持分売却の3つから選ぶことになります。
自分の持分だけを専門の買取業者に売却すれば同意なし・最短数日で現金化できる
他の共有者の同意がどうしても得られない場合の現実的な出口が、共有持分を専門に扱う買取業者への売却です。
自分の持分だけを直接買い取ってもらうため、他の共有者と一切交渉せずに共有関係から抜けられます。
仲介での売却と違って買主を探す期間が不要な分、売却までの期間が短いのも特徴です。
業者や物件の権利関係にもよりますが、査定から最短数日〜数週間で現金化できるケースもあります。一方で、買取価格は市場価格を基準にした持分相当額より安くなるのが実情です。
「価格よりもスピードと確実性を優先したい」「共有者と関わりたくない」という方に向いた方法といえます。
4つの方法は「同意の取りやすさ」と「手取り額」で選ぶ
4つの方法の違いを一覧で整理します。自分のケースで「全員の同意が取れそうか」を起点に選ぶのが判断の近道です。
| 方法 | 他の共有者の同意 | 価格水準 | 期間の目安 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| 全員で全体を売却 | 全員必要 | 市場価格(最も高い) | 3〜6か月 | 共有者と協力できる |
| 持分を共有者に売却 | 買主の合意のみ | 話し合いで決定 | 1〜3か月 | 相手が住み続けたい |
| 分筆して売却(土地) | 分筆に合意が必要 | 分け方で変動 | 3〜6か月+測量期間 | 広い土地を共有 |
| 持分を買取業者に売却 | 不要 | 市場より安い | 最短数日〜数週間 | 同意が取れない・急ぐ |
迷ったら「全体売却を打診 → 断られたら共有者への売却を打診 → それも難しければ持分売却」の順で検討すると、手取り額を最大化しやすくなります。

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【状況別】共有名義の不動産を売却する際の最適なルートは?
最適な売却ルートは、共有名義になった経緯(相続・離婚・共同購入)と共有者との関係で変わります。
相続なら遺産分割協議、離婚ならローン整理が先決です。音信不通の共有者がいても、2023年施行の改正民法により売却できる場合があります。
まず、自分のケースに当てはまる行から確認してください。
| 状況 | 最初の一手 | 主な相談先 |
|---|---|---|
| 相続で共有になった | 遺産分割協議で名義の一本化を検討 | 司法書士・不動産会社 |
| 離婚で家を整理したい | 住宅ローン残高と名義の確認 | 金融機関・不動産会社 |
| 親子・兄弟で共有 | 住み続ける人への持分売買を検討 | 不動産会社・税理士 |
| 共有者と音信不通 | 改正民法の新制度・持分売却を検討 | 弁護士・買取業者 |
| 共有者が認知症 | 成年後見制度の利用を検討 | 家庭裁判所・司法書士 |
【相続】遺産分割協議で単独名義にしてから売却すると揉めにくい
相続した不動産を売る予定があるなら、遺産分割協議の段階で「共有名義にしない」選択を検討しましょう。
いったん共有で登記してしまうと、その後の売却には改めて全員の合意形成が必要になるからです。
売却前提であれば、「代表者1人の名義にして売却し、代金を分ける方法(換価分割)」が実務ではよく使われます。誰か1人が取得して他の相続人に代償金を払う方法(代償分割)も選択肢です。
換価分割で代表者の単独名義にする場合は、注意点があります。遺産分割協議書に「売却して代金を分配するための便宜上の登記である」ことを明記してください。
記載がないと、代金を分けたときに贈与と誤解されるおそれがあります。書き方は司法書士・税理士に確認すると安心です。
なお、相続登記は2024年4月から義務化されており、取得を知った日から3年以内に申請しないと、10万円以下の過料(行政上の金銭的ペナルティ)の対象になり得ます。放置せず、売却方針とあわせて早めに登記を済ませましょう。
【離婚】ペアローンが残る家・マンションはローン完済か借り換えが売却の前提になる
夫婦共有の家を離婚で整理する場合、先に確認すべきは住宅ローンの残高です。
ペアローンなど夫婦双方が債務者の場合、家には金融機関の抵当権(返済が滞ったときに家を売って回収できる担保の権利)が付いています。売却代金でローンを完済できなければ、原則としてそのままでは売却できません。
売却代金で完済できる(アンダーローン)なら、全体を売却して残額を分けるのが最もシンプルです。
完済できない(オーバーローン)場合は、金融機関と相談したうえで、借り換え・自己資金の充当・任意売却などを検討します。
「離婚後も元配偶者と共有のまま」は、連絡が取りにくくなる分だけ将来のトラブルの種になります。離婚のタイミングで名義とローンをセットで整理しておくことを強くおすすめします。
夫婦共有のマンションも進め方は同じです。マンションの場合は、売却完了までの管理費・修繕積立金を誰が払うかも先に決めておくと、離婚後の滞納トラブルを防げます。
【親子・兄弟共有】住み続ける人がいるなら持分の親族間売買が現実的になる
二世帯住宅や実家を、親子・兄弟で共有しているケースを考えます。
誰かが住み続けたい場合は、住む人が他の共有者の持分を買い取る「親族間売買」が現実的です。住む人は単独名義で安心して暮らせ、手放す人は現金を受け取れます。
親族間売買で注意すべき点は2つあります。1つ目は価格です。前述のとおり、相場より大幅に安い売買は贈与税の対象になり得ます。
2つ目は資金です。親族間売買は住宅ローン審査が厳しくなる傾向があり、現金や別の借入手段の検討が必要になる場合があります。
買い取る資金がどうしても用意できないときは、全員で全体を売却して住み替える、持分だけを売却するといった代替案に切り替えます。
【音信不通の共有者がいる】2023年施行の改正民法で裁判所の決定により売却できる場合がある
「共有者の1人と何年も連絡が取れない」「相続で共有者になった親戚の行方が分からない」。
このようなケースは、従来は不在者財産管理人の選任などに時間と費用がかかり、事実上売却を諦める原因になっていました。
改正民法の施行で、状況は大きく変わりました。所在等不明共有者の持分譲渡制度とは、行方の分からない共有者がいても、裁判所の決定を得てその持分を含めた不動産全体を売却できる制度のことです(2023年4月施行の改正民法)。
持分の時価相当額を法務局に供託する(不明な共有者のために預けておく)必要はあります。それでも、従来より現実的な手続きで「全員そろわない不動産」を動かせるようになりました。
この制度はまだ新しく、広く知られていません。
「行方不明者がいるから売れない」と過去に言われた方も、現在は結論が変わる可能性があります。弁護士や司法書士に相談してみる価値は十分あります。
【共有者が認知症】成年後見人を選任しないと全体売却はできない
共有者の1人が認知症などで判断能力を失っている場合、その方は売買契約という法律行為ができません。家族が代筆する形での売却は無効です。
この場合は、成年後見制度の利用を検討します。
成年後見制度とは、認知症などで判断能力が不十分な人に代わって、家庭裁判所が選んだ後見人が財産管理を行う制度のことです。後見人が本人に代わって売却手続きを進めます。
ただし、本人が住んでいる(住んでいた)家を売るには、家庭裁判所の許可が別途必要です(民法859条の3)。
後見人の選任には数か月かかることもあるため、共有者の高齢化が進んでいる場合は早めの準備が重要です。
共有名義の不動産を売却する流れ7ステップと必要書類
共有名義の場合でも、一般的な不動産売却の流れと基本は同じです。ここでは共有名義ならではの注意点を中心に解説します。
- 登記事項証明書で共有者全員と持分割合を確定する
- 共有者全員の売却意思を確認する
- 最低売却価格・費用負担・分配方法を書面で決める
- 不動産会社に査定を依頼し、全員で媒介契約を結ぶ
- 代表者に任せる場合は委任状を作成する
- 売買契約を締結し、決済・引き渡しを行う
- 売却代金を持分割合で分配し、各自で確定申告する
STEP1~2: 登記事項証明書で共有者と持分を確定し、全員の売却意思を確認する
最初に登記事項証明書を取得し、共有者全員の氏名と持分割合を確定させます。
亡くなった共有者の名義が残っている場合は、先に相続登記が必要です。
共有者が確定したら、全員に売却の意思を確認します。
このとき「売るかどうか」だけでなく、「いくら以上なら売るか」まで聞いておくと、後の価格交渉で揉めにくくなります。
STEP3: 最低売却価格と費用負担・分配方法を先に書面で決めておく
意思確認と並行して、次の3点を共有者間で決め、簡単でよいので書面に残しましょう。
- 最低売却価格(いくら以上なら売却に応じるか)
- 費用の負担方法(測量費・解体費などを持分割合で按分=割合に応じて分担するか)
- 売却代金の分配方法と振込先
実務では、売り出し後に「その価格では売りたくない」と共有者の1人が翻意し、取引が止まるケースが目立ちます。
先に条件を固定しておくことが、共有名義売却の最大の予防策です。
STEP4: 不動産会社への査定依頼と媒介契約は共有者全員の署名が必要になる
不動産会社に査定を依頼し、売却を任せる会社と媒介契約(仲介の依頼契約)を結びます。
共有名義の場合、媒介契約は原則として共有者全員が契約当事者になります。
査定は複数社に依頼し、価格と共有名義の取り扱い経験を比較しましょう。
共有者の一部が遠方に住んでいる場合の書類のやり取りなど、段取りの提案力に差が出ます。
STEP5: 代表者に手続きを任せる場合は実印を押した委任状を作成する
共有者全員が毎回の手続きに立ち会うのは現実的でないことも多く、その場合は代表者に手続きを委任します。
委任には、委任者(他の共有者)が実印を押した委任状と印鑑登録証明書が必要です。
委任状には「どの不動産の」「どの手続きを」「いくら以上で」委任するかを具体的に記載します。
白紙委任は勝手な条件で売却されるリスクがあるため避けてください。
STEP6: 売買契約と決済には原則全員の立ち会い(または委任状)が必要になる
買主が見つかったら売買契約を締結し、後日、代金の受領と引き渡し(決済)を行います。
契約・決済とも、原則は共有者全員の立ち会いが必要です。立ち会えない共有者は、STEP5の委任状で対応します。
必要書類は次のとおりです。共有者「全員分」が必要なものが多い点に注意してください。
| 書類 | 誰の分が必要か |
|---|---|
| 登記済権利証(登記識別情報) | 不動産につき1式 |
| 印鑑登録証明書・実印 | 共有者全員 |
| 住民票 | 共有者全員 |
| 本人確認書類 | 共有者全員 |
| 固定資産税納税通知書 | 代表者保管分 |
| 土地測量図・境界確認書(土地) | 不動産につき1式 |
STEP7: 売却代金は持分割合どおりに分配しないと贈与税がかかる場合がある
決済で受け取った売却代金は、持分割合どおりに分配するのが原則です。
持分2分の1ずつなら、手数料等を差し引いた残額を半分ずつ受け取ります。
持分と異なる割合で分けると、多く受け取った人への贈与とみなされ、贈与税の対象になる場合があります。
「長男が手続きを頑張ったから多めに」といった調整をしたい場合は、事前に税理士へ相談してください。
共有名義の不動産売却でかかる税金と3,000万円特別控除
売却益には譲渡所得税がかかり、持分割合に応じて各共有者が個別に納税・確定申告します。
マイホームなら3,000万円特別控除を共有者それぞれが使える場合があり、夫婦共有なら最大6,000万円分の控除になります。
売却益には譲渡所得税がかかり持分割合に応じて各自が納税する
不動産を売って利益(譲渡所得)が出ると、所得税・住民税がかかります。共有名義の場合、税金は「共有者ごと」に計算します。
売却益全体に課税されるのではなく、各自の持分に応じた利益に、各自の税率で課税される仕組みです。
税率は所有期間で大きく変わります。売却した年の1月1日時点で5年を超えていれば、長期譲渡所得として税率20.315%です。
5年以下なら短期譲渡所得として39.63%になります(いずれも復興特別所得税・住民税を含む)。相続した不動産は、亡くなった方の所有期間を引き継いで判定します。
具体例で確認しましょう。兄弟2人が持分2分の1ずつで相続した実家を3,000万円で売却したとします。
取得費が1,800万円、仲介手数料などの譲渡費用が200万円なら、譲渡所得は1,000万円です。
- 各自の譲渡所得: 1,000万円 × 持分1/2 = 500万円
- 各自の税額(長期の場合): 500万円 × 20.315% = 約101万円
なお、親から相続した古い家などで取得費が分からない場合は、売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」で計算します。
この場合は税額が大きくなりやすいため、当時の売買契約書が残っていないかぜひ探してみてください。
3,000万円特別控除は要件を満たせば共有者それぞれが適用できる
3,000万円特別控除とは、マイホームを売却したとき譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例のことです。
共有名義の場合、この控除は「共有者1人につき最高3,000万円」です。全員で3,000万円を分け合うのではありません。
たとえば夫婦が持分2分の1ずつで住んでいた家を売り、譲渡所得が4,000万円出たとします。各自の譲渡所得は2,000万円ずつです。
夫婦ともに要件を満たせば、それぞれ3,000万円まで控除できるため、この例では2人とも課税額はゼロになります。
適用には「自分が住んでいた家であること」などの要件があります。実家を出た兄弟など、住んでいない共有者は使えない場合があります。適用可否は国税庁の要件を確認するか、税理士に相談してください。
なお、相続した「空き家」を売る場合は別の特例があります。住んでいなくても、要件を満たせば1人最大3,000万円(その家屋・敷地を取得した相続人が3人以上の場合は1人2,000万円)を控除できる可能性があります。
旧耐震の家屋に関する要件や、2027年12月末までの譲渡期限などの条件があるため、実家の空き家を相続した方は確認してみてください。
印紙税・登録免許税・仲介手数料などの費用も持分割合で按分するのが原則
税金以外にも、売却には次の費用がかかります。
共有名義の場合、これらも持分割合で按分して負担するのが原則です。
| 費用・税金 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 印紙税(売買契約書) | 1万円(売買価格1,000万円超5,000万円以下) | 軽減措置適用時 |
| 登録免許税(抵当権抹消) | 不動産1個につき1,000円 | ローンが残っている場合 |
| 仲介手数料 | (売買価格×3%+6万円)+消費税が上限 | 売買価格400万円超の場合※ |
| 司法書士報酬 | 数千円〜2万円程度 | 抹消登記等の依頼時 |
| 測量費(土地) | 数十万円程度 | 境界が未確定の場合 |
※800万円以下の物件は事前合意を条件に上限33万円(税込)の特例あり
表のいずれの費用も、特別な合意がなければ持分割合で按分して負担します。
なお、売却前の固定資産税にも注意が必要です。固定資産税は、共有者全員が連帯して納付する義務を負います(地方税法10条の2)。
そのため「住んでいないのに請求が来る」という不満が、共有トラブルの火種になりがちです。
相続した不動産は取得費加算の特例で税負担を減らせる
相続で取得した不動産を売る場合、「取得費加算の特例」が使える可能性があります。
支払った相続税の一部を取得費(経費)に加算でき、譲渡所得税を減らせる制度です。
期限は「相続開始の翌日から、相続税申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」です。
実質的には、相続開始から約3年10か月以内の売却が条件になります。
相続した共有不動産の売却を迷っている場合、この期限は「いつまでに決めるか」の1つの目安になります。
確定申告は共有者ごとに個別に行う(売却翌年の2月16日〜3月15日)
売却益が出た場合、共有者はそれぞれ自分の分を確定申告する必要があります。
代表者がまとめて申告することはできません。申告期間は売却した翌年の2月16日から3月15日までです。
3,000万円特別控除などの特例は、確定申告をして初めて適用されます。
「控除で税金がゼロになるから申告不要」ではない点に注意してください。
申告しないと控除が受けられず、無申告加算税などのペナルティの対象にもなり得ます。
共有名義の不動産売却でよくあるトラブル5つと対処法
共有名義の売却トラブルの多くは「価格・分配の合意不足」と「持分の無断売却」から生じます。
条件を先に書面化することで大半は予防でき、こじれた場合も共有物分割請求という法的な出口があります。
よくあるトラブルと対処法の対応は次のとおりです。
| トラブル | 主な対処法 |
|---|---|
| 価格・分配で意見が割れる | 複数社査定で相場観を統一し、持分割合で精算 |
| 安すぎる親族間売買 | 査定書で時価の根拠を残し、税理士に確認 |
| 持分を勝手に売却された | 条件を書面で受け取り、自分でも査定して比較 |
| 住みたい人と売りたい人の対立 | 持分売買で双方の希望を両立 |
| 話し合いがまとまらない | 共有物分割請求(協議→調停→訴訟) |
売却価格や代金の分け方で意見が割れて売却が止まる
実務の相談で最も多いのが、「売ること自体には賛成なのに、価格や分配で折り合えず止まる」パターンです。
「もっと高く売れるはず」「リフォーム代を出したから多くもらいたい」など、各自の言い分がぶつかります。
対処の基本は、感情論を避けて客観的な基準に乗せることです。
複数社の査定額を全員で共有して価格の相場観をそろえ、費用や分配は持分割合という明確なルールで精算します。それでもまとまらない場合は、弁護士を交えた協議や、後述の共有物分割請求に進みます。
なお、実務の感覚では、揉める論点には順番があります。最初に「売却価格」、次に「代金の分け方」、最後に「これまでの費用負担の精算」です。
固定資産税や修繕費を1人が立て替えてきたケースでは、精算の主張が最後に噴き出しがちです。
領収書などの記録を先に整理し、精算ルールまで含めて最初の書面合意に盛り込んでおくと、こじれる前に防げます。
持分を相場より大幅に安く親族へ売ると贈与とみなされ贈与税がかかる
「身内だから安くていい」という親族間の持分売買は、税務上のリスクがあります。
時価より著しく低い価格での譲渡は、差額分の贈与を受けたものとみなされ、買主に贈与税がかかる場合があります。
「いくらなら安すぎないか」の線引きはケースバイケースです。
親族間売買では、不動産会社の査定書などで時価の根拠を残し、必要に応じて税理士に確認したうえで価格を決めてください。
他の共有者に持分を勝手に売却され見知らぬ業者が共有者になる
持分の売却は各共有者の自由なので、ある日突然「共有者の1人が持分を業者に売っていた」という事態は起こり得ます。
この場合、あなたの持分が失われるわけではありませんが、見知らぬ買取業者が新たな共有者として登場します。
業者から持分の買取や売却を提案されたら、慌てて応じる必要はありません。
提示条件を書面でもらい、自分でも査定を取って比較したうえで判断しましょう。強引な勧誘など対応に不安がある場合は、弁護士や宅建協会の相談窓口に相談してください。
逆にいえば、自分が持分を売る側になる場合も、残る共有者への影響は同じです。可能であれば売却前に一報を入れておくと、無用な対立を避けられます。
住み続けたい共有者と売りたい共有者で対立する
「自分は現金化したい、兄は実家に住み続けたい」という対立は、どちらかが我慢する必要はありません。
住み続けたい側が売りたい側の持分を買い取れば、双方の希望が両立します。
買い取る資金がない場合は、金融機関からの借入のほか、「住み続ける側が家賃相当額を払う」という中間的な合意もあり得ます。
ただし口約束はトラブルのもとになるため、合意内容は必ず書面化してください。
話し合いで解決しないときは共有物分割請求で強制的に解消できる
共有物分割請求とは、共有状態の解消を他の共有者に求める法的な手続きのことです。
各共有者はいつでも分割を請求でき(民法256条)、話し合い(協議)でまとまらなければ、調停・訴訟へと進みます。
訴訟になった場合、裁判所は次の3つのいずれかを決定します。
- 現物分割: 土地そのものを分ける
- 賠償分割: 1人が取得し、他の共有者へ代償金を払う
- 換価分割: 競売で売却し、代金を分ける
競売は市場価格より安くなる傾向があるため、訴訟は「最後の手段」です。
その手前の協議・調停の段階で、専門家を交えて着地点を探ることをおすすめします。
共有持分だけを売却するときの相場と注意点
共有持分のみの売却価格は、市場価格に持分割合を掛けた額より安くなるのが実情です。
価格は共有者との関係性や物件の状況で変わるため、共有持分の買取実績が豊富な専門業者への査定で確認するのが確実です。
共有持分のみの売却価格は「市場価格×持分割合」より安くなるのが実情
不動産全体の市場価格が3,000万円で持分が2分の1なら、計算上の持分価値は1,500万円です。
しかし、持分のみの売却では、この額がそのまま手に入ることはまずありません。買取実務では、持分相当額の5割〜7割程度の水準にとどまるケースが多いといわれます。
安くなる理由は明確です。持分だけを買っても不動産を自由に使えず、買主は他の共有者との交渉や法的手続きのコストとリスクを引き受けることになるからです。
この「割引」は、同意なしで共有関係から抜けられることの対価と考えると分かりやすいでしょう。
参考までに、持分の査定で実際に確認される主な項目を挙げます。
- 登記情報(持分割合・抵当権などの担保の有無)
- 他の共有者の人数・属性と、連絡が取れる状態かどうか
- 現在の利用状況(誰かが居住中か、空き家か、賃貸中か)
- 賃料収入の有無と金額
- 土地の境界確定の状況
※価格水準はあくまで実務上の目安であり、実際の価格は物件条件により大きく変動します。正確な金額は個別の査定で確認してください。
価格は他の共有者との関係性・持分割合・物件の収益性で大きく変わる
同じ持分割合でも、査定額には差が付きます。実務で重視されるのは主に次の3点です。
- 他の共有者との関係性: 話し合いの余地があるほど、買主のリスクが下がり価格は上がりやすい
- 持分割合: 過半数の持分は管理行為を決められるため、少数持分より高く評価されやすい
- 物件の条件・収益性: 賃料収入がある物件や資産価値の高い立地は、持分でも需要が付きやすい
「うちの持分はいくらになるのか」は、この組み合わせ次第です。
1社の提示額だけで判断せず、複数の査定を比較することをおすすめします。
持分を売却しても他の共有者の共有状態は残るため事前に一報入れるとトラブルを防げる
自分の持分を売却すれば、あなた自身は共有関係から抜けられます。
ただし、残った共有者と買主との間で共有状態は続きます。残った共有者にとっては「見知らぬ業者との共有」が始まるため、事後に発覚すると親族関係がこじれる原因になりがちです。
法律上の義務はありませんが、可能な状況であれば「持分を売却するつもりだ」と事前に伝えておきましょう。
場合によっては「それなら自分が買い取る」と親族間売買に切り替わり、双方にとってより良い結果になることもあります。
共有持分の買取実績と士業連携がある専門業者を選ぶとトラブルを避けやすい
共有持分の買取は、一般の不動産会社では断られることも多い専門領域です。業者選びでは次の点を確認してください。
- 共有持分・訳あり物件の買取実績が具体的に公開されているか
- 弁護士・司法書士など士業との連携体制があるか
- 査定額の根拠と、売却後の共有者への対応方針を説明できるか
- 宅地建物取引業の免許番号が確認できるか
相見積もりを取り、説明が誠実な業者を選ぶことが、安全な持分売却の最大のポイントです。
共有名義を解消・予防する3つの方法
共有名義の解消方法は「持分の売買・贈与」「持分放棄」「共有物分割請求」の3つです。
放置すると相続のたびに共有者が増えて解決が難しくなるため、早めの一本化が安全です。
| 解消方法 | 単独でできるか | かかりうる税金 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
| 持分の売買・贈与 | 相手の合意が必要 | 売買=譲渡所得税/贈与=贈与税 | 登録免許税+司法書士報酬 |
| 持分放棄 | 放棄自体は単独で可(登記は協力が必要) | 受け取る側に贈与税の可能性 | 移転登記の費用 |
| 共有物分割請求 | 単独で請求可 | 分割方法により譲渡所得税等 | 弁護士費用・訴訟費用 |
持分の売買・贈与で単独名義に一本化するのが最も確実な解消方法
共有者間で持分を売買または贈与し、名義を1人に集約するのが最も確実でシンプルな解消方法です。
売買なら売主に譲渡所得税、贈与なら受け取る側に贈与税が発生し得るため、どちらが有利かは金額によって変わります。
税負担を試算したうえで方法を選び、名義変更(持分移転登記)は司法書士に依頼するのが一般的です。共有者の関係が良好なうちに実行するのが成功のコツです。
持分放棄は単独でできるが他の共有者に贈与税がかかる場合がある
自分の持分を「放棄」することは、他の共有者の同意なしに単独でできます。
放棄された持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。「お金は要らないから共有関係から抜けたい」という場合の選択肢です。
ただし注意点が2つあります。持分を受け取る側に贈与税が課される場合があること、そして登記(持分移転登記)には結局他の共有者の協力が必要なことです。
関係が断絶していて協力を得られない場合は、持分の売却のほうが現実的です。
遺産分割の段階で安易に共有名義にしないことが最大の予防策になる
これから相続を迎える方への最大のアドバイスは、「とりあえず共有」を避けることです。
法定相続分どおりの共有登記は、一見すると公平です。しかし実際には、全員の意思がそろわないと動かせない不動産が生まれます。次の相続では、さらに共有者が増えていきます。
遺産分割協議では、換価分割(売って分ける)や代償分割(1人が取得して代償金を払う)を含めて検討しましょう。
空き家になった実家を相続する場合の考え方は、空き家の相続を解説した記事にまとめています。
まとめ|共有名義の不動産は持分だけでも売却できる。まず選択肢を知ることから
共有名義の不動産売却について、要点を整理します。
- 全体の売却には共有者全員の同意が必要(民法251条)。ただし自分の持分だけなら同意なしで売却できる
- 売却方法は「全員で全体売却」「共有者への持分売却」「分筆」「買取業者への持分売却」の4つ。手取り額が最大なのは全体売却
- 最適ルートは状況で変わる。相続なら遺産分割、離婚ならローン整理が先。音信不通の共有者がいても改正民法の新制度で売却できる場合がある
- 税金は持分割合で按分し、各自が確定申告する。3,000万円特別控除は共有者それぞれに適用できる
- トラブルの大半は「条件を先に書面化する」ことで予防できる。こじれたら共有物分割請求という出口もある
共有名義の不動産は、関係者が増えるほど、時間が経つほど動かしにくくなります。一方で、全員の同意が取れなくても、持分売却という出口は常に開かれています。
「売れない」と諦める前に、まず自分の選択肢と持分の価値を知ることから始めてみてください。
共有名義の不動産売却に関するよくある質問
- 共有名義の不動産は、他の共有者の同意なしで売却できますか?
-
不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要です。ただし自分の共有持分だけであれば、同意なしで単独売却できます(民法206条・251条)。
- 共有持分だけを売ると、価格はどのくらいになりますか?
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市場価格×持分割合よりも安くなるのが一般的です。共有者との関係性や物件の状況で変わるため、専門業者の無料査定で確認するのが確実です。
- 共有者が行方不明でも売却できますか?
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2023年施行の改正民法により、裁判所の決定を得て所在不明の共有者の持分を含めた売却ができる場合があります。従来の不在者財産管理人の選任と比べ、負担が軽くなりました。
- 売却代金はどのように分けますか?
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持分割合どおりに分配するのが原則です。持分と異なる割合で分けると、差額に贈与税がかかる場合があります。
- 3,000万円特別控除は共有者全員が使えますか?
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A. 居住用などの要件を満たせば、共有者それぞれが最大3,000万円の控除を適用できます。適用可否は国税庁の要件確認または税理士への相談をおすすめします。

